第3話

 お幸せにー!と手を振った後にそのまま学食へと歩みを進める俺とひづみさん。


「しかし、知識としては知っていたが、本当に百合ップルが存在するとは」


 実は正直都市伝説かと思っていた。確かに昨日、訓練所にて強引な距離の詰め方を見たが、あれが成長すればああなるのか……。存分にやってもらいたいですね。


「まぁ、ここは女子校だし、先輩方も綺麗な人が多いからな。無理もないだろう」


「ふーん?ちなみに、ひづみには憧れの先輩とかいるの?」


「別に……私は、あんまり興味無いというか……伊織が居れば──────」


「ん?」


 ひづみの言葉が途中で途切れたので、どうかしたかと思いひづみの方を見たのだが……。


「いや……なんでもない」


 と言われて、視線を逸らされてしまった。


 ふーん……これはどうやら訳アリのようですね。詳しくは分からんけど、なんか闇抱えてそうな気がする。気のせいならいいんだけど。


 少し早めの食堂には、人が疎らにしか座っていなかった。だがしかし、後20分もすればご飯を求めた少女達が雪崩のようにやってくるだろう。


「ほら、いっぱい食べなよ」


「ありがとうございます」


 食堂のお姉さんからご飯を受け取り、後ろにいるひづみを待つ。


「はいひづみちゃん。いつもの」


「ありがとうございます」


「………」


 てんこ盛りーと盛られたご飯の量を見て、やはり絶句してしまう。


 やっぱり、この光景だけは慣れそうにない。


「……?どうかしたか?」


「いや……やっぱりよく食うなと思って」


「これでも私は少ない方だ」


「それで?」


「これで」


 余裕でどんぶりから白ご飯溢れ出てますが?山盛りなんですが……これで少ない方?常識壊れちゃう。


「私からすれば、逆にそれだけで足りるのかと疑問に思うが」


「まぁ、俺は皆みたいに消化が早いわけじゃないからなぁ」


 俺の食欲のなさは、ただ単に消化が遅くて腹に溜まっている状態だと言うのがこの前分かっている。前に、久々に腹が減って調子に乗ってめちゃくちゃ食べて、運動したら、その後食べた状態のままで出てきたからな。


 あれは気持ち悪かった。


「そうなのか……場所はどうする?」


「とりあえず空いている場所でいいんじゃない?」


 移動するのも面倒だし、食堂カウンターからほど近い二人掛けの席へ腰掛ける。いただきます、と両手を合わせてから今日の朝ごはんである焼き鮭を食べる。


「それで、私が裕樹に話しかけた理由なんだが」


「うん?」


 暫く無言の時間が続き、お互いが半分食べ終わったところでひづみが口を開いた。


「私は────というより、学園生徒全員が、裕樹が一度死んで生き返ったことを知っている」


「え、そうなの?」


「あぁ。純粋な疑問だが、お前は何で生きているんだ?本来なら、裕樹は腐った肉でもおかしくは無いだろ?」


「確かに」


 言われてみればである。今の人間の体は、防腐剤とかが使われている食材を食べてるからそんなに早く腐らないとか言われているが、一度死んでいるのなら肉体の腐敗が進んでいてもおかしくは────いや待て。


 確か、美音様が俺の体を徹底的に調べたバインダーの中に、それらしき仮説が書かれていたような気がする。当時は「ふーん」程度で読み飛ばしたが、今の俺なら軽く読んだだけでも思い出せる。


「えーっと……俺の体にアビスが寄生しているのは知ってるよな」


「うん」


「美音様の仮説だが、現在の俺の体には魔力が体隅々にまで潤沢に行き届いている状態らしい」


 魔力というものは、人体の基礎構造を強化してくれる元素である。強化されるということは、活発化するということでもあり、アビスが絶え間なく俺に魔力を供給することで、身体機能を活発化。それにより、俺の体は何とかゾンビにならないで済んでいるのである。


 簡単に言うならば、皮肉にもアビスのおかげで生かされているということである。


「……なるほど」


「あくまで仮説だからな。これ以上は解剖しないと分からんだろ」


 ま、解剖したとしても傷跡は直ぐに塞がっちゃうんですけど。


「ありがとう。助かった」


「いや、疑問が解決したなら何より……あ、そうだ。連絡先交換していいか?またひづみと話したい」


「え……?」


 ポケットからスマホを出し、電話帳を開く俺。しかし、ひづみは目を見開いて疑問の声をあげる。


「……どうした?」


「い、いや……その、そんなこと初めて言われたから……びっくりして」


 ちょ、ちょっと待ってと言い、慌ててポケットからスマホを出すひづみを見ていると、何となく優しい気分になる。


 それはきっと、ひづみがとどことなく雰囲気が似てるような気がして────


「……?なんでそんな優しい目をしてるんだ?」


「いや、何でもないよ?」


「何かある目だろそれは……」


 そしてその後、俺は学園長から緊急の呼び出しがあるまで、ひづみと会話を続けたのであった。


 しっかりと、連絡先は確保しました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

すまない。八年越しに再会(現在21)したギャルゲーを衝動でポチリ、攻略していたら気付いたら今日になっていたんだ……。


ありがとうHOOKSOFT。多分また今日もヒロイン攻略するわ。


なお当時。それがエ〇ゲーとは知らなかった模様。「ふぉぉぉ……!これが噂のギャルゲー!」と逆に感動していた様子

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