第8話
一瞬、この扉を開けるかどうか悩んだがまぁいいやという感じでそのまま開ける。
「「「「「っ!!」」」」」
バッチリと、俺と教室の皆と目が合う。俺はそれにチラリと目を向けただけにして、黒板の前へと向かう。
こういう時、大体黒板の所に座る席が記されている紙があるもんなんだが……お、あったあった。
「えーっと、小鳥遊……小鳥遊……」
こういう場合、大抵名前順になると思うのだが、た行に俺の名前は無し。そのまま指をスライドさせ、漏れがないように1つずつ確認していくと……あった。窓側の列一番後ろ。心の中でガッツポーズをした。
まぁ前にいたらさっきの入学式の時と同じように、俺が目線独り占めしめしちゃうからな~なんつって。まぁ朝のを見る限りマジでそうなりそうなんだけど、だから敢えて一番目立たない席にしたのか。
めちゃくちゃ意味ないと思うけど。
「諸君、全員いるか────と、小鳥遊裕樹。席の確認中か?」
名前を呼ばれたので、声を掛けられた方向に目を向ける。
見た感じ、絶対に生徒では無いためここの担任の教師改め教導官と言った所だろうか。
教導官とは、ヒロインを教え導く立場にある。既にヒロインとして戦う力はほぼ失ったものの、短時間ならジャガーノートを振り回せるので、戦術から戦闘法まで、様々な事を教えてくれる人である。
また、教導官はヒロイン時代に凄まじい戦果を上げた人物しかなれないとあの本で読んだ。俺は詳しく知らないが、後ろの方から「ねぇ、あの人ってもしかしたら……っ!」という期待を含んだ声が聞こえる。
「はい。先程確認が終わったところです。教導官殿」
「その呼び方はやめろ。私はあんまり好きでは無い……席に着け、ホームルームを始める」
教導官の人が入ってきたため、慌てて席に戻るクラスメイト達。俺も紙に書かれてあった通り、席に着いた。
「新入生諸君。入学おめでとう。私がお前達の担任となる
おや、見た目とは裏腹に、中々フランクな先生のようである。
少しキリッとした赤目に、燃えるほどに眩しい赤い髪を肩あたりにまで伸ばした、どちらかと言えばカッコイイよりの人。これまた女子人気高そうだなーと思いつつ俺は耳の穴に手を突っ込んだ。
はい聞こえませーん聞こえませーん。ここまで来たらさすがに予想出来るし、名前聞いたら俺でも知ってるようなとんでもない人ですやん。今頃、教室は「キャー!!!」という黄色い悲鳴が響いてるんだろうな。
火蛇穴鈴奈はヒロイン、又はヒロインを志す人だったら誰だって知ってる存在。本に書いてあった。
どんなことをしたかは俺にはハッキリとした凄さは知らないが、アビスを生み出し、けしかけるようにする拠点のようなもの────通称『
淵界は、危険なアビスや、強力なアビスがうじゃうじゃいるらしく、これを排除しない限り、アビスは永遠と増え続ける。これを消し飛ばす為には、学校丸々一つの戦力がいるらしい。
それを、一人で何個も消し飛ばし、人類の生存圏を広げた英雄。それが、火蛇穴鈴奈なという人物である。
うーん、化け物である。一線からは身を引いたはずなのに、勝てるビジョンが見当たらない。
これがヒロインか……すげぇな。あと、めちゃくちゃスタイルがいい。
「静まれ静まれやかましい!ホームルームが進められん!」
教育簿をパンパンと叩き、どうにかしようとする先生。軽く指を開けたがまだまだ五月蝿そうなので暫くこのままでいよう。
「ええい……っ!これだから新入生は嫌いなんだ!後で殴るぞ美冴ー!!!」
今日もいい天気だなぁ。
「落ち着いたかアホども」
「「「「「「「ごめんなさい……」」」」」」」
俺が外の天気を見て黄昏ている間、教室内では火蛇穴先生による愛の鉄拳制裁が行われていた。乙女の尊厳として、頭から出ているたんこぶのような物は見なかったことにしておく。
余談であるが、隣のクラスからも「パシーン!」という音が聞こえたので、恐らく似たようなことが行われております。
大丈夫かなこの学校。
「淑女として、ヒロインとして、もう少し慎みを持て────でないと、生き残れないぞ」
「っ」
纏う空気が変わった。戦場から退いたとは言え、流石は歴戦のヒロインと言ったところか。覇気にも近い殺気を飛ばして、全員の気持ちを入れる。
そう、ここに足を踏み入れたからには、中等部の頃や、今までの生活といった『お遊び気分』のままでは、いざという時に戦場に散る。
まるで、美しくも儚い花のように────────
「それでは、ホームルームを始める。全員、耳の穴かっぽじって聞いておけ」
「…………」
「なんだ小鳥遊裕樹。何か言いたげな顔をしているが」
「………いえ、ナンデモナイデス」
淑女として注意するのに、先生のその言い方はどうなのかと思ったが、やっぱり突っ込まないでおくことした。
怖いし。
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プロローグ読んでくれた人が皆星評価入れてくれれば嬉しいのに(強欲)
星評価下さい……よろしければ
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