第4話

 ジャガーノートには、大まかに分けて三つの部位がある。それが『刀身』『砲身』『柄部位』である。


 刀身が主に近接戦で使うための部位……まぁ、アビスをぶった斬るための部位である。とりあえず、ここが一番重要そうなので後回しにする。


 次に柄部位。刀身と砲身を組み合わせるための部位だ。刀身、砲身を組み込むための穴も開けないといけないし、手で握るグリップ部分もバランス良く書かないといけないため、意外と難しい。


 ホログラムで、色んな会社のジャガーノートのカタログを見ながら、模造紙にペンで柄部位を描いていく。今はほとんどデータ入力が主となっているが、こうした設計図とかは、未だに人の手で描いた方がやりやすい。全体を確認しながら行けるからね。


 目を忙しなく移動させながら、どんな形かを決めていく。


「……果たして、俺に砲身はいるのだろうか」


 ジャガーノートは、これまで四回ほどの大型な性能アップデートが行われいる。


 ジャガーノートの前身とも言える、初代────いわゆる、第一世代型と言われるものがある。アビスが現れ、半年ほどの急ピッチで作られたこれは、攻撃力も弱く、すぐに壊れると言った欠陥があり、武器がヒロインに追いついていなかった時代である。


 更に、前衛は前衛。後衛は後衛と言った別れ方がしっかりとしており、剣か銃かという選択肢しかなかった。


 三年後、先程の欠陥が大幅に改善された第二世代型が台頭し、ようやくアビスとマトモに戦えるようになった。更に、前衛武器に種類が増え、剣以外にも槍や斧、ツインブレードといったのが増え、戦術に幅が増えた。


 だがしかし、このままでは前衛と後衛の被害の差があまりにも大きく、いずれ後衛のヒロインしか居なくなるのを危惧したジャガーノート製造会社の『ブリティッシュアルビオン』が、10年後に『可変式機構』が付いたジャガーノート……つまり第三世代型が登場。


 可変式機構とは、剣にも銃にもなれる画期的な機能であり、スイッチひとつで剣から銃、銃から剣へと高速で変形させることができるようになった。


 そして、現在の第四世代型。もうこれ以上の性能アップは見込めないと思えるほどに完璧なジャガーノートである。今までの悪い所を全部改善し、文句一つのないものが今の戦場の主流となっている。


 まぁ、専用機となったらその次の第五世代型というのになるが、コストも人員も何もかも足りないし、ヒロインとしての活動を終えたら、他の人じゃ使えなくなってしまうので、あまり作っても意味が無い。


 話を戻すが、現在あるジャガーノートにはこの『可変式機構』が組み込まれているので、二つの武器を器用に使いこなせる腕が必要だ。


 だがしかし、あまり言いたくないが俺は射撃の才能がない。


 今すぐにでも消して、忘れ去りたいあの記憶。的に一発も当たらなかった俺の腕前なら、逆にない方がいいかもしれない。


 となったら、敢えて柄部位もシンプルにするか。あんまり凝ったものにすると愛着湧いて戦場に持っていきづらくなりそうだし。


 ここを、こうして……なんか楽しくなってきたな。いっそ何も考えないで、感性に任せたまま適当に描いた方がいい気もしてきた。一回描き終えたらそれでやってみるか。








「えぇ……」


 そして2日後、月曜日の朝六時。


 俺のジャガーノートが出来た。《出来てしまった》。


 意外と、ジャガーノートの製作には時間が掛からなかった。設計図を描き終えて、試作の第一号が出来上がるのに二時間も掛からなかった。


 製鉄やら、なんやら、資材さえ入れてしまえば、あとは勝手に機械がやってくれるため、俺は端末を操作するだけという、非常に楽なものだった。ちょっと想像と違って拍子抜けだったが、早くできるということは、その分数を回せるということでポジティブに捉えた。


 第一号は、至って普通の剣。やはりまだまだ違和感が残っていたのでボツ。解体して、最初からやり直した。


 第二号は、今も使っている少し大きめな槍の形をしたジャガーノート。まだまだ違和感が残ったのでボツ。


 第三号、第四号とやっていくうちに、だんだんイライラが溜まってきた。


 中々出来ないイライラさと、変なテンションが合わさり、すっごいバカみたいなノリで適当に模造紙を書いて、こんなん無理だろって思えるようなアイデアをポンポンと積み込んで、魔力刻印機に登録されてない効果をもたらす奴を手動で刻印した。ぶっちゃけ、あの時のテンションが変すぎて何をどうやったかもあんまり覚えてない。


 その結果、なんと出来てしまったのだ。どうせ無理だろって思いながら、「ほれ~」という変な掛け声と共に振るったら、飛んでいった。その時、全くもって違和感は感じなかった。


「嘘……だろ……」


 極薄のワイヤーで繋がれ、ふよふよと浮いている刀身を見ながら、俺は呆然と呟いた。


 蛇腹剣アロンダイト。俺の背中から生える触手をヒントに、作り上げた専用機である。



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ということで、主人公の専用機の完成です。恐らく、皆さんが思っているよりもぶっ飛んだ性能をしてると思います。

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