第2話

「……そんなこと、可能なんですか?」


 多国籍研究企業『フェンリル』。アメリカ、ロシア、日本、イギリスなどなど、一国に一社なんてキャッチフレーズがあるほど、その存在は世界に根付いている。日本にだって、最低一県に一社なのだから、相当数がある。


 流石に、あまりにも無謀すぎる。


「日本に残るフェンリル研究支部は、残り44社です」


「………え?」


「この戦いは、10年以上も前から続いています。世界全体で見ても、残り300程度。完全破壊も、夢では無いのですよ」


「そう、何ですか?」


「えぇ。特に、火蛇穴先生がマルドゥークに所属していた頃は、それはもう破竹の勢いで潰して、殺し回ってそうです」


「あぁ~」


 あの生徒思いな火蛇穴先生だったら絶対やる。あの様子だと、絶対仲間思いでもあったはずだから、拉致られたことを知ったら今すぐにでも殴り込み行きそう。


「マルドゥークは、決まったメンバーというものがありません。その日、暇な人が10人程度で赴いて施設を潰します」


「……決まったメンバーというのがない?ということは、ギルド人数は15名ですか?」


「いえ、裕樹さん含めて41名です」


「‥‥‥41?」


 多くない?


「えぇ。非公式なので、人数に縛りはないんですよ」


「なるほど」


 納得してしまった。


「これで、マルドゥークの説明は以上です。なにか質問などはありますか?」


「いえ、大丈夫です」


 今のとこ、特に聞きたいことは無い。花火様が丁寧に教えてくれたから問題ない。


「それでは裕樹さん。貴方に、マルドゥーク最初の任務を与えます。明日の朝二時半に、学園長室まで」


「何かあるんですか?」


「自己紹介です」







 と、言う流れがあって冒頭に戻る。


 てかフード邪魔すぎ!長月さんが雰囲気作りのために電気も消してるから足元が見えづらくて見えづらく仕方ねぇんだわ。


「あ、少年!それを外すとはいけないんだぞ」


「あなたが雰囲気作りのために電気消してるから見えづらいんですよ。あと、この場でフードをする必要はありません」


 フードを取り、少し頭を揺らして髪を整える。


 しかし、これから任務ね。いきなりだが、そうも言ってられないだろう。


 ────助けて。


 あの声も、気になることだしな。


「とりあえず、私は着いていきます。任務の場所を把握してますし」


 隣に来たのは花火様。俺を誘ったので、当然マルドゥークの一員である。邪魔なのか、花火様もフードを外していた。


 そして、驚いたのが二つ。


「‥‥二人も、そうだったんだな」


「あはは……」


「すみません裕樹さん。マルドゥーク所属は黙ってないといけないので」


 右手で頬をかき、申し訳なさそうにしてながら、茶髪のサイドテールをちょこちょこ動かしているのが、柊凛ひいらぎりん。俺に向かって、申し訳なさそうにしている銀髪碧眼の美少女が、すめらぎ・セシリア・奏多かなたである。


 どちらも、俺のクラスメイトであり、守りたい大切な存在だ。


「いや、別に大丈夫だ。二人も参加してくれるのか?」


「はい!困ってるヒロインは放って置けませんから!」


「えぇ。フェンリル絶許です」


 これで四人である。しかし、残念ながらこの中に知り合いはこれで全員である。あとは、興味がある人を待つだけ……ん?


「あなたは────」


 花火様が声をかけると、俺達に近寄ってきた人の唇が、ニヤリと笑うとそのフードを取り払った。


 ファサァ!と見事にピンクの髪をたなびかせ、その赤い目は俺を捉えると、妖しく光る。


「初めまして、小鳥遊裕樹さん。わたくし、アシュリー・ビバーチェと申します。以後、お見知り置きを」


 コートの裾を軽く持ち上げ、見事なカーテシーを披露する、アシュリーと名乗った人物。そのカーテシーに、俺はどこか既視感を感じて首を傾げた。


「アシュリー?アシュリー………あ!」


「おや?その反応ですと……どうやら、知ってくれたんですの?嬉しいですわ」


 そう言うと、彼女は素早く俺の隣に陣取り、腕を抱く。彼女のそれはとてもとてもご立派なお胸様を、これでもかと言うほどに、むにゅぅぅぅ!!と押し付ける。


「アシュリー様、でよろしいですか?」


「えぇ、構いませんわ」


 対する俺。表情筋は全くもって変わっていない。うおっ、柔らかっ。とは思うが、まぁその程度である。


「確か、花火様のお見合い決闘で、一番槍で出てた方ですよね。強烈だったので、覚えてます」


「それは嬉しいです。わたくし、貴方にとてもご興味がありますの」


「そうなんですか?」


 花火様のお見合い決闘に出ていたということは、明らかにソッチのケがあるということだ。まぁ、違う人もいると思うが、アシュリー様は恐らく百合の者。


 つまり、攻略対象は同性だと思うのだが……興味?


「えぇ。花火様にはすげなく断られましたが、今はわたくし、貴方のことで頭がいっぱい」


 甘えるように、全身でしなだれかかる。アシュリー様の手が俺の頬まで伸びて、軽く押される。


 俺は、逆らうことなく、アシュリー様と目を合わせた。


「どう?裕樹さん、あなた、わたくしの下級生プリンセスになる気はなぁい?」


「これまたなんとびっくり」




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アシュリー様は、すごくえっちなお姉さんです。攻めるのは得意だけど、攻められるとよわよわ。オラッ!次話で即落ち二コマ見せてやんよ!

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