第4話
マルドゥークが任務へと赴く際は、
校舎の屋上から、音もなく飛び立つので、フェンリルに気づかれないで奇襲をすることができる。
操縦者は、勿論この人──────
「ご機嫌よう。裕樹さん」
「渚様」
────我らが瑠璃学園後方科生徒会長。『ジャンヌ・ダルク』の名を冠する
「渚様もマルドゥークの一員なんですか?でしたら、俺が気づかないわけないのに」
「嬉しいことを言いますね裕樹さん。残念ですが、私はサポートという形になりますので、所属しているとは言えないのですよ」
なるほど?基本のメンバーと呼べる人物は、前線で戦えるヒロインだけということか。
「お話は、終わったあとにしましょうか。花火からの視線が痛いですから」
「ですね」
パチッ、とウインクをする渚様。一礼をしてから機体に乗り込み、花火様の隣に座る。
「裕樹さん。余所見をし過ぎです。あなたは、私のプリンスなのですから、あんまり現を抜かさないでください」
「ははは……」
周りから、クスリと軽く笑われた。
「それでは、随機『ムシュフシュ』。着陸します。衝撃に備えてください」
「衝撃……?って、おっと」
渚様がそういうと、凄まじいGが体に襲いかかる。驚いて一瞬対応が遅れたものの、少し体を揺らす程度で収めたが、隣にいる凛に寄りかかってしまった。
「ごめん凛。大丈夫か?」
「私は大丈夫……なんだけど……」
「?」
同じようか俺に寄りかかるようにしていた花火様を、支えながら起こして凛を見る。彼女は何故か、その隣にいる奏多に寄りかかるように────って、凛は一体どこに寄りかかってるんだ?
「この柔らかさ……弾力……反発感……奏多ちゃん、また大きくなった?」
「私の胸で遊ばないで貰えますか?」
ぽよーん、ぽよーん、と奏多の胸で遊ぶ凛。そろそろ雷落ちても知らんぞーと思いながら、横目で彼女達の様子を観察。美少女が戯れている分に関しては、非常に癒されますからね。
「さて、ではもう一度任務の確認をしてときましょうか」
花火様がそう言うと、未だ遊んでいる二人を除いて頷き、全員の腕に嵌めてある機械を操作する。
腕時計のような形を機械。横のスイッチを押すと、ホログラムが投影された。
「今回のポイントは、静岡県で陥落指定都市の駿河区近くの森です。救出対象は、
躑躅女学園。当たり前だけど、瑠璃学園以外にもこうしたエルドラドってあるもんだな。どれだけ俺、生きていた頃ヒロインに興味なかったんだって話だよな。
「学園長が手に入れた筋によると、フェンリルはアビスを呼び込める装置を開発したとのことです。研究員の護衛に、彼女は恐らく駆り出されているでしょう」
「花火様」
助手席に座っていた、ギフト『千里眼』持ちの、着いてきてくれた先輩が声を掛けた。
「フェンリルロゴの入ってるトラックを確認しました」
「急いで降下準備に入ります。渚、ドアを」
「了解」
ドアを開けたことにより、超高速で移動中のムシュフシュ機体内に、強烈な風が舞い込んでくる。身バレ防止用に被っているフードが飛ばされないように、しっかりと抑える。
「いつも通り、上空で待機してます。頑張ってね、花火」
渚様の言葉に対し、こくりと頷いた花火様。
「それではマルドゥーク────作戦開始」
その言葉と共に、勢いよく空へと身を飛び出した。フードを押えながら、眼科に広がる森をしっかりと睨みつける。
この下に、フェンリル共がいる。
さっきの報告を聞いた時から、胸の殺意が収まらない。
殺す。絶対に殺す。
目標は、上空から迫る死に気づかないで、のんびりと装置の準備をしている研究員。あいつをやれば、装置を動かされる心配は無い。
地面に近づくに連れて、ゆっくりとアロンダイトを上段に構える。そして、タイミングを合わせて────脳天から股間にかけてアロンダイトを振り下ろし、真っ二つにした。
悲鳴すらあげる暇なく殺された研究員。恐らく、コイツは死んだと意識する間もなく死んだだろう。
ブシャァァァァ、と真っ二つ割れた体から勢いよく血が吹きでて、地面に落ちた。
その後も、マルドゥークの構成員が着地と同時に研究員を切り伏せる。
「ひ、ヒィィィィィ!!!」
「逃がすかよ」
悲鳴をあげ、錯乱状態になりながらも逃げる研究員の背中に、分断させた刀身が追いかけて、そのまま背中から心臓を一突き。
「アガッ……」
そして、心臓をぶち破った刀身を、そのままグルグルと体に巻き付けた後、ワイヤーで思いっきり締め付ける。
当然、A-のアビスも余裕で押さえ込み、傷をつけたワイヤーである。人間が受ければ、粉々に砕け散ることだろう。
「な、なんなんだお前らは!!」
殺した人数を数えていると、トラックのコンテナから出てきた人物が叫び声を上げていた。
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これぞ、スタイリッシュ駆除。相手は脳天から真っ二つに斬られて死ぬ。
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