第2話
「……お馬鹿さん?」
「何言ってるんだ凛。俺は至って本気だぞ」
俺は考えたのだ。どのジャガーノートを使ってもシンクロ値が伸びない。ならば、自分でジャガーノートを作っちゃえばいいじゃん、と。
幸いにも、ここ瑠璃学園にはジャガーノートを作る施設と素材はある。なら、あとは学園長に直談判しに行けばいい話である。
「俺は気づいたんだ。相性のいいジャガーノートが無いなら自分で作ればいいじゃない、と」
「マリーアントワネットもびっくりだな」
「そもそも、ジャガーノートを作るには知識が必要です。魔力工作科の方に指南されても、最低一年は──────」
「大丈夫────ノリで何とかなるだろ」
「………」
ダメだこいつ。早く何とかしないと。そんな心の声が三人から聞こえた気がした。
「幸い、俺は他人よりも圧倒的に時間が作れるし、物覚えもよくなったから、不思議とイけるって感じかしないんだよなぁなぜか」
と、言うことで、放課後長月さんの所に行くとするか。
「失礼しました」
「どうだった?祐樹くん。帰ってくるの早かったけど」
そして放課後。昼休み中にアポイントを取り、先程長月さんとの会話が終わった。
別に、俺一人だけで良かったのだが、どんなことをするのか気になった三人も着いていきたかったようで、急かすように凛が結果を聞いてくる。
俺は、先程長月さんから受け取った鍵を、人差し指でくるくると回転させた。
「『面白そうだからヨシ!許可する!』だってさ」
「相変わらず軽いですね、ウチの学園長は」
「まぁ良くも悪くもそれ含め愛されてる証拠だからな。たまにあの人の行動には呆れるが、嫌いじゃない」
部屋も資材も余ってるから、好きに使っていいぞ。出来たら見せてくれというありがたーい言葉を頂いたので、早速向かうとする。
瑠璃学園の校舎は、上から見たら凹のような形をしており、真ん中が本校舎6階建て。右側が強襲棟四階建て、左側が魔力工作棟1階、地下20階建てとなっている。ちなみにだが、後方科は五階にあるらしい。人数が少ないため、1階だけで集まるそうだ。
そして今回、俺が貰ったのは地下13階の部屋。エレベーターに乗り、13のボタンを押す。
「私、あんまり魔力工作科について詳しくないんですよね」
「そうなの?」
「まぁ、私達は基本戦場に立ってジャガーノート振るだけですからね。メンテナンスの依頼で一階には入ることはありますが、あそこだけで完結しますから」
「あれ、中々便利」
ひづみが言ったあれとは、恐らく自動任務システムだろうか。
魔力工作科の一階には、ジャガーノートを預けるための端末と、地下15階まで吹き抜けの空間がある。1階の端末で、ジャガーノートメンテナンス依頼の項目を選択する。
すると、端末の後ろの壁が開き、丁度ジャガーノート一本がスポっと入る空間があるので、そこにジャガーノートを預ける。すると、地下にいる魔力工作科の生徒にメンテナンス依頼が入ったアナウンスがなり、手が空いている人物が修理、又はメンテナンスをする。終わったら、使用者の通信機に連絡が入る。
ジャガーノートには、使用者の魔力情報が保存されているため、特定も容易い。俺も一回見たけど、あれは凄い。
魔力工作科は、どれだけジャガーノートのメンテナンスを担当したかで単位が貰えるかが決まっているから、やり忘れるということがない。
「っと、着いたな」
ピーン、と軽快な音がなり、ドアが開く。ポケットから鍵を取りだして部屋の番号をもう一度確認しておく。
「祐樹くん、部屋はどこ?」
「1326室だな。エレベーター近くの部屋が1301だから……かなり奥の方だな」
地下は、端の壁がめちゃくちゃ小さく見えるほど伸びている。目算およそ70m程度か……?めちゃくちゃ長いな。
そして、これから俺の部屋となる1326室の前に、人影を発見した。あの背が小さくて、地面まで着くようなあの白髪ツインテールは……。
「あれ、美音様じゃね?」
「ホントですね。船を漕いでます」
何だかんだ、めちゃくちゃお世話になっている二年生の美音様である。こくりこくりと船を漕ぎ、今すぐにでも倒れて寝そうな雰囲気なので、少し走ってから近づいた。
「美音様?……美音様ー?起きてますかー?」
「……眠い」
一足先にたどり着いた凛が、美音様の肩を軽く揺する。しかし、あんまり意味が無いようで、少し目をしょぼしょぼとさせただけだった。
「美音様、部屋の前に立ってどうしたんですか?」
「祐樹を、待ってた」
「俺をですか?」
「学園長から連絡が来て、部屋の使い方を教えてやれと。同士が増えるのは、大歓迎」
ぐっちょ!と幻聴が聞こえそうなほど、眠そうな見た目とは裏腹に元気なサムズアップをする美音様。
「それはありがたいですけど、いいんですか?めちゃくちゃ眠そうですけど」
「あと三十分なら耐え切れる……だから、早く鍵開けて」
美音様が指を指した先には、この部屋の鍵穴が存在していた。
「分かりました。凛、ひづみ。美音様支えていてくれ」
「分かりました!」
「分かった。美音様、腕失礼しますね」
「うみゅ……くるしゅうない……」
2人の肩に、腕を回したのを確認して、俺は部屋の鍵を開けるのだった。
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祐樹「実はかくかくしかじかで、専用機を作ろうと……」
美冴「ふむ……面白そうなのでヨシ!(この間一秒)」
祐樹「やったぜ」
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