第13話 アダール要塞攻略戦(前編)
※第二師団陣営※
「そろそろ物資も限界ね…」
「アリア様ぁ、前線を下げましょう」
「ゴメンナサイね、でももう少し耐えてちょうだい、今に心強い仲間がやってくるわ」
第二師団の先頭を率いる
王国最強についてはゲイル・アーダント率いる第一師団と良く比べられるが、厳密には若干違う、第一師団は師団全体で攻守速全てに置いて非常に高水準で高く纏まっており正しく最強かつ最優の師団である、それに対し第二師団はアリアの二つ名でもある
「南から増援?」
「ハッ、掲げていた紋章から風皇騎士団かと」
「最悪ね、それに南と言えばウィル達が進軍してくる方向と被ってるわね、保険掛けておこうかしら」
そう言うと魔力で呼び出し、
その考えはすぐに不要となる下ってきた部隊は第五師団の師団旗を掲げていたのだだが、それにしては数が少なすぎる第五師団は第四師団と合流し総数4万を超える部隊を派遣すると聞いている、いくらなんでも少なすぎである
「アリア様急報です」
「何よ、」
「第四・第五師団の連合軍がティムダル峠で帝国の奇襲を受けて全滅したと」
つまり今山を下って現れた1500程の第五師団の兵は敗残兵と言う事なのだろうか、それにしても少なすぎる、通常全滅といえば3割以上、多くても5割は行かないはずであるだが下ってきている数は1500、9割以上もの兵がやられた等と思いはしたくないが、最悪のパターンも考える必要があるだろう
「ウィル君、大丈夫かしら?」
「(出たよ、隊長の
「んー
「いえ、滅相もございません」
ヒソヒソ声で話をしても事、隊長の弟事になるとやたらと地獄耳なのだ
「さて、もう一発行きましょうか」
『地獄の門を開き放ち、常世なる獣を現し世に呼び寄せんー
これこそがアリア・アーダントの二つ名である
俗に言う悪魔と呼ばれる存在を召喚しその爪で敵対する者を切り裂いていく魔法でありその一撃で最高で凡そ1大隊程の兵を葬ることが出来る
「た、助けて……」
「悪魔……」
「死にたくない」
ガーラント帝国の兵達がアリアの魔法に飲み込まれ次々と断末魔を上げてはバタバタとその場に絶命し倒れ伏して行く
「デカいのは今ので最後かしら」
溜め息をつき、体内の残存魔力量を探る
まだ
ーーーー
「一体どう言う事だ、敵はたかだか、魔術師1大隊だろう」
「ハッ、斥候の探った様子では」
「どうして、既に5000 もの兵からの連絡が途絶えているのだ」
「敵は第二師団、アリア・アーダントと報告が上がっています」
「忌々しい魔王め……」
「守備隊長、我々も出ます」
「まて、モニカ殿は客将だ。ここは我々だけで守ってみせよう」
「ティムダル峠で無傷だった大隊があります、間もなくこの戦場に現れるかと」
「たかだか一大隊程度であろう」
「大隊長はウィル・アーダント……あの金獅子の息子です」
「なるほど、ゲイルの小童共がアダールを攻め落とすか……モニカ殿すまないが南側の守りを頼む」
「承知しました、騎兵を幾ばくかお借りします」
「好きなだけ連れてゆけ」
アダールから騎兵と弓兵を主体に構成された部隊が現れて南側に風皇騎士団の軍旗が立ち上がる、その光景により帝国側も士気が上がり第二師団への攻め手がより一層激しくなっていく
※第八大隊視点※
「大将、流石に馬がもうヘバッてるぜ」
「ハァ、ハァ、オッサンに全力ダッシュさせやがって」
「…………ヨロイ…………オモイ…………」
「友軍の命が掛かってるんだ、無理でも突っ走れ」
「ウィル、アダール要塞見えたよ」
陣形も縦に伸び切り、とてもこれから戦いが始まるとは思えない状態だがアダール要塞の南側に第八大隊が展開していく
「来たのね、ウィル……さぁ剣を取りなさい」
「モニカ、今はお前と話してる暇は無い」
「大将、あの女剣士は俺が抑える、第二師団の方へ向かって下さい」
「邪魔するか箒頭の騎兵、三下で私を止められると思うな」
「ライオットを甘く見たら痛い目を見るのはモニカお前の方かもしれないぜ」
速度が重要視されるため、従える兵種は軽歩兵を用い、エミリーとナターシャを従え、モニカが展開する騎兵隊の横をすり抜ける様に通過していく
当然、追手はライオット、マーカス、ミシェルが壁となってブロックするためウィル達は先へと進んでいく
「借りは必ず返す」
そう言い残してライオット、ミシェル、マーカスの3人に背中を託して、戦場を一気に北上し、第二師団が陣取っている石造りの廃棄された監視塔へと向かう、危機が迫ってると聞いていたため、戦力的に圧されて師団が壊滅するレベルの被害を被ったかと思っていたが、そこまでの被害は出ていないらしい。
それでも数の差で圧されて大分前線が後退している様子で、第二師団の虎の子である魔法兵団を守る歩兵や騎兵がかなり少なくなっている
「姉さん」
「ウィルちゃん、来てくれたのね。ありがとう」
「ファミリアの伝言だと危険だって話だったけど」
「物資が尽きちゃったからね、後1日遅れてたら全滅してたかもね」
「まぁ姉さんが、無事で良かった」
「あれが…魔王…?」
「隊長のお姉さんらしいですが……」
少し離れた位置でヒソヒソとアリアの第一印象を2人で話しながらチラチラとアリアの顔を確認する……
「それで、ウィルちゃんそこで陰口叩いてる雌猫は何者かしら」
「俺の大隊の弓兵隊長と僧兵隊長だよ」
「ふ~んって、弓兵の方はレイベント家の跳ねっ返りじゃない」
「お久しぶりです、アリア姉さん」
「それで、ウィルちゃんマジックポーション無いかしら」
「マジックポーションは……無いな」
「隊長、竜の血なら……」
「あぁ……そう言えば」
山を下る直前に倒したカッパードラゴンの事を思い出し、最低限に採取していた竜の血を取り出す
「あら、レア品じゃないカッパードラゴンのものなら劣化エリクシールとして使えるわね」
第二師団と合流し、更には竜の血のお陰でアリアの魔力が回復したことにより、デカい魔法を再び撃てるようになった事で一気に帝国の攻めを押し返す事に成功する
その様子を見守っていた守備隊長は苦虫を噛み締めたような顔で苛立ちを募らせるのだった
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