第7話

『裕樹さん』


 突如、ザザっと耳につけている無線機から俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。この声は、よく知っている人の声だ。


「花火様?花火様もいるんですか?」


『えぇ。ワルキューレですからね』


 その称号がなぜ今でてきたかは知らない。やっぱり学園最強だからこういう時も現場指揮取ったりするのかな。


『裕樹さん達も、既に先行している彼女達と同じく伊織さんを救出するのを第一目的として下さい』


「了解です……ちなみに、目の前に出てきた人型の動物はどうします?」


『殺っちゃって大丈夫です。彼らは人の毛皮を被った異星人ですから、殺しても何の罪にもなりません────どうせ、アビスのせいにされます』


「分かりました……その言葉を聞いて、遠慮なくやれそうです」


 花火様と通話していたから今は何とか落ち着いているが、研究所の屋根をぶち破ってからやけに殺したい衝動が溢れる。今すぐに、一人でも多く殺してやりたい。


 だが、先程花火様に言われたとおり、今は伊織ちゃんを救うことが最優先。


「ひづみ。伊織ちゃんがいる場所分かるか?」


「あぁ。瑠璃学園に救われる前まではここで暮らしていた。こっちだ」


 部屋を飛び出したひづみの後を追って隣を走る。所々、爆発音とか、どこかで部屋が崩れている音が聞こえる。他の人も、相当ストレスが溜まってるんだなと思いながら走っていると、前方に人影を確認。


「……!084番!この惨状は貴様が────」


「邪魔だ。疾く失せろ」


 言葉を聞く前に、加速してそのまま奴の腹をジャガーノートで突き刺す。ズシャリ、と肉を突き刺す感触が腕にまで伝わるが、特に何も感じはしない。


「ガッ……!き、さま……!まさかイレギュ────」


「死ね」


「ガ……あああああああ!!」


 グリっ!とジャガーノートを回して傷跡を広げ、そのまま横に振り抜き一閃。血を激しく撒き散らしながら絶命。地面に倒れる前に、壁方向へと蹴っ飛ばす。


「行くぞ」


「あぁ」


 死体に見向きもしないでひづみの案内の元、地下への階段を降りていく。


「意外と複雑な構造なんだな。無い頭働かせやがって……」


「フェンリル内部も一筋縄ではいかないからな。人が多くいるということは、それほど派閥もある」


「こんなとこでも派閥争いはあるもんなんだな」


 くだらな、と思いながら左の壁越しにジャガーノートを突き刺す。「グゥ!」という声が聞こえたのを確認して、もう一度グリグリ回して確実に命を絶つ。


「……今の、よく分かったな」


「何故か知らんが、フェンリル人に対してだけやけに気配を感じる」


 あ、ほらここの部屋にも。地下に降りる途中で、明らかに俺たちがやったやつじゃない血痕と死体があったが、隠れているやつは上手く隠れてるもんだな。


 ま、全部無駄だけど。


 一見、ただの壁のように見えるが、仕掛けなんて回りくどいこと全部無視して壁を蹴りで破壊。そのまま突っ込んでから脳天を一刺し。これで三人目。


 血振りをして、部屋の外で待っているひづみと合流して更に奥へ。


「伊織ちゃんが閉じ込められているところって?」


「地下6階だ。あと四回ほど階段を下りる」


「床ぶち抜きてぇ……」


 できることならこんなところ居たくないので、サクッと助けたい。まぁ地下だからそんな簡単にいかないとは思うが。


「ここには、伊織以外にもどこかから拉致されてきたヒロインも何人かいる。床を破って、その先にヒロインが居たら本末転倒だ」


「確かにそうか……てか、ヒロインも拉致してるとか尚更許せねぇ……」


 またもや隠し部屋を発見。壁を蹴破ってフェンリル人の脳天串刺し。そのままジャガーノートを振り下ろして人体を真っ二つにする。


「……その、さっきから殺してるが大丈夫か?」


「うん?あぁ、大丈夫大丈夫」


 きっとひづみは、人を殺したことによって俺が精神的に病むことを心配しているのだろう。でも、全くもって平気である。俺はそもそも奴らを人として見ていない。


「蚊とかハエとか殺しても、何も罪悪感ないだろ?あれと一緒」


 そんなことより、早く伊織ちゃん助けに行こう。


 地下6階へと足を踏み入れた瞬間、爆発音や叫び声が上からしか聞こえなくなる。どうやら、先遣隊は虱潰しに部屋を探して処理をしているようだ。


「ここより下の階はあるか?」


「いや、この研究所は地下六階までだ」


 階段を降りて、すぐさま右へと方向転換するひづみ。どうやら、そっちに伊織ちゃんがいるようなので、ひづみの後を追おうとして────警笛が脳で激しくなる。


「ひづみ!」


「っ!」


 慌てて追いかけ、ひづみの体を抱えて急いで後方に回避。すると、左の壁から触手が飛び出て、先程までひづみがいた位置を突き刺す。


「外したか。イレギュラーはいい感覚をお持ちのようで」


「────っ!テメェ!!」


 壊れた壁から出てきたのは、全身を鎧で覆った男。


 だがしかし、その鎧はよく見るとのような装甲をしており、更に背中からは触手が生えていたのだ。


 声で分かる。恐らくこいつが、ひづみへ指示を回していたクソ野郎。


 こいつは……こいつだけは即死じゃ終わらせねぇ……!全身の骨をバッキバッキに砕いた後、体の先端から徐々にジャガーノートを突き刺して殺してやる……っ!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この手の小説って、基本主人公と最初に戦う敵ってモンスターとかですよね?


なんで俺初めて細かく書く戦闘シーンが裏組織の人間との戦いなんだ……?普通こういうのってもうちょいあとじゃね……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る