作ってあそぼ!ジャガーノート制作!
第1話
「ぶへー……」
「「「…………」」」
少しずつ、季節が夏の準備に入っていく五月。俺がこの学園に入学して1ヶ月経ったのだが、現在、俺は今一つの問題に向き合っていた。
「凛、奏多。祐樹はどうかしたのか?」
「あ、あはは……まぁ、なんというか……」
「男の子のプライド、というものですね。可愛いです」
「ぶへー」
現在、時刻はお昼時。凛、奏多、ひづみともはやお馴染みと言ってもいい面子と食を囲み、俺は今テーブルに突っ伏しているのであった。
「プライド……?」
「えっとですね……」
俺が、何故こんなにも落ち込んでいるのかは、約一時間前に遡る。
瑠璃学園は、単位制度を導入しており、自分で空いている時間帯に授業を入れるのだが、一週間に三回、クラスのみんなが同じ授業を受ける日がある。
それが、『戦闘訓練』。初心者だろうが、経験者だろうが、魔力工作科が──────というより、美音様が趣味で作ったメカアビスとの戦闘するという授業だ。
目標タイムは三十秒。その時間以内に倒すことが出来れば、正式に任務を受けれるようになり、哨戒任務や防衛任務、遠征などなど、ヒロインとしての活動に幅が現れる。
俺が所属する薔薇組で、上に立つのが奏多と凛で10秒。問題なのが──────
「祐樹のタイムが二人より遅い?」
「私は別に、気にしなくていいと思うんですけど」
「『それは男のプライドとして許せねぇ!』って、意気揚々と戦うのはいいんですけど……」
────俺のタイムが二人よりも五秒遅い15秒なのである。
いや、まぁ分かってるよ?二人は俺よりヒロイン歴長いし、ジャガーノートの扱いも達人級で、花火様には適わないとしても、学園全体で見たらトップ勢である。
でもさ……違うじゃん!例え女の子の方が強くても、こうして戦える力を手に入れられたからには、負けられないというか、いざと言う時に守れない。
誰よりも強くならないと、フェンリルから守れない。
「そんなことで悩んでいるのか?」
「そんなこととは何だひづみぃ!」
「あ、復活した」
「二人が強いことは分かってる。それでも、俺は二人を────仲間を守りたいんだ」
フェンリルの研究支部を潰した時、強く思った。攫わられるヒロインがいると聞いて、もしそれが二人や、瑠璃学園の仲間だったならと思うと、不安で気が気でない。
「あ、あはは……」
「も、もう……祐樹さんったら……」
テレテレ、と凛が赤くなった頬をかき、奏多が両手を頬に当てて恥ずかしがる。
そういえばだが、俺は奏多の呼び方を変えた。向こうからぜひ読んで欲しいとのことだったので、さんを抜いて呼んでいる。はじめてよんだときはとても嬉しそうだった。
「原因は分かっているんだ」
「そうなのか?」
「あぁ」
俺が二人よりタイムが遅い理由はしっかりと分かっている。最初は気のせいかと思って気にしないでいたが、ここまでジャガーノートを振るっていればさすがに分かる。
「俺は、現在存在するジャガーノートとすこぶる相性が悪い」
相性。またの名をシンクロ値。
ジャガーノートは、使い続ければ使い手の魔力を覚えていくという機能がある。これが高くなっていけば、切れ味は更に鋭くなり、より使用者の適性を理解する。専用機とまでは行かないが、汎用機でも極めればSS級を単独撃破も可能である。
しかし、どのジャガーノートでもシンクロ値が最大まで高まるという訳では無い。相性が悪ければ頭打ちも早いし、現在の俺のようにスランプに陥り、命を失う危険性が高くなる。
「相性……今祐樹さんが使っているのは、御三家の『マルミアドワーズ』でしたよね?初心者用で、相性の悪さはないが、相性の良さもないというノーマルタイプ。それゆえ、どんなヒロインでもシンクロ値は70程度まではいくはずですが」
「聞いて驚くな。俺のシンクロ値は『5』だ」
ピシリ、と三人の料理を運ぶ手が止まる。
「「「5!?」」」
「うん」
びっくりした三人が俺を見る。いやいや、嘘じゃないって。ホントだった。
「あ、ありえません……と、言いたいところですがまぁ」
「祐樹くんだもんねぇ」
「いや、そうはならんやろ」
急に冷静になるな。そこひづみ。二人のセリフを聞いて「あぁ~」という顔をするな。
「ですけど、祐樹くんだとしても不思議ですねぇ」
「えぇ。美音様には見せました?」
「見せた。分からんって言われた」
原因は一週間前から分かってはいたので、その日のうちに見せには行った。しかし、帰ってきた言葉『分からない。寝る』のみ。
ぶっちゃけ眠気が凄かったから適当にあしらった感が否めないが、彼女はそこまで適当な人じゃない。
「恐らくだが、別のメーカー品を使ったとしてもあまり効果は見込めないと思う」
別に、ジャガーノートが悪いと言いたい訳では無い。なんとなくだが「いや、頑張ってるんだよ?頑張ってるんだけど……うーん」的なニュアンスを感じたことある。
つまり、ということは原因は俺。
「なら、どうするんですか?」
「専用機を作ろうと思う」
「……誰が?」
「俺が」
「……は?」
ひづみの声が心做しか食堂に響いた気がした。
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我が名はアシタカ!自分のスランプを脱却するために専用機を作ることにした!だが、仲間からは馬鹿を見るような目で見られた!一体どうすればよい!
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