第5話 暗雲
※???視点※
石造りのガッシリとした砦の一角、浅黒い肌で口髭を生やしスキンヘッドでとても軍人とは思えない程にだらしない体型をした男と痩せ型で白色系に金髪、これまた戦闘にはとても似付かわしく無いほどに絢爛豪華な装飾が施された鎧を携えた二人が面談していた。
「それで進捗はどうだ?」
「予定通りに進んでおります。今頃カルザス草原で盗賊たちの捕縛任務に当たっているかと」
「カカカッ結構。これで生意気な金獅子の小倅も終わることだろう、引き続き監視を続けさせておけ」
「ヤツがどれだけ天才と騒がれようが一大隊程度が旅団に敵うはずもあるまい」
「確かにな、それでアダール攻略の手筈はどうなっている?」
「勿論手筈通りに、既に間者との連絡も取り付けてある」
「これで、此度の戦の功労賞は我々のものだ」
ワッハッハと汚い笑い声が砦の一角に鳴り響くが、その笑い声を打ち消すかのごとく激しい雷鳴が降り注ぐ…
その不穏な空気を知る者は誰も居なかった
※ウィル視点※
「それでキサマら何故この村を襲った?」
「ケッそんな上から目線の騎士様に話すことなんざねーよ」
「キサマッ、このままクビを跳ねられたいかっ!」
「跳ねて見ろよ、お前さんはなんの情報も得られないままになるぞ」
捕縛した盗賊を尋問しようとするも、のらりくらりと言葉を交わされて、少しずつフラストレーションが溜まっていく、終いにはケラケラとした笑い声に堪忍袋の緒が切れて怒りのままに剣を振り下ろす………
その直前
ウィルの手が止められる
大隊でライオットに次いで頭を抱えている聖職者のエミリーである
「隊長、その尋問私に引継がせて頂けませんか?」
一見するとお淑やかな笑顔に落ち着いた透き通った声まさに聖職者に相応しい雰囲気を漂わせるエミリー
「あ、あぁ…構わないが…」
「おっプリーストの姉ちゃんがお相手してくれるのか?内容次第じゃペラペラと喋っちまうかもな」
下心見え見えの汚い笑みを浮かべ、エミリーの臀部へと手を回そうとする盗賊だが、当然その手はエミリーにより叩き落とされる。
「エミリー…壊すなよ…」
「隊長、了解してますよ。」
ニコッと満面の笑みを浮かべて俺に対し感謝の気持ちを示すエミリーではあるが、エミリーの本質を知っている俺からするとその笑顔は非常に恐ろしいモノに感じ取られていたのだった
数刻後……
「あsdfgh$%お…」
エミリーがにこやかな笑顔で盗賊を連行した仮設コテージから言葉にならない悲鳴が響いてくる
盗賊もあのお淑やかな聖職者からここまで激しい尋問が行われるとは思って居なかったのだろう
そしてようやく聞き出したい事が聞けたのか、満足そうな笑顔に肌を艶めかせ、すっかり生気が抜け落ち辛うじて意識はあるものの白目を剝いて足元が覚束ない盗賊と手を繋いでコテージからエミリーが出てくる。
「隊長…大変です」
「どうした?何か分かったのか?」
エミリーが聞き出した情報は非常に重要で、実は盗賊というのはどうやら偽装らしくどうやら彼らはガーラント帝国の傭兵団らしい。
既に村民として紛れていた連絡役が国境を超えて、帝国軍へと連絡を行っているらしくこのまま国境沿いでの開戦は免れないだろうと言う事であった。
「ハメられたか…帝国め、汚い手を使う」
「部隊長達を集めてきますね。」
マーカス、ミシェル、ライオット、ナターシャが集まりエミリーの尋問によりもたらさられた情報を伝える
「ちょうど良いじゃねーか、馬達も暴れ足りないって言ってたしな」
「汚い帝国らしいやり方だ、鬱憤晴らしサせて貰うぜ」
「…………………………」
「任せて、帝国の連中を蜂の巣にして上げるわ」
「回復は任せて下さい。怪我したらすぐに傷口を見せて下さいね」
予想に反して士気は高い様子で連戦となるが疲れは見せていないようだ。
この
「それでは隊列を伝える。切込みはライオット、前衛右翼ミシェル、同左翼マーカス。中衛は俺が務める、遊撃ナターシャ、エミリーが後援以上だ。」
作戦を伝え終わり隊列を組み終わる頃には遠目ながらに帝国の大隊が進軍する土埃が見えてきていた
「一応こちらにも攻撃する大義名分が必要だ。帝国の連中が国境を超えるまで攻撃は控えておけ」
「了解」
帝国の部隊が目視で十分に確認出来る程に接近してきた所で、斥候に出していて隊員が戻ってくる
「報告いたします。騎馬中隊5、軽歩兵中隊5、軽槍兵小隊3、魔法兵中隊1ざっくり見積もって総数2000程度、連隊規模です。」
「予想以上に多いな、念のためだ、第5師団本隊に援軍を要請してこい」
「了解」
そして遂に帝国の連隊が国境を超える一歩を踏み出した……
その瞬間、ナターシャの矢が戦闘の騎兵の駆る馬の眉間を撃ち抜くすると戦闘の馬が膝を付き失速した事により後続の騎兵隊が前方の馬に躓き次々とまるでドミノ倒しのように転倒をしていく
「敵襲!敵襲!」
帝国の斥候が大声を張り上げ後続の部隊に危険を伝えるが時既に遅く、ウィルの作戦により崩されてしまった隊列は、そう易々とは復旧は難しい
そして、それを合図とするように続いてライオットの騎兵隊が襲撃を仕掛けていく
「オラオラァ!帝国の犬どもが頭が高けぇぞ!」
ライオットの騎兵隊は転倒してその場にうずくまる帝国騎兵隊の馬を踏みつけて次々と蹴散らしていく
「マーさん、右前方30度にダムズ」
「おうよ!必殺[
マーカスの振り下ろした一撃でアスタリスク型に全方位へと衝撃波が広がり体制を崩した歩兵達を飲み込んで行く
「ないすダムズ〜、ほらほら弓兵隊、マーさんに負けられないよ。左前方距離15一斉射」
奇襲を仕掛けたとは言えども想定以上に順調に帝国兵を討取っていく、余りの順調さに何かしら罠を仕掛けられているのではと疑うほどである。
練度の差もあったかもしれない、がこれなら先程の盗賊の方がまだ手応えがあったレベルだ。
「貴様が隊長か!」
「お前のような若造が部隊長とは、王国もよほど人材が足りないらしいな」
「大人しく投降することだ。今なら軍事裁判でも有利に働くはずだ」
「どうせ死刑には変わらんよ…それに一つ教えてやろう、我々は先遣隊、この後本隊として旅団規模の兵団凡手8000の兵がアダールから派遣される事になっている」
「なん…だと!?」
「さぁっ俺の首を刎ねるが良い!」
既に覚悟を決めている相手に投降の呼び掛けは意味を為さないそれが分かっている以上、既に帝国の本隊が押し寄せるまでの時間が無いためウィルは連隊長のクビをアッサリと刎ねたのだった
「敵将、このウィル・アーダントが討ち取ったぁ!」
その
「総員、これからが本番だ、隊列を整えろ!負傷した者は衛生兵に治療を受けろ」
こうして、旅団規模と大隊規模と言う結果は火を見るよりも明らかな戦いの蓋が切って落とされようしていたのだった。
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