第3話
「びっくり?」
「全くそんな素振りは見えませんが」
そこうるさいよ。顔に出ないだけで結構びっくりはしてるんだよ。
しかし、この場で
「マルドゥークにいるからには、わたくしによる手解きは必要ないかと思いますが────」
アシュリー様の手が、頬から首、胸にかけたゆっくりと下がっていき、腹で止まる。
「イ・イ・こ・と。たくさん、してあげますわ?」
この人、物凄いえっちである。腹をさわさわとさすり、耳元で性を煽るようにASMRしてくる人物とか、えっちに決まっている。
まぁ、ぶっちゃけ言うと超魅力的であるのだが、残念ながらアシュリー様が言うイイことをするには、後二週間ほど足りないのである。
「魅力的な提案ではありますが、残念ながら俺のガーディアンは花火様に決まってますので」
「え?」
「まぁ」
「そうなんですの?」
凛、奏多、アシュリー様の目が花火様に向かう。口をパクパクと動かし、花火様に「どうか合わせて」とお願いをしてみる。
「……え、えぇ……まぁ……そう、ですね」
頬を赤く染め、少し下を向いてからフイッと軽く顔を逸らした花火様。まぁ、口にしてしまったものは仕方ないし、俺個人の問題も解決したから、この際本当のことにしてもいいだろう。
この任務が終わったら、改めて花火様と誓いを結ぼう。
「……まぁ、それでしたら仕方ないですわね」
それはもう非常に残念そうに、腕を離したアシュリー様。少しだけ前に出て、腕を後ろに組んだままくるりと振り返る。
「ですが、あなたのガーディアンになることは諦めませんので、花火様が卒業したらあなたをわたくしのプリンセスにしてあげますわ」
「俺、男だからどっちかと言うとプリンスの方だと思うんですが」
王子っていう程に容姿は優れてないと、自分では思うがこの際はしょうがないことである。
「……まぁ、はい。その時まで、アシュリー様の気が変わらなければ、あなたをガーディアンとして迎え入れます」
「嬉しいですわ、裕樹さん。こちらは、ほんのお礼です」
スっ、と素早く俺の目の前まで移動したアシュリー様。両手で、俺を逃がさないように頬に手を当てると、そのまま俺にキスをしてきた。
「なっ!?」
「まぁ!!」
「………」
一瞬だけ、抵抗しようとしたが、下手をするとアシュリー様を傷つけてしまう可能性があるので論外。それに、キス程度で動揺する俺では無い。ならば、このまま離れるまで様子見を──────ふーん。
アシュリー様の目が、俺を試すように笑い、下で俺の唇をトントンとノックしてくる。どうやら、ディープの方もお望みのようである。
──────舐めやがって。
カチリ、と脳内のどこかでスイッチが入ったような気がした。
「んっ……ふぅ、もう、いけずな人──────!!」
「逃がすかよ」
離れようとした手を強引につかみ、こちらに引き寄せ、もう一度キス。アシュリー様が目を見開き、抵抗しよう掴まれていない方の手を胸に置き、離れようとしたが、その前にガッチリと腰に手を回す。
「ふわっ……んっ……!!んんっ!」
脇腹を撫でるように動かし、喘いだ瞬間に、舌を侵入させ、口内を蹂躙する。
ぶっちゃけ、キスなんてやらかし時の花火様としかした事ないが、体が無意識にそうしろと囁くように動く。抵抗していた手が、徐々に力が無くなっていくのを確認し、更に抱き寄せる。
攻め続けること約三十秒。ゆっくりと唇を離すと、彼女の荒い息遣いを近くで感じる。腰と手を離すと、ふらふらしている足で、その場に座り込んだ。
「はぁ……はぁ……こ、このわたくしが……負ける、なんて……」
「いけないお姫様だな」
しゃがみこみ、彼女の顎に手を伸ばしてクイッと顔をあげさせる。その顔は、真っ赤に染まっており、ちょっとした酸欠からか、目尻に涙が浮かんでいた。
「次は、もっとぐちゃぐちゃに、ドロドロに溶かして────俺以外、考えられないような体にしてやんよ」
「っ!……はい♡」
手を離して立ち上がり、こちらをじとーっと見つめている三人の元に向かい、腕を組んだ。
「……なんで俺あんなことしたんだ?」
「自分でも理解不能!?」
顎に手を当てる。いや、マジで俺、なんであんな立ち向かうようなことやったんだろう。自分でも不思議である。
「はぁ……とりあえず、あんな刺激的なこと、もうしないようにしてください裕樹さん。なんというか……我慢できなくなってしまうので」
「任務が終わったら、私もさっきの所望します」
「あ、ずるい奏多ちゃん!裕樹くん!私も私も!」
「はよいけ」
その後、座り込んだアシュリー様のケツを引っ叩いて正気に戻し、急かす長月さんの冷たい視線を背に任務へと向かうのであった。
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この行動についても、ちゃーんと回収します。恐らく、めちゃくちゃ後になりますけど。
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