第4話

『あー、あー……聞こえてるかね諸君』


 突然、滅多に使われることの無い校内放送が流れる。勿論、声の主は我らが瑠璃学園学園長である。


『今年もお見合い決闘の時期がやってきた。花火のハートをしっかりと射抜き、打ち破った者だけが見事プリンセスとなり、更にはワルキューレの称号が手に入る』


「……ワルキューレ?」


 なんか聞き覚えがあるようなないような。具体的に言えば花火様の口から聞いた覚えがあるような……?


「我らが生徒会長である、花火様の二つ名です。世襲制で、この称号を名乗れるのは世界に一人だけ。瑠璃学園の生徒会長だけが、その名前を使われるのが許されます」


「へぇ……」


『お見合い決闘の時刻は後一時間後、第一訓練所にて行われる参加するヒロインも、そうでないヒロインと、存分に楽しんでいきたまえ』


 ブツッ、と放送が切れ、にわかに教室が騒がしくなる。


「もし花火様に選ばれたらどうしよー!!」


「ヤバい……!今から緊張してきた!人人人人人…………っ!」


「ジャ、ジャガーノートの手入れ大丈夫か不安になってきた……」


「……みんな、参加するのか?」


「花火様は瑠璃学園生徒の憧れですからね。日本人離れしたプロポーションに、どんな時でも動じないクールな姿。そして、私達女から見てもとてつもない美人……憧れるな、というのも無理な話ですね」


「俺からしたら、奏多さんも花火様に負けず劣らず美人だと思うけどな」


「え……?あ……」


 ボソッと言った言葉が聞こえたのか、奏多さんの言葉が途切れる。どうしたのかと不思議に思い、前にいる奏多さんを見ようとしたら、手で視界を防がれた。


「だ、ダメです裕樹さん!今は私の顔を見ないでください!」


「何で?」


「恥ずかしいからです!!」


 断言されては仕方ない。机に頬杖を着いて、前を見ないように窓から外の景色を眺める。


「……全く。裕樹さんはたらしです……」


「たらしなの?」


「たらしです!大たらしです!あんまり、女性に綺麗などと、言ったらダメですよ?」


「本当のことなんだけどなぁ……」


 というか、奏多さんに限らずこの学園にいる生徒は顔面偏差値高すぎ問題が起こりまくってる。俺の地元の中学にもかわいいと噂されている女子は何人か居たが、ここまででは無い。


「ところで、話は変わるけど奏多さんは参加しないの?」


「はい。私は参加しません。そもそも、私はあまりガーディアンを必要としていませんので」


 見ないでも、ふんす!と胸を張る奏多さんがイメージできた。


 確かに、この前の戦闘訓練ではクラス上位────というか、クラストップに君臨しており、実力も既に三年生にも引けを取らないと火蛇穴先生に褒められていた。


 ……俺?俺はあんまり聞いて欲しくはないかな。


「まぁたしかに、奏多さんほどの人ならあまりヒロイン的成長を見込めるガーディアンは要らないかもな」


「はい!……なので、その分。裕樹さんのお傍に……」


「こらそこ!あんまり私たちの目の前でイチャつかない!」






 一時間後。第一訓練所には、今まで見た事ない数のヒロインが集まっていた。


「意外と席が空いてるな」


「花火様に果たし状を申し込んでいる人は別室待機ですので、いる人は殆ど二三年生の人達だけです」


「なるほど。だから人が少ないように見えるのか」


 言われてみれば、見たことない顔の人ばっかりである。一年生ならば、共同授業やら選択授業やらで顔を合わせるが、見たことある顔ぶれは数人程度しかいない。


 現在の俺の隣には奏多さんだけ。凛はどうやら花火様に挑戦状を出していたらしく、別室待機である。


 決闘、ということなのだが俺はヒロインが戦っているところをあんまり見たことがない。なので、ちょっと楽しみしている俺がいる。


「────あ、いた。裕樹」


「………?」


 途端、突然名前を呼ばれたので後ろをむく。奏多さんも気になったのか、声の方向に目を向けると────


「あ」


「あら……」


「探した裕樹。ここにいれば会えると思った」


 そこには、魔力工作科二年生である美音様がいた。


「美音様……そのクマなんです?」


「んぅ……今まで裕樹の精密検査の情報を整理してた。これ渡して説明したら寝るぅ」


「まぁ……裕樹さんはいつの間に『ジーニアス』の美音様とお知り合いに?」


「まぁ入学式の次の日にね」


 桐原美音きりはらみおん。白髪のツインテールを地面に着くぐらいまで伸ばし、特徴的な赤い目をした少女である。


 その天才的な頭脳と、アビスに関する論文をポンポンと上げまくるため、いつの間にか『ジーニアス』という、魔力工作科にしては珍しく二つ名が着いている唯一の存在である。


 ただ、身長が140センチもないので、パッと見マジで小学生のようにしか見えない。本人はあまり気にしていないらしいが。


 彼女との出会いは、入学式の次の日まで遡る。


 入学式の日、美音様にメールで呼び出された俺は、その足で魔力工作科が本拠地としている地下へと向かった。


 魔力工作科の棟は、強襲科と比べて一階しかないが、その分地下に伸びており、存在している階数はなんと20階層まで。


 魔力工作科には、一人一人に研究施設となる部屋が与えられているのだが、美音様は功績がデカすぎて彼女の領域。初めて行った時はぶったまげた。


 ちなみに、気絶中に俺の体を検査したのも美音様だったらしい。




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星くれぇ……面白いと思ったら星くれぇ……!(強欲)


一日のPV数が1000超えたのも久々だなぁ。まぁ昨日は三話も────あ、いや。あの時はまだ寝てないから一昨日判定だわ。

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