第6話
意識を、胸の内にいるアビスへと向ける。イメージするのは、あの時フェンリル研究支部で戦った、あのアビスアーマー。
アイツらのアイデアをパクるのは癪だが、使えるものは使う。精々、自分たちが悪用したアイデアで殺されるがいい。
背中から覆うように、機械の外殻が体を覆っていく。腕、足、顔と完全に体全体を覆う。
ジャガーノートの方にも細工を加え、刃はより太く、より鋭い刃物へと変化を遂げる。これで、傍から見れば人型の、右腕がでっかい刃物持ってる系のアビスと見られるだろう。
フルアーマーにしたが、見た目ほど動きにくくは無いし、視界も普段と変わらない。
『裕樹さん。貴方が今何をしているかは分かりませんが、あの研究所のマップを送っておきます。確認を』
腕時計型端末がある部分だけ装甲を剥がし、スイッチを押してホログラムを起動させる。
『単独でなら、セキュリティ室を最初に奇襲するといいでしょう。ここを潰せば、サイレンが鳴らず、襲撃を悟られずにすみます』
「分かりました。ではそこから屋根をぶち破って侵入するとします」
マップを頭の中に叩き込み、屋上に向かって少し助走を付けてから跳躍。入口とかにはさすがに監視カメラが仕掛けてあったが、上は無警戒。だからこそ、この大体な侵入ができるのである。
建物の形と、マップを照らし合わせながら、セキュリティ室の真上を陣取り、ジャガーノートを掲げる。
あまり派手にやると、音で他の研究員に気づかれる可能性があるので、俺が入れる分の穴でいい。
「さぁ、処刑の時間だ」
手を高速で動かし、屋根を斬った。間髪入れずに飛び込み、落下しながら部屋にいる研究員の数を確認。
1、2……5名か。これなら、一気に殺すことは可能だ。
背中から機械の触手が顔を覗かせ、地面に着地した瞬間、触手を研究員きけしかけ、脳を貫く。
「アガッ……」
「うわ────」
「しん────!?」
ブサり、と触手が脳を貫通し物言わぬ死体となったことを確認し、触手についた血を落とす。
ここからは、全部の部屋を回り、研究員を殺すだけの簡単なお仕事である。
セキュリティ室に繋がるドアを切り刻む。認証システム系で開く系のやつは俺の今の格好だと開かないからな。斬った方が早い
「……だっ、だれだ!?」
「!人型のアビ────ごがっ!?」
セキュリティ室の前に、門番がいたのでさわがれないようにすぐに首と胴体をおさらばさせる。
さて、何体殺すかな。もちろん、一人も逃がす気は無いがな。
「な、何故アビスが────ガッ!?」
「ヒッ!?に、逃げ────ゴハッ!」
目に入る研究員を一人ずつ殺していく。基本、廊下を歩いているやつは少なく、部屋の中で何かしら作業をしているやつが殆どだったので、楽に、確実に殺すことが出来た。
また、触手を操っているうちに、これを色々な形に変化させ、新たな器官として確立させることに成功した。
例えば、現在俺の背中にてふよふよ浮いているアンテナのようなもの。俺が歩く空気の振動を増幅させ、擬似的な超音波としての役割を持っている。これで、具体的なマップと、研究員の所在地が分かるようになったので、効率的に殺せるようになった。
『随分と、派手にやっているようですね。あ、声は出さないで大丈夫ですよ』
耳から渚様の声が聞こえた。今の俺はアビスになりきっているので、声を出さないでいるのは非常にありがたい。
まぁ、近くに研究員がいない場合は喋るが
『監視カメラをハッキングして、中の映像を見ているのですが、よく考えたものですね』
「敢えてこうして隠さずに見せていることで、アビスのせいにしてるんですよ。一応木っ端微塵に壊滅させる予定ではありますが、念の為に」
『喋っても大丈夫なんですか?』
「近くにクソ狼が居ないことは確認してるので」
二階の殲滅は既に終わり、現在は一階の殲滅中。一階にいるクソ野郎どもも、反応を見る限り残り数人ほど。
この施設は、前のとこみたいに隠し部屋とかが無くて非常に助かる。それほど秘匿性が低くないのか、はたまた盗まれることは無いという驕りからか。
なんにせよ、馬鹿で助かる。
『……私達がそちらに着く頃には、全て終わってそうですね。爆弾の準備を進めておきます』
「よろしくお願いします────っと」
ここが一階最後の部屋。ドアをジャガーノートで斬り裂いて侵入。
「なっ!はっ!?アビ────ぐわっ!?」
「何が────カハッ……」
俺の登場に驚いているうちに、触手で脳天を突き刺して瞬殺する。血を吹き出して倒れていく研究員を横目に、部屋の中を物色。
一応、どんなことをしているのか資料があったら流し見程度にしているのだが、基本無いか、アビスに対するどうでもいい資料ばっかり。
どうせ、ここもそうなんだろうなと思いながら、見つけた資料を手に取った。ピラッと流し見する程度だったが、見慣れない単語が出てきたので、ピタッと目が止まった。
「……なんだ、これ」
そこに書いてあったのは、『
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