月日は流れる
午前12時、もう夜も深い頃だ。にもかかわらず、モノトーンの落ち着いた雰囲気の部屋で暖炉に火を灯し一夜を過ごしている男が居た。男はソファーに腰掛けコーヒーを片手に物思いにふけった様子でアルバムを開く。そして、隣にある誰も居ないはずの椅子を眺めていた。
-----------------------------------------------------------------------
ここは修正極東修練所。人類はある時から侵攻され窮地に陥った。ここは、人類存亡をかけた最後の希望の地なのではなくただの学校である。そうただの学校。
今から15年前(第1回異世界遠征後)、襲来した。織人(侵攻者連合)によって人類は滅亡に追いやられた。正確にいうとこれは人類を標的にしたものではなくお伽噺の世界を標的にしたものを人間側が面白がって追跡したところ巻き込まれたものであった。
今はというと時々警報がなることがある程度である。
紺色のスーツにつばの長い防止を被っている男が3年F組に入ってきた。
男は教室に入ってから挨拶一つせず教壇に肘を付けて手のひらでこめかみ辺りを抑えながら本を読んでいる。
キーンコーンカーンコーン、チャイムがなったが男は微動だにしない。
「起立、番号始め1」
2、3
委員長括弧仮りのペルネティア=ルクスタの合図で生徒が番号を言い終え
「おはようございます」
と挨拶をした所でようやく男は顔を上げる。
左の顔を布で隠し、右の顔は右の方は少し引き攣ったいびつな表情をしている。周りから見たらかなり怖い顔である。
「遠山先生全員居ます。」
「ルクスタ君ありがとう」
このクラスの生徒は3人しか居ないというのに番号確認を欠かせない管理体制には関心する所がある。遠山先生は日本人だ。
ゆったりとした口調で遠山と呼ばれる男は生徒に話す。
「今日は魔導界の実習を行う」
遠山は目にクマを付け、感情が殺されたかの様な表情で実習の説明を始める。
「1対1の模擬戦を行う。監督は私と、隣のクラスのバードマン先生が行う。・・・」
魔導界それは4界の一つであって魔法と酷似したものである。
「先生・・先生とは戦えるんですか」
「・・・・無理だ」
左手で頭を掻きながらされた横目で教壇を見ながらそう云う。
「 チィーまたかよ」
鼻筋の通った茶髪の生徒であるエイムラ=ハリワンは舌打ちをしてみせる。彼は少し、いや程々にお調子ものである。
先生はどこか心がかけた所がある。心から此処にあらずとはこのことだろう。
「あのー、私もですか」
御金真莉の問に先生はコクリと頷く。
「 サミいー」
外は冬で、霜がそこら中に降りている。
「よぉ、オマン等元気にしてんか?」
意気揚々とした口調で遠くから手を振り笑いながら走ってくるのはバードマン先生だ。背丈が高く、いつもスーツの襟をあえて上げている先生だ。
「はい、先生、元気です」
ルクスタは手を挙げ元気をみせる。
「 おマン等は?」
「 元気ですけど。」
「はい、大丈夫です。」
「子供じゃないんだなら、ンナの聞かないでくれよ」
ハリワンはちょっと気だるそうに返事をする。
「まぁ、いいじゃないか、硬いこと言わないでほら、見てみろ。あれを」
そう指さした先は我らが先生だ。
「硬いだろ、硬すぎるだろんもぉ、飲みの席にも来てもくれん無い。」
指を先生に向けて振りながら乙女チックな素振りをみせる。
先生はその様子をじっととした面持ちで見ていた。
「んじゃ、始めますよ」
何事もなかった様に始めた。
(先生はいつも私のことを見ている。何故だろう。)
御金真莉はそう思っていた。
(でも態度冷たいしな)
「ねぇ、先生私のこと見てる」
「あぁん、んな見てないだろボケ」
ハリワンは軽く手でチョップをする。
「先生はよく見てますよ。僕たちのこと」
ルクスタは上を見ながら自慢気に言う。
「んコッタ勘違いすんじゃねぇよ」
目をギラつかせるハリワンに真莉はちょっと引く。
「ごめんて、ごめん」
手でジェスチャーをしながら後退りの素振りをみせる。
「んじゃ、俺とルクスタってことで」
「ほらほら、待て待てぇい」
「んだよ、もぉー。」
「お決まりの準備体操だろそこは」
バードマン先生は右足前、左手足後ろでチョップしながらジャンプしてくる。
「 んだよ、気持ち悪いて」
「あはは、先生・・・」
ルクスタと真莉も苦笑いで若干引いている。
「ほれ、ほれ、んん・・んーー」
生徒が始めるのをいまかいまかと生徒の方をチラ見しながら足を開いて両手を上で合わせて下で広げる動きを何かもしている。そして、徐々に早まっていく。
「んーーー」
生徒の方を見ながら、加速する動きで宙に浮かび上がりそのまま上に行ってしまった。
「あーあ」
「暑いですね」
「 んだよ、このバカ先生は」
「じゃ、始める」
何事もなかった様に実習が始まった。
サ・ヨ・ナ・ラ先生。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます