にじり寄る悪夢

『ひゅうちゃんは良い子だねぇ、こんなにも良い子が孫にいて幸せもんだよなぁ』


 祖父はしゃがんで小学生のひゅうちゃんに声をかける。

 喉が震えてしまう。

 首に苦しさが纏う。


『ひゅうちゃん……なんも、見てないね?』


 うまく呼吸ができず、震えながら頷いた。

 ニコニコと頷き返す祖父。


『ならいいんだ、父ちゃんも心配してるから、いつもみたいに笑顔で色々話しておくれ、なっ?』


 追い込まれていく――。





 ひゅうちゃんは目を覚ました。

 汗だくになって起き上がる。


「……」


 喉に手を添え、呼吸を整える。

 ひゅうちゃん以外誰もいない寝室、時刻は午前10時。

 祖父はデイサービスに出かけ、父は仕事。

 洗面台で顔を洗う。

 歯を磨く。

 鏡に映るのは表情を曇らせた自身。

 首の内出血は消え、微かに日焼けした素肌だけ。

 シャツに短パンに着替える。

 日焼け止めを塗り、財布を持って麦わら帽子をかぶる。

 裏に駐輪させている自転車に跨り、隣町のスーパーに向かった――。

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