フェンリルとかいうゴミの掃き溜め企業
第1話
また、夢を見ていた。
この学園に来てからはや1ヶ月も経過し、大分この体との付き合い方も分かってきた。
三大欲求についても、食欲→睡眠欲→性欲の順に小さくなっていき、周期は一週間、二週間、不明となっている。
どうやら、生きていた頃に俺が大事にしているもの順に欲求が溜まりやすいようだ。
昨日はここに来て2回目の睡眠。花火様との戦闘(約20秒程)もあってか、久しぶりに欠伸をしたような気がする。
そしてまた、俺は二週間前と同じ夢を見ている。ゆっくりと、体が水に沈んでいる感覚。
同じように、光が降りて来るが今回は最初から少女の形で降りてきた。彼女は、俺の手を掴むとそのまま自身の頬に持っていった。
ちゃんと感覚があることにびっくりするが、振り払うことはしないでそのままなすがままにさせる。なぜかは知らないが、別に悪い気はしない。
むしろどこか、安心感があって懐かしい雰囲気のような──────
『────ごめんね』
声が聞こえた。グイッと体が引っ張られると、また俺の唇が彼女の唇が触れ合い──────
「………」
────目が、覚めた。
「んっ……んんっ……」
ググッと上半身を起こして凝り固まった体を解すために伸びをして──────目を開けて固まった。
「………」
目を開けた先には、四つん這いになっている花火様の姿。彼女の頬は真っ赤に染っており、俺のとある一点を見つめている。
正体に冷や汗をかきながら、ゆっくりと目線を下に向ける。
そこには、一ヶ月ほど存在を見せることが無かった俺の息子が──────
「……裕樹、さん」
「あの……花火様……ちゃうんです」
何が違うのか俺も知りたがったとりあえず違う。いや、食欲や睡眠欲があるんならいずれ来るんだろうなと思ってたよ?
でも、このタイミングは違うやん。何で……何で俺が寝てるこの時に……!
「ちょ、花火様!?」
「……知識では知っていますが、こんなふうになるんですね」
え、ちょっと!?それはマズイです!何がマズイっていうのはこの行為がバレた時です!幸い、隣の長月さんのサボり場には誰もいないが、バレた時がやばい!
俺の息子がチョンぎられる!!
「大丈夫ですよ、裕樹さん」
「は、花火様……」
良かった。分かってくれた。抑えてくれるんですね。さっきのは一時の気の迷い。知的好奇心を満たすためだけの────
「初めてですが、しっかりとご奉仕させて頂きます……」
「何も分かっちゃいなかった!」
────花火様の瞳は、熱に浮かされており、どう見ても興奮しているのだった。ま、まぁ、花火様だって年頃の女の子だし……ってなんで俺は冷静に把握しようとしている!?
ちょ、やめ……!あー困ります花火様!そんなたどたどした手付きでベルトを外されるのはとても困ります花火様!興奮しちゃうから!
「………『神縅』」
「え……何でギフト使って──────アッ、逆らえない……!逆らえなくなっちゃう……っ!」
ら、らめぇ!信仰心と身体能力の向上で押さえつけられちゃう!
ちょ──────アッーーー!!!
「……ご馳走様でした」
「……しにたい」
三十分後。塵も積もれば山となるはホントに恐ろしく、溜まっていた性欲は合計三回暴発させることで収まった。
なんか、色々と恥ずかしい所を花火様に見られたし、何故かは知らないがめちゃくちゃ感情が揺れ動いたのを感じて、めちゃくちゃ恥ずかしいセリフを花火様に言いまくった気がする……。
今はもう凪のように落ち着いてはいるが、一度感じた感覚というものは思い出せるので、真っ白な灰となって椅子に座っている。
対して、花火様はめちゃくちゃツルツルしている気がする。しかも、上品に口元をハンカチで拭いてるし。
別に俺は、花火様の事は嫌いでは無いし、なんなら異性にほど近い好きの感情を感じ始めている自覚はある。ふとした時に心臓高鳴るし……。
でも……でも!違うじゃん!もっとこう……いい感じの雰囲気とかでこういうのは経験したいじゃん!まぁ今の俺がいい感じの雰囲気になるのかはとても怪しい所だが。
「フフっ……裕樹さんは、押しに弱い所があるのですね」
「……そんなの、花火様だけにですよ」
「っ、……ほんとに、もう」
花火様がゆっくりと俺の膝に座り、抱き締めてくる。
「……あんまりそういうこと言うと、また押し倒しちゃいますよ」
「……あと一ヶ月は機能しないと思いますよ」
「煽れば、もうちょっと早く溜まるでしょうか」
「……マジでやめてくださいね、本当に」
心臓もたなくなるから。死にたくなるからマジで。
花火様が俺に好意を向けていることなんて、分かりきっていることである。
だから、その好意を利用しているようで、とても悲しくなる。
俺は花火様のことを好きになりつつあるが、まだライクの域を飛び出ていなし、最近は凛や奏多さんにもそういう傾向が見られている。
あまりにも、不義理ではないか。相手は、こんなにも一途に俺の事を思ってくれているのに。
「いいんです。裕樹さん」
「花火様……」
花火様は、ゆっくりと手を俺の頭の後ろに回し、胸に押し付ける。
「裕樹さんが、私の状況に気づき、悩んでいることは分かります。でも、それが私、嬉しいんです」
「……嬉しい?」
「はい。それだけ、裕樹さんが私の気持ちに真剣向き合い、大切に思ってくれているんですから」
そして、花火様は俺の体を起こすと、その唇を軽く、俺の唇と触れ合わせる。
「大好きですよ。裕樹さん。あなたのその優しさや、私を大切に思ってくれる心や、人柄……裕樹さんの全てのことが愛おしいです」
俺の胸に手を当て、しなだれかかってくる。
「返事は、今じゃなくても大丈夫です。ただ、私のプリンセスとなって、私の傍にいてくれれば……」
「………プリンセスはちょっと……遠慮しときます」
俺が唯一絞り出せたのは、この言葉のみだった。
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