第2話
「今、以外とマトモだと思いました?」
「めちゃくちゃ思いました」
長月さんだったら、もっとヤバめなこと言ってもおかしくない。
まぁでも、あまりの多さにとか花火様言ってたけど、まぁ30人くらいなんじゃない?だから長月さんもあまりふざけなかったんだと思う。
「当時の私の元に届いた契約書は約150枚。新一年生の5分の3です」
「え”っ……」
変な声が出た。150人?
「一見マトモだと見せかけ、数を見ればトンでも無いことに気づく……しかも、学園長は面白がって態々訓練所を貸し切って公開決闘にしたり……」
「…………」
前言撤回。やっぱあの人普通じゃねーわ。
あれか。今年は二年生プラス、新一年生の分もあるから数は更に多くなる。だから授業免除になるのか。
「それじゃあ、今年もやるということは、去年は花火様のお眼鏡にかなう人は居なかったんですね」
「いえ、私はミルフィーさん……あぁいえ、とある人に決めようとしていたのですが、学園長が何故か私に勝った人じゃないとダメといい始めまして」
「ほんと何してんだあの人」
学園最強は誰にも負けないから学園最強なんだよ。それ言ったら全員無理じゃん。
まぁ、流石に花火様は今年で瑠璃学園にいれるのは最後だから取るとは思うけど……。
「それより、今は裕樹さんも自分の心配をした方がいいですよ?」
「え、俺ですか?」
花火様がジト目を向ける。そんな表情も可愛いなこの人。
「裕樹さんの声は三年生の教室でもよく聞きます。二年生の人が、裕樹さんをプリンセス……この場合、プリンスですか。プリンスにしたいという方が出てきてもおかしくありません……私のように」
「いやいやいや、無いでしょ流石に」
それをこの前、俺は花火様から誓いを結びたいと言われた。そんな時でも全然揺れない俺の感情にあの時ばかりは悪態を着いた。
もっとキュンキュンする青春送りたかった……。
あ、勿論その申し出は断りました。凄く個人的な事で。
「一応心の準備はしておいた方がいいかもしれませんね」
「大丈夫だと思いますけどねぇ……どうぞ、今日の朝食です」
ピーンポーンとインターホンのチャイムが鳴り、おや?と首を傾げた。今までこの邸宅にやってきた人は二名のみ。勿論、皆お馴染みの花火様と、堂々とサボり場としてたまに入り浸っている長月さんだけである。
花火様は現在一緒に登校しようと靴を履いてる途中だし、長月さんはそもそもチャイムなんて鳴らさない。
「はーい」と言って靴を履いたあと、玄関を開ける。そこには、見覚えのある茶髪のサイドテールを風に揺らして立っている凛がいた。
「あ、ごきげんよう!裕樹さん!」
「ごきげんよう。どうかしたか?凛」
「別に、どうかしたわけじゃないです。ただ、裕樹さんと一緒に登校したいなぁって」
「そうなの?実は今────」
「裕樹さん?来客は誰でしたか?」
「──────え!?」
俺の後ろから出てきた花火様を見て、目を見開かせた凛。すると、口をあわあわと動かした後、俺の手を掴んで少し花火様と距離を取った。
「ゆ、裕樹さん!ちょっと!」
「?おう」
手を引かれるがまま着いていき、少し歩いたあと凛が耳元でこしょこしょと喋る。俺と凜ではそこしこ身長差があるため、少し顔を傾けた。
「ど、どうして花火様がここに!?」
「いや、別に俺が花火様の朝ごはんを基本的に作ってるだけだけど」
「て、手料理……!何時からですか!?」
「?割と最初の方からだけど……なんで?」
「だ、だって……!わ、私が裕樹さんと最初に出会ったのに……っ!」
「た、ただでさえ
「────あなたは確か、柊凛さんでしたよね?」
全然戻ってこないことを心配したのか、花火様がこちらに寄ってくる。
「わ、私の事知ってるんですか?」
「えぇ。一年生の情報は全部頭の中に入ってます。それに、凛さんは中等部の頃から物凄い活躍をしてましたから、記憶に強く残ってます。それで、裕樹さんとはどのような関係ですか?」
にっこりと、花火様が笑っている。
──────笑っている、のだが。どうして笑っているように見えないのだろうか。物凄く不思議である。
「わ、私は!裕樹さ────裕樹くんとは一番仲がいいお友達です!クラスメイトです!」
凛も凛で色々な部分をめちゃくちゃ強調して言っている。あと、さっきまでさんだったのに、今の一瞬でくん呼びに変わった。
「あらあら」
「ぬぬぬぬ」
何故だろう。何故、この二人の目から火花がバチバチと弾け飛んでいるように見えるのだろう。まぁ、俺はラノベの主人公達みたいに鈍感で難聴系じゃないので原因は分かりますが。
まぁ、俺、ですよね……うん。どっからどう見ても。
あんなにあからさまに好意をぶつけられたらハッキリわかる。二人は俺に気があるんだろうし、なんなら花火様からは告白紛いなことされたし。
うーん……どうやったらこの場を収めることが出来るのだろうか。
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今作主人公は鈍感難聴系イケメン主人公ではありません。むしろ、強化された脳がフルで回転していやでも気づいてしまう系主人公です。
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