第9話
想像を絶する痛みに襲われる。反射的に、手で股間を抑えたくなった男だが、両手両足が地面と縫い付けられているためそれは出来ない。
「あがっ、がっ、がきっ」
その後も、膝、肘等の骨も丹念に丹念に折り続け、男は涙や涎でボロボロになっていた。
「痛いか?苦しいか?だが、まだ殺してやんねぇよ。あの子たちの分以上に、苦しみながら死ね」
「ぁ……ひ……」
ぐじゃり、と胸を思いっきり踏みつける。肺を守る骨が砕け、その骨によって肺が傷つく。
「その内、呼吸困難と大量出血でお前は死ぬ。本当はまだまだ足りないけど────ま、あと三人いるしな」
そして、裕樹は同じように残りの男達も苦しめる。フェンリルの地下二階に、男達の情けない悲鳴が響き渡るのだった。
処刑も終わり、アンテナを頼りにこの階に残っている反応を探す。だがしかし、あともう一歩という所でその反応が消えてしまった。
それはつまり、目の前でか弱い少女を助けられなかったということだ。
「………クソがっ」
眠る少女の横で膝を着く裕樹。瞼を閉じさせる際、触れた体温はまだ少し暖かった。
「……潰す。絶対に潰す……」
裕樹の髪を侵食していた赤色が、少し広がった気がした。
地下三階に降りる前に、少し足を止めた。どうやら、三つの反応のうち、二つがこの階段降りた先のフロアで待ち構えているようである。
であれば、残りの一人がヒロイン、黄前閑乃である可能性が高い。この階にいた少女達と、あの報告書に貼ってあった写真が一致しなかった。
待ち構えているのなら話は早い。その方が、襲撃とかに意識を向けないで戦うことが出来る。
もはや、ここまで来たらアンテナは必要ない。消して、触手を10本ほど出して待機をさせておく。最初から戦闘態勢で殺す。
「……なるほど。あの四人から連絡が来た時は驚いたが、まさかイレギュラーが来るとはな」
降りた先で待っていたのは、アビスアーマーを着込んだ二人。俺を見た瞬間、話し始めたがこちとらそれを律儀に待ってやる必要は無い。
まずは、一人殺す。とりあえず、喋ってるやつの方がなんとなく偉そうなのでそっちは後回し。
「しかし、埼玉から送られた資料とは、少し髪や瞳の色が違────」
「ガハッ……」
「────お喋りはもう充分か?」
話をしている隙をついて、一瞬の内に隣にいるやつに向けてアロンダイトを突き刺す。最初の頃と比べて、体がよく動くし、心無しか斬れ味も上がっているような気がする。アビスアーマーの装甲と、腹を突き破り一閃。
アビスが死んだことで、アーマーが魔力となって消滅。腹から血を大量に吐き出している男が現れ、床に倒れる。
「──────は?」
「いくらヒロイン特化で強化装甲纏っていても────中身がクソザコナメクジなら、意味ねぇよなぁ?」
「……っ、こんのガキャアアアア!!!」
激昂した男の背後から、触手を生みだし、俺に向かって攻撃してくるが、俺も同じように触手を伸ばして迎撃。
「なっ、バカなっ!」
「殺し合いでは、一瞬の動揺が命取りだぞ」
「ガッ!?」
触手の打ち合いは、俺のが相手のを完全に打ち砕いた。余程アビスアーマーを信用しているのか。動揺した瞬間に思いっきり腹に膝蹴りを食らわせる。
そして、触手を束ねて奴の顔面を思いっきり殴る。いくらフルアーマーとはいえ、頭に思いっきり衝撃を喰らえば、脳へのダメージは避けられない。
「弱い……本当に弱い」
確かに、普通のヒロインやまだ覚醒していないヒロイン適性を持つ子達を攫うのは、それで充分なんだろう。
だから、弱い女の子や、戦う術を持たない子達を攫い、実験漬けにし、失敗したら命と尊厳を弄んで捨てる。
それを、こんなクソ共が行っていることに、反吐が出る。
「ぐっ……何故だ……何故ヒロイン以上の力を持つアビスアーマーが押され────」
「パワーだけ一流でも、テメェが雑魚だから仕方ねぇだろ」
「────……っ、このガキィィィィィ!!!」
右腕を思いっきり引き絞り、パンチを顔面へと繰り出す男。確かに、パワーとスピードだけなら、ヒロインを上回る。
だけどな、そんななーんにもフェイントとか織り交ぜてない素人の拳が当たるかっての。舐め過ぎ。
これだったら、攫ってくるのにも余計な手間とかかかってそうだな。だからひづみがフェンリルに居た時大事にされてたのか。
「この言葉を知っているか?」
「死ねぇぇぇ!!!」
俺も拳を握り、奴のパンチに合わせて──────
「当たらなければ、どうということは無い」
「ぶへっ」
────綺麗なカウンターを叩き込んだのだった。
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ものすごく愛に溢れたレビューコメントを頂きました。ありがとうございます。きゅんです。
このレビューコメントに対する返信を、近況報告にて思いを綴っていますので、よろしければチェックをお願いします。
「そんなめんどくせぇことしねぇよ!」と言った読者の方に、めちゃくちゃ簡潔に表すとしたら────
─────ヤバい!作者があんまり頭良くないことバレちゃう!
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