お土産
「屋台の飯ってなんでこんなに美味いんだろうなぁ」
焼きそば、たこ焼き、唐揚げ、チョコバナナ、ベビーカステラ、と平らげるハジメ。
「そんなに食べたら太るよー、私が奢った分以上に食べてちゃって、ひゅうちゃんへのお土産は?」
屋台と賑やかな声が通る川沿い。
人混みから逃れるように隅っこで岩場に腰掛ける2人。
赤い浴衣は鯉の模様と黒の帯、ポニーテールに簪を差す。
「どうしよ……あっ」
甲高く抜けていく音が打ちあがる。
花弁が散った。遅れて胸を叩く音が鳴る。
連続して打ちあがる花火に心が奪われていく。
食べる手を止め、花火をジッと見つめているハジメ。
かなたは横目に覗いたあと、頬に手を当て熱さに逆上せてしまう――。
最後に滝を表現した横に長い花火が強烈な輝きを放ち、人々に歓声を沸かせて散っていく。
「花火、見て良かったでしょ?」
かなたは気まずさを払い、声をかけた。
ハジメはニコニコと垂れ目に笑顔を浮かべる。
「うん、結構よかった。俺は1学年上だからさ、来年は進路の事もっと考えないといけないんだよなぁ……」
「まぁ、うん、そうだね」
「来年は、絶対……3人で見たい」
「うん」
ハジメは、よし、と立ち上がる。
「じゃあ最後にやっとくか」
「え、何するの?」
そう言って、屋台の真ん中にあるくじ引きに向かった。
怪訝な表情を浮かべ、ハジメの行動を見守る。
「おっちゃん、10連頼んます!」
1回300円のくじ引きを10回分。ハズレなしと看板もあるくじ引きに3000円を惜しみなく出す。
「おぉ橘んとこの、えらい大盤振る舞いだなぁ、まいど!」
頭にタオルを巻きへらへら笑うおっちゃん。
祈るように10回くじを引いた。
結果は……――。
スーパーボール、ブーブー風船、ミニお菓子セット等々。
「なーんか当たりって感じしないね、これまさかひゅうちゃんにお土産って渡すつもりなの?」
「えっダメだった?」
「だって、これなら食べ物のほうがマシだよ」
「このブーブー鳴る風船のやつ面白いけどなぁ。あとは、えーとこれは……」
ハンドメイドのヘアピン。先端にある紺青のガラスには薄っすら蝶々が描かれている。
壊さないように掴み、ガラス部分をジッと見つめた後、優しく頷く。
「うん、これにしよう」
ポケットにそっと入れた。
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