皇・セシリア・奏多
私には一人、気になっている殿方がいます。
チラリ、と隣を見る。そこには女子校である瑠璃学園に在籍をしている男の人、小鳥遊裕樹さん。
彼はとても不思議で魅力的な方です。私達をいつもドキドキさせてくれる顔立ちや、言動には困ってます。心臓が持ちません。
本人はそんなに自身の魅力に無頓着のようですが、私からすれば充分裕樹さんは整っており、カッコイイと思います。
そして何より、傍にいると不思議と安心するという点も魅力に拍車が掛かっているように思います。
凛さんは数十分であの笑顔、セリフ、行動の胸キュン三セットの刺激に慣れましたが、私は一日掛かりました。
私は一応、皇技術技研の令嬢であり、婚約者を決めるため様々な男の人とお見合いと評した面談を行ってきましたが、あれは流石に予想外です。反則です。
折角前の席なのですから、意を決して話し掛け、握手までしたのですが裕樹さんのその後の行動が問題です。
此方をいたわる様な丁寧な握手。完璧に計算された首の傾げ方や微笑の使い方。完璧です。全てが私の好みどストライクなのです。
こんなの────気にするなという方がおかしいでしょう?私はおかしくない。
あとあと、全てを包み込むようなあの優しさもダメだと思うんですよ!私が転びそうになった時は咄嗟に支えてくれますし、ペア授業の時緊張してあまり喋れなかった時も文句も言わないで待ってくれたり……さっきも、予想よりも強い勢いの煙から無意識に守ろうとしてくれたり……。
こんなの……こんなの!好きになってしまうに決まってるじゃないですか!私がチョロいんじゃありません!裕樹さんが魅力的なのがいけないんです!
今は明確にライバルと思える存在が二人しか居ないからいいものの、このままだと学園の生徒全員が裕樹さんに好意をよせてしまいます!
今はまだいいのです。裕樹さんと積極的に接点を持っているのは私と凛さん、花火様だけ。後は裕樹さんをアイドル感覚で見ている人だけ。
本当なら、今すぐにでも告白して、私だけのものにしてしまいたい。でも、今告白しても断られるのは目に見えていますし、私のものにするのは実質的に不可能に近いでしょう。
彼は隠しているようですが、彼の秘密は全生徒に通達済みです。当たり前ですね。そうでないと、一部の生徒は女の花園に男を入れるなんて!的な意見も出ると思いますし。
彼は、感情が殆ど死んでいるらしい。確かに、好意を自覚してからなかなかに大胆なスキンシップを──────その、はしたないかと思いますが、少し密着したり胸を押し付けたり……まぁやったんです。
ですが、驚くことに全くもって反応してくれないのです。今では少し眉がピクリと動く程度ですが……まぁ何も反応してくれないよりかはマシです。今は辛抱強くアピールしていきましょう。
そして、この触れ合いから少しは仮説も立てることが出来ました。それは、感情も塵も積もれば山となるということです。
ほぼ死んでいる。逆に考えれば少しは生きているということです。なので、その部分を刺激すればいつかは──────おっと、危ない危ない。未来に期待して欲望が溢れる所でした。私は清楚。
なので、今は裕樹さんの好感度を稼ぐ時期なのです。矢印的には花火様が今の所圧倒していますが、私だって直ぐに追いついてみせます。
裕樹さんの戸籍は既に死んでいるものとして扱われているようです。なので、別に複数人で囲っても問題ないですものね。
「ふふっ……」
「ん?どうしたの?奏多さん」
「いえ。これから楽しみですね」
「え、何で?」
裕樹さんはそのままでいてください。気づいた時には全員好きになってもらって、逃げ場なんてないほどに囲ってあげますから。
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あれ、なんかこの子ちょっと怖くね?
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