空色杯6ー1

mirailive05

残響

「親方、敷石の盛り方こんな感じでいいスかぁ!」

 人類が宇宙に進出して各星系でテラフォーミングが行われた。

 どんなに科学力が発達しても、自然と向き合う先端現場はどこも変わらないものらしい。

 何故今更のような旧式の技術をと思うかもしれないが、鉄道はコスパがいい。

 親方と呼ばれたものは進行状況の記録のために携帯端末を操作していた。

「ああ上出来だ、少し休んでいいぞ!」

 大地と対話し大地と格闘しながら、手に持つ水の入った万能ボトルを飲み干す。

「うまい」

 人の営みが続く限り額に汗して働いた後の一杯のうまさは、彼らにとって変わらないのかもしれない。


 そこで再生を止める。

 エネルギー源が残っていたのは幸いか。記録媒体が生きていたことで滅びたこの文明の一端を知ることができた。

 その文明の時間の概念からおよそ十万年前のものと分かった。一つの文明が興こり、滅びるには十分な時間か。

 廃墟から外に出る。

 我々の帰還を待つことなく人間は滅んだのか。ヨグ=ソトースを待つことなく。

 その文明を懐かしむように朽ち果てた軌道に寄り添うように、鮮やかな血色の花が一面に咲いていた。

 我々は帰還した、この宇宙に。だがそこには滅ぼす者たちはいなかった。

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