48 ルッカリーの鴉パイ

 レインは田舎の家に来ていた。


 ヒューバートが連休に田舎へ帰るので、誘われたのだ。ヒューの友だちのイハトじゃなくて僕なのは、イハトが風邪ぎみで調子悪そうだったから。僕は、土日だろうが、連休だろうが、何の予定もないからね。そこに居た僕に、話が振られたんだよ。





 ヒューとヒューのお母さんと僕。車でハイワイトに向かっている。ヒューのお父さんの実家なんだって。ハイワイトの丘陵地帯が途切れて平野が拡がる、穀倉地帯と隣接した、ちょうど境にレクストフ家はあった。





 午前中のドライブを終えて、お昼時。


「好き嫌いはある? レイン」

 ヒューのお母さん……レクストフ夫人は僕に訊いた。

「内臓が……食べられないです。他は何でも」

「あら、そうなの」

「母さんと同じだ。二人は焼肉屋に行けないな」

 ヒューが僕と夫人を見て言った。確かに。ホルモンを焼く匂いも苦手だ。

「大丈夫よ、レイン。私も嫌いだから出さないわ」

 夫人は、昼食のクラブサンドとカットフルーツのタッパーをバスケットに詰めて、ヒューに持たせた。

「バスケットを忘れずに持ち帰ってね」

「わかってる。行こう、レイ」





 ヒューはバスケットとは別に、鞄を持ち歩いてる。

「外で勉強でもするつもり?」

 僕はポケットに財布しか入れてない。手ぶらだ。鞄はヒューの部屋に置いてきた。

「これを試す」

 ヒューは鞄から何かを出した。

「何それ?」

「スリングショット」

「わ〜〜……何それ??」

「狩猟ができるぞ、レイ。何でも撃ち落とせる」

「え〜〜、晩のおかず、捕れちゃう?」

「レイって……食いしん坊?」

「えぇ…………うぅん……そうかも?」





 ヒューとレクストフ家を出て、平野にある収穫後の田んぼを歩いてる。バスケットは僕が持っている。大きいけど重くはない。田んぼには、干されている稲がそこかしこにあって、稲藁いなわらのお化けみたいだ。


「梅雨時に」

 ヒューがボソリと言った。

「うん」

「小雨がずーーっとやまないような日にさ」

「うん」

 ヒューはそんなにお喋りな方じゃない。

「長靴で水田歩くの」

「うん」

「楽しいんだ。誰も居ないし」

「いいな、僕も歩いてみたい」

 ヒューが言う『楽しい』、わかるような気がする。

「でもそれ、独りで歩くから楽しいんじゃない?」

 ヒューがこっちを見た。

「イハはつまんなさそうな顔してた」

「しそう!」

「歩いた先に何があるの?だってさ」

「わかってない!」

 イハトなら言いそうだ。水田を長靴でどこまでも歩くのは楽しそうだ。

「ふふふ」

「何?」

「ヒューとイハトは違うのに、仲良いんだね」

「イハは、良い人間だから好きだ」

「…………」

「何? どうかし」

「イイニンゲン……スキ」

「オレ……イハ、スキ」

「イハト、ヤサシイ」

「シッテル……イハ、ヤサシイ」

 僕らは人間のあたたかみを知らなかった怪物で、歩きながら怪物その一その二は笑って喋れなくなったら負けで、水のない稲藁の田んぼでも、二人きりでも、どこまでも歩いていくのは楽しくて。終わりが見えない楽しいってことを、良い人間は忘れてしまったのに、僕らは友だちを好きなのだ。





 田んぼの先には、森や林が突然現れる。中へ入って行くと、ほとんど獣道けものみちになっていって、行止りだったり、どこかへ抜けたり。


「ヒューは……歩いてるところ、全部わかって歩いてるの?」

 僕はもう途中から、自分がどっちから来たのか、わからなくなっていた。

「わかるよ」

「僕もう、全然、レクストフ家へ帰れる気がしないよ」

「イハは……うちから直ぐのとこで疲れてた」

「田んぼのとこ?」

「回れ右させられて、楽しかった、さぁ帰ろうって言われた」

 ヒュー、笑ってる。

「楽しかったって言ったの?」

 僕も笑ってしまう。

「疲れたとか、つまんない、じゃないの……イハ、楽しかったって」

「ふふ」

「僕が連れ出したから、絶対言わないの。イハは」

「イハトらしい」

 イハトは相当良い人間だ。

「レイは疲れた?」

「全然」

「本当に?」

「僕は、僕が居たヒプノス島で、暗くなるまで歩き回ったりしてたから」

「へぇ……どんなところ?」

「必要なものしかない感じ。物も人も少なくて……海がある」

「海、貿易港から見たことある。車の中からだけど」

「その、もっと先だよ。大きなフェリーに乗って行くの」

「いいな」

 僕はヒューに、フェリーには車も乗れること、ヒプノス島の、この世の果てみたいな、なんにもない海岸の話をした。ヒューは黙って歩きながら、僕の話に相槌だけ打ちながら、ずっと聴いていた。

