変わってしまった2人

 セミが鳴る田舎町。

 ガラクタ置き場の中をゆっくり歩き、家に帰る道を2人が歩く。

 土で汚れた服と切れた唇、ひゅうちゃんは腫らした目を地面に向けた。


「ひゅうちゃん」


 ハジメは優しく声をかける。


「……ずっと気になってたことがあるんだ」


 ひゅうちゃんは黙り込んだ。


「平八さんが事故で亡くなってからさ、2人とも変わっちゃったなって」


 微かに遠く畑に水やりをしているかなたが見えた。


「あんなに消極的だったかなたちゃんが明るくなって、ひゅうちゃんは反対にほとんど何も喋らなくなって、性格を交換したみたいに」

「…………」

「平八さんと、何かあったの?」

「なにも…………」


 汗が額から流れる。

 喉を震わす。


「おーい、ひゅうちゃーん、ハジメくーん!」


 水やり途中のかなたが大きく手を振っている。


「ごめん、言いたくないならいいよ。ただ、心配で……もし言えるようになったら教えて」


 ハジメは先に駆け出していく。

 かなたは近づいてきた怪我だらけの顔に驚いている。

 ひゅうちゃんは立ち止まり、指先で額の汗を拭う。


「ごめんね……かなたちゃん…………平八さん、ごめんなさい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る