第11話

「まぁその話は一旦置いときまして」


「全然置いとけないんですが」


 アビスがどんなことされるか気になって夜も眠れないよ。まぁ俺は眠る必要性が一週間に1回しかないんですけどね。がはは。


「裕樹さん」


「はい」


 俺の前を歩いていた花火様が、クルリと振り返った。


「我々は、貴方を対フェンリル特殊部隊『マルドゥーク』へ勧誘したいと思います」


「……へ?」











「次の実験だ。ドリルを用意しろ」


「了解です」


 とある県のフェンリル研究支部では、今日も一人のヒロインが、マッドサイエンティスト共の餌食となる。


 男が見つめる強化ガラスの向こう側では、ハイライトの消えた少女が、四肢を拘束され、台の上で横たわっている。


深化フォースヒロイン能力効果実験────開始」


「ドリル降下開始」


 キュイイイイン!と、聞く人が聞けばトラウマを思い出すような音を響かせ、回転しながら


「……ぁぅ……ぃ」


 だがしかし、彼女は数多くの実験により、脳がこれ以上傷つけさせないように、精神をシャットアウトしているため、何も感じることは無い。


 二秒ほど、肉を貫いてなお回転していたドリルは、ゆっくりと上昇。傷つけられた乙女の体は、しっかりと貫通していた。


「フォースギフトはどうだ」


「被験ナンバー154番の体内の魔力活性化。フォースギフト『再成リジェクト』の効果を確認」


「よし。これはまたいい素体が手に入ったな」


「所長。次はどうされますか?」


「まずは魔力を回復させろ。下手に多用して、アビス化しても困るからな」


「了解しました」


 万が一にも抵抗されないように、ヒロインは厳重に手足を縛られ、牢屋へと入れられる。


 粗雑に投げ飛ばされたヒロインは、二回ほどバウンドして、床に転がった。


「……しかしよ。見た目だけならいいんだからさ、一発や二発くらいはヤリてぇよな」


「止めねぇぞ。ま、貴重なモルモットに手を出して、所長の怒りに触れても問題ないならな。俺はゴメンだね」


「冗談だって。種類が違うメスに欲情なんかするかよ」


「……にしては冗談に聞こえなかったが」


 投げ入れた二人の会話が聞こえないくらいになってから、少女はもぞもぞと動き出し、縮こまる。


「……だ、れ……か」


 ポツリ、と何も移さない目から涙が零れ落ちる。


「こ……こ、か……ら」


 ドリルに貫かれたはずの足は、完璧に傷が塞がっていた。


 ──────助けて


「っ!!!」


「……どうしました?」


「………いえ。何でも」


 その願いは、一人の少年の元にだが、確かに届いた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これにて、第四章終了でございます。次回からは第二部五章が始まります。第二部は『怒り100倍、マルドゥーク』五章『深化ヒロイン』となります。二部題名は、アン〇ンマン的なノリでどうぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る