第3話
「お、自動ドア」
鍵を指し、回して抜いたら、自動的にドアが開いた。これまた便利だなーと思いながら部屋に入る。
部屋の広さはおよそ20畳ほど。思っていたよりも広かったが、機械がたくさんあって、ごちゃごちゃしているため歩けるスペースは少ない。
部屋の真ん中には、人1人が寝転がれる、病院にあるようなでっかい装置が佇んでおり、傍にはそれを操作するであろう端末がある。
奥側の方には、まだ暗くてよく分からないため一旦放置。目につくデカイのはそれくらい。
パチッと電気を付けると、今まで見えていないものが明らかに。
「うわぁ……!」
「広。でか。何あれ」
「天井に、アームがビッシリ……」
「早く……早く説明……」
「あ、ごめんなさい美音様」
「移動します」
二人に支えられながら、機械の説明と端末の使い方について教わる。早く終わらせたいがためか、少しだけ早口説明だったが、しっかりと着いていけることに俺自身がびっくりした。
美音様の説明によると、この部屋にある装置は全部で四つ。
真ん中に鎮座している、3m程のデカさがある機械。これは『魔力診察機』というらしい。簡単に言えば、これを使ってジャガーノートのどこに異常があるのかどうか調べることができる。少し応用すれば、人にも使うことが出来て、X線や、レントゲンも撮ることが出来る。
俺を検査した時に使ったのも、この機械である。魔力保有量も、これで調べられるとか。
次に、今回の目的で一番大事なもの。それが『溶鉱炉』である。
部屋の三分の一を占めるこの機械は、ジャガーノートの制作、メンテナンス、装備開発、製鉄などなど、様々なことで使用できる。
ジャガーノートの刀身部分は、魔力合金と呼ばれる物で作られているため、ここの説明はめちゃくちゃ丁寧にされた。
次に、『魔力刻印機』である。『硬化』、『鋭利』、『軽重』などなど、様々なジャガーノートの強化作用を引き起こす『魔力文字』を刻印する為の機械である。
ジャガーノートを人体に例え、魔力を流し込むことによって効果を発揮させるらしい。作られたのが三十年前のことなので、どうやってそれを可能としているのかはあんまり知られていない。
最後に、『レーザー照射機』である。傍にある端末に、設計図を読み込ませれば、天井から放たれる極小のレーザーがその通りに切り取ってくれるという便利機械。これも必要なもので、完成させる際はこれで切り取るようだ。めちゃくちゃ詳しく説明された。
「あと、この机の端末で、色々できる。メンテ待ちジャガーノートを探したり、ジャガーノートに関する本を取り寄せたりとか……説明終わり、寝る」
説明が終わったのが、丁度30分後。凄い正確さだなと思いつつ、美音様は夢の世界へ旅だった。
「……本当に寝ちゃいましたね」
「仕方ない。美音様の寮まで連れていくか」
「手伝います。ということで祐樹さん。今日はここで解散ということで」
「わかった。三人ともありがとな」
「はい。では、また休み明けにお会いしましょう」
今日は金曜日なため、明日明後日は学園もお休みの日である。扉から出ていく三人を見送り、早速俺は端末を起動させることにする。
ドア近くにあるテーブルを叩くと、『ようこそ』という文字がテーブルに浮かび上がり、メニュー画面が表示された。
「……なるほど。確かにこれは色々できるな」
メニュー画面には、『依頼待ち』『単位確認』『装備開発』などなど、様々な欄があった。しかし、今の俺に必要なものはジャガーノート開発に関する知識なので、資料を取り寄せることにした。
ポチリ、と押すと天井の方からグワングワンと何やら機械が動く音が聞こえ、シューーーという音が離れて消える。
何か天井で動いてるのかと思っていたら、またシューーーという音が近づいてきて────天井が空いた。
その事にギョッ!としていると、天井に吊り下がっているアームが動き出し、空いた天井から何かを取りだして、テーブルに置いた。
そこには、一から始めるジャガーノート開発知識!という題名の分厚い本が置いてあるのだった。
「……便利すぎじゃねこれ」
とりあえず、俺には時間が沢山ある。これくらいの分厚さだったら、日付が回ったタイミングで作業に取り掛かることが出来るだろう。
「……やるか」
そして俺は、意気揚々と本を手に取るのだった。
「…よし、大体頭に入ったな」
時刻は、土曜日の午前1時ちょいすぎ。思ったよりも1ページあたりの密度が濃く、予想していた時間よりも長くなったが問題は無い。
これで、存分にジャガーノートの開発に着手することが出来る。今から作る俺専用のジャガーノートのことを思うと、ニヤニヤが抑えきれない。
「設計図、作るか」
俺は、端末から『資材要求』を押して、カテゴリから模造紙を選択するのであった。
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祐樹くんの脳は強化されているため、擬似的な完全記憶を習得しています。なので、他人よりも圧倒的に覚える速度が早いため、こんな荒業ができるということです
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