第3話
腕を組んで考えてみても、残念ながら今まで俺にはこういった女性経験というものは無いので、何も浮かんでこない。こういう時、モテにモテまくってた友達ってどういうことをしていただろうか……。
……無理だな。思い返してみたが、やっても逆効果にしかならない気がする。
脳内に浮かんだ友達の顔を蹴っ飛ばしてからこの状況を打破すべく、頭を働かせる。しかし、残念ながら強化された脳でもお手上げのようである。
「裕樹さん!」
「裕樹くん!」
「「あなたはどっちと登校するの!」」
「……そんな一昔前のガール〇レンド(仮)みたいなこと言われても」
ちなみに、そんなシーンがあったかどうかは知らない。
とりあえず、非常に申し訳ないが今回は凛に遠慮をしてもらう代わりに、明日は一日中一緒にいるという約束を取り付けた。
「絶対!絶対だよ!おはようからおやすみまで一緒にいるからね!」
そうなると凛は家にお泊まりをしなければならなくなるのだが。というツッコミを入れるまで走って去っていった。
悪いことをしてしまった。明日は凛のご機嫌取りだな。
「凛さんには、悪いことをしてしまいましたね」
「ですね。これで絶交とか言われたら悲しいですね」
「凛さんの態度を見てそれは無いと言えますけどね」
学園の中庭を歩いていると、ごきげんようと声を掛けられるので、手を振って挨拶をする。最初の一週間はこの軽い挨拶もなくて、ヒソヒソと赤い顔で遠くから見られるだけだった。それを考えるとなかなか進歩したものである。
玄関に入り、そのまま左に曲がって強襲科に繋がる通路を歩き、階段のあるところで花火様とは別れる。
「それでは、私は学園長の所に行って、今日の進行を聞いてきますので……ちゃんと、彼女の相手をしてあげてくださいね」
「あ、あはは……」
ちらりと後ろを見ると、ぴょこりと茶髪のサイドテールが見える。見つけて欲しいのか、見つけて欲しくないのか。わっかんないなこれ。
「また後で会いましょう」
「はい。また後で」
胸元で手を振り、階段を昇っていく彼女を見送ったあと、顔を凛が隠れている場所へと向ける────あ、顔出してる。
「おいで、凛」
「えへへ、教室まで一緒に行こ?裕樹くん」
「もちろん。仰せのままにお姫様」
俺の手を握ってそのまま引っ張る彼女。今更だけどこの子、なかなかにパーソナルエリアが狭いな。俺が普通だったら秒で好きになって秒で告白してるぞ。
「あ、ごきげんよう裕樹さん」
「ごきげんよう、凛さんと裕樹さん」
「ごきげんよう」
「ごきげんよう~!」
教室に入り、クラスメイトの挨拶もまばらに席につき、机に備え付けのホログラムディスプレイを付けて今日の予定を確認。
「ごきげんよう裕樹さん。今日も凛さんと仲がよろしいですね」
「ごきげんよう奏多さん。あの子距離感詰めるのえっぐいからあんなことは普通にやるよ」
ほら、と目線を少しズラして凛を見る。彼女とは席が離れていて反対側の席。そこでは、前の席の子と両手を繋いで何やらキャッキャッとはしゃいでいた。
先程、わざわざ椅子を引いて肩肘を俺の席に着いて挨拶をしてきた人は、
イギリス人と日本のハーフであり、透き通るような銀髪と、碧色の目は母親譲りらしく、高校一年生とは思えない色香と抜群の顔立ち。
髪をふわふわと緩くウェーブをかけており、一目見たらとてつもないお嬢様に見える。まぁ実際お嬢様らしく、何と日本のジャガーノート製造会社である『
凛の様子を片目に収めつつ、ホログラムをタッチして予定表を開く。
「……ん?」
「どうかしました?」
「いや……ん?えぇ……?」
脳が困惑する。え、何この『お見合い決闘』って。どゆこと?
前の席から移動し、俺の肩に両手を乗せながら背後から覗き込む奏多さん。彼女が見やすいように、俺は少し体を移動────させようとしたら抑えられた。
「……あぁ、これですか」
「花火様からプリンセスを決めるための決闘があるということは知ってたけど……え、まさかこれのこと?」
「えぇ、これの事です」
「マ?」
耳元で囁くように話す奏多さん。ついでに言うと何やら色々と押し付けられるような気がするが、俺はまずこのお見合い決闘の疑問を晴らさなければならない。
「絶対これ名付け親長月さんだろ」
「この話は有名ですから、当時まだ中学三年生だった私の耳にも届いてましたよ」
「そんなに?」
高等部と中等部はそこまで離れてないと言っても、校舎は別々である。
「はい。学園長が大々的に宣伝してましたので」
「楽しんでんなぁあの人」
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約一年ぶりに本格的に始めた長編小説の投稿ですが、少し前に星評価が100を超えました。ありがとうございます!
久々にしては中々いいスタートを切れていると思います。でももっと星評価下さい(強欲)
応援よろしくお願いします
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