ふたりの孤独
花火が上空で打ち広がる音。
ひゅうちゃんは小遣いを財布にしまって外へ出た。
町の墓地、ガラクタ置き場の裏側から繋がる階段を上がると、他の墓石と並ぶ笹井家の墓石があった。
呼吸が乱れる。
喉に手を添えて『平八』と刻まれた墓石の前に立つ。
締め付ける喉から絞り出す謝罪。
ボロボロと零れる涙が石畳を濡らす。
「…………言えない、怖くて、全部壊れちゃうんじゃないかって……悪い子なんだよ、私……自分勝手なの」
静まり返る午後8時。
階段の小石を踏み潰すように上がる音が耳に届いた。
顔を上げ、息を吐きながら振り返る。
羨望か猜疑心に塗り固められた目つきの先輩、タケル。
「2人にハブられて、見捨てられたんだろ、お前」
勝手に決めつけられる。
ひゅうちゃんは否定も肯定もしない。
首に長くガッチリとした手が絡んだ。
タケルが少しでも力を込めれば、容易く折れてしまう。
「…………」
「笹井平八の墓、やっぱり何か知ってんだろ? お前何を見た?」
「………………」
憂いに満ちた瞳孔は全てを受け入れる。
鼻で笑ったタケル。
「殴っても、怒鳴ってもどうせ吐かない。ここでハメたって甘んじて受け入れますって顔してるだけ」
首に絡めていた手がゆっくり圧迫させていく。
「いっそ消えてしまった方が楽じゃねぇか? お前も、俺も」
震える声で吐き出す。
「だから最期に言ってくれよ、俺の父さんは犯罪者じゃなかったって、別の誰かが平八を殺したんだって、父さんは巻き込まれただけだって言えよ」
「…………ごめんなさい」
「なぁ俺やお前程度が声を上げたって解決したことは覆らない。だから、せめて、事実だけ教えろ」
か細い指先は太く筋肉の腕に絡んだ。
「母さんが俺を怖がる、俺をどこかの精神病院に連れてくって、話を聞いちまった」
弱々しい情けない声。
「誰も…………悪くないの。ただ、私が悪いだけ……」
静かに涙を零し続ける――。
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