 もしかしたらヒューは、僕と好きなものが似ているかもしれない。そう思った。





 森の中で、テーブルと椅子があるところへ出た。


「何ここ!」

 鉄製の円テーブルと四人分の椅子が、大きな木の下にある。

「雨宿りできる木だから、誰かが置いたらしい。ずっとある」

 公園にあるような、背もたれ付きの優雅なベンチもある。

「お昼にしよう、レイ」

「うん!」





 レクストフ夫人のクラブサンドは、最高だった。


「クラブハウスサンドって言うよりは、ローストビーフサンドな気がする」

「何言ってるの。こんな豪華なクラブサンドないよ!」

「豪……華」

「ハムやベーコンがローストビーフになってて……チーズでしょ、レタスでしょ、胡瓜はピクルスだし、玉子はタルタルソースだよ?!」

「クラブハウスサンドの部品からズレてないか?」

 そんなこと言う割に、『クラブサンド』じゃなくて『クラブハウスサンド』って、ちゃんと言うのね、ヒューは。

「僕、こんな具がすごいサンド、初めてなんだけど……え、ヒューって、まさか、これ普通だと思ってるの?」

「今日のは……レイが居るから、普通よりは、ちょっといいかもな」

 ちょっとじゃないよ、ヒュー。

「帰ったら、ヒューのお母さんにお礼言わないと」

「ぅん」

 ヒュー、聞いてない。マスカット食べ始めてる。ヒューはコンビニの、可哀相なサンドイッチ、知らないのかもなぁ……

「あ!」

 今度は何だと言いたげである。

「アレキサンドリア」

 種があっても、僕はマスカット・オブ・アレキサンドリアの方が好きなんだ。レクストフ夫人とは食べものの好みが合いそう。

「ヒューは……贅沢だな」

「何がどうなって、そこに落ち着いたんだ??」

 そう言えば……ヒューとイハトと、学校の帰りにコンビニ寄っても、ヒューって買い物しないんだよ。なんか納得。





「ヒュー」

「何〜?」

「狩猟は〜?」

「そ〜だね〜」


 食べごたえのある昼食を完食したら、なんだか眠たくなってきたのだ。


「レイ」

「何〜?」

「熊が出たら教えて。逃げるから」

「出るの!?」

 僕は、一瞬にして目が覚めた。

「さぁ」

「もぉ〜」

 僕は、又眠気が戻った。


 ヒューの鞄にはスリングショットが入ってて、僕らは腹ごしらえもして、午後は……心行くまで狩猟をして……そう……そうして遊ぶんだ……













「おい」

「寝てるだけじゃないか?」

「こいつ、鞄抱えてる」


 僕はそこでボンヤリ、目が覚めかけた。誰かが、肩や頭に触れてくる。頭……頭は覚めてきてるのに、身体に時差があって、まだ寝てるみたい。僕は動かせない手を、なんとか動かす。

「だ……れ??」

 視界に、まだ眠ったままのヒューと誰かの手、ヒューが枕にしてる鞄に触れ……

「ヒュー……起きて」

 ヒューがピクリと動いたかと思ったら、起きた。

「何してる?誰だ」

 ヒューの声で、今度こそ僕はちゃんと目が覚めた。





「何もしてないよ」

「おまえらどこから来た」

「よそ者か」


 地元の子どもたちだろうか。三人対二人は分が悪い。僕はテーブルの下でヒューの服を引っ張って、『逃げよう』と伝えた。

「大丈夫だよ、レイ」

 ヒューは落ち着いてる。

「僕はヒューバート・レクストフだ。ハイワイトの外れにある、レクストフ家から来た」

 名前……言っちゃった……本当に大丈夫?? ヒューの名乗りを聞いて、三人はヒソヒソし始める。どうやらレクストフ家は知ってるらしい。





 四脚の椅子に、ヒューと僕、三人のうち二人が、向かい合わせに座っている。

「アーバンの、どこから来たって?」

 リーダー格の少年が、ヒューに訊いてくる。

「スワスティカから」

 ヒューは臆することなく答える。どう見ても三人の方が、僕らより年上っぽい。同い年だとしても、僕はもう気分的に負けていた。ヒューがテーブルの下で、僕の脚をポンポンと軽く叩く。どうも僕がビビっているのが、ヒューにはバレてるらしい。

「何しに来たんだよ」

 立っている少年がヒューに言った。

「連休中、父さんの家に泊りに来た」

「こんな田舎に?」

「なんにもないぜ」

 ヒューは鞄に手を突っ込んだ。スリングショットを取り出してみせる。

「これを試すのは、アーバンじゃできないしね」

 三人の目の色が変わった。













「ヒューー、どこまで行くのーー??」

 ヒューと手をつないで走ってる。

「ルーク! どこ向かってるんだ?」

 ヒューが声を張り上げる。

「着いて来いよ、ルッカリーへ連れてってやる!」

 ヒューはリーダー格の少年と言葉を交わしていた。ルークと呼ばれる彼は、スリングショットを試すのに良い場所を知っていると、ヒューに言ったのだ。









「静かにな」

 ルークは、巨大な建物へ僕らを連れて来た。納屋だって。廃屋みたい。

「ここが……ルッカリー?」

 隙間風が不気味な口笛のように鳴っている。お化け屋敷の間違いじゃない?

「レイン」

 ルークが、人差し指を唇に添えてジェスチャーしてみせる。僕は、ヒューの手を絶対に離さない。

「ふひひ。こんなの、アーバンじゃ絶対ないよな」

 ヒューは小声を洩らす。楽しそう。ヒューは、た の し そ う!

「どうかしてるよ」





 五人で侵入した納屋の奥には、三階建てをