第11話
「……すいません花火様。服、汚しちゃいました」
「いいんですよ。あなたの気持ちに比べたら、軽いものですから」
花火様に抱きつき、泣き叫ぶこと約五分。ようやく落ち着いた俺は、涙と鼻水で汚れた花火様のコートを見て、罪悪感を覚えた。
「反省は、帰ってから存分に、一緒にやりましょう……今日、あなたが抱いた傷も、乗り越えられるように、支えますから」
「爆破、お願いします」
「了解。爆弾、起動します」
ちゅどーん、とフェンリル研究支部が爆発に飲み込まれる。そして俺は、右手に持っていた監視カメラを煙の中へ投げ込んだ。
これで、カメラが壊れていても、データが無事なら施設を蹂躙する、アビス姿の俺が映っているはず。これで、完全にフェンリル研究支部破壊活動の犯人は、アビスに視点が行くだろう。
「……ごめんな」
俺が未熟なせいで、助けられなかった二人の少女。俺は、決して今日抱いた気持ちを、忘れることはな──────
「ふん」
「わぷっ」
「あんまり辛気臭い顔しないの。カッコイイ顔が台無しよ?裕樹さん」
「
強引に頭を抱き寄せられ、胸に押し付けられながら、後頭部を撫でられる。
「あなたが今日経験したことは、マルドゥークにいる誰もが経験してます。わたくしも、花火様も、アビスに侵食されている子達を、たくさん殺してきました」
「………」
「一緒に乗り越えましょう。あなたは、決して独りじゃありませんから。どんなに辛くても、わたくし達がそばにいて差し上げますから……また、いつものカッコイイ裕樹さんに戻ってくださいな」
「
瑠璃学園に戻ったあと、俺は直ぐに長月さんの元へ向かい、
「フェンリルは、アレでも一応、アビスを何とかしようと研究を進めているからな。魔力保有量が、ジャガーノート起動数値に届かなくても、後付け装置的なもので、保管してやればいい。そう考え、奴らはアビスの細胞をヒロインの体内に移植するという暴挙に出た」
「アビスの細胞を移植されたヒロインには、アビス由来の特別なギフトが発現することが分かっています。それを、私達はフォースギフトと呼んでいます」
「上手く適合することが出来れば、魔力の大幅アップや、強力なギフトを得られることができるが、成功率が非常に低いし、適合したからと言って細胞を多く移植すれば、細胞が元の細胞を食い荒らし、アビス化。失敗したら……まぁ、良くて植物人間と言ったところだな」
怒りで、体の震えが止まらない。本当に、アイツらは人の命をなんだと思っているんだ。
「少年。改めて聞こう。マルドゥークに入れば、今日君が経験したことは何度も起きるだろう。それでも、前を向いてあの組織を壊滅させる手伝いをしてくれるか?」
「……もちろんです。だって──────」
────潰さないと、今まで死んで行った少女達が、浮かぶに浮かべないじゃないですか。
「長月さん。これからフェンリル研究支部への襲撃は、俺一人だけでお願いします」
「……まぁいいだろう。ただし、囚われているヒロインを救出するために、別働隊をさせておく……派手に暴れてくれよ?
「御意に」
長月さんの後ろの電子黒板には、今朝のニュースが流れていた。
それは、危険度ランク初めてのSSSランクとして認定された、特別指定接触禁忌種『
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と、言うことでこれで第五章も終わりですかね。最後の最後で特大な曇らせ要素が出てきて、伏線もまたまた張ったので、少しずつ、皆さんの中には裕樹くんの『対ヒロイン魅了スキルMAX』の正体が分かった人がいるかもしれませぬ。
次章は、皆大好き水着回!『癒しと水着と定期テスト!』。美少女達が水着姿でキャッキャウフフ時々裕樹くんです。
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