とりかえっこ
朝の畑、トマトを収穫しているひゅうちゃんとかなた。
日除けに帽子をかぶり、薄めの長袖シャツとジャージパンツを着て、タオルを首にかける。
真っ赤に熟したトマトをカゴに入れながら、
「あのね、ひゅうちゃん」
かなたの明るい声色。
「……うん」
ひゅうちゃんの喉を震わす相槌。
「ガラクタ置き場で宝探し、してきたんでしょ? ハジメくんが見せてくれたのは昔のゲーム機とか珍しい空き瓶の写真ばっかりだったけど」
「……何も、なかった。本当にガラクタだらけ……あとは話した通り、だよ」
「そっか、ハジメくん優しいね」
「う、うん」
「友達思いで、ちょっと変わり者だけど」
トマトを指先で愛でる。
「…………」
「虫が大の苦手なのは、可愛いギャップかも」
脳裏に思い起こす死にかけのセミ。
「明るい子が好きなのかなって、思ってた」
「……え?」
「ううん、何か変われる気がして、明るくしようって決めたんだよ。ひゅうちゃんみたいに」
寂しく微笑み。
戸惑うひゅうちゃん。
「私やハジメくんに言えないような何かがあったの? どうしてひゅうちゃんが誰よりも辛い思いをしているの?」
酸素をうまく吸えない。
「ひゅうちゃん……」
喉に手を添え、呼吸を整えようとする――。
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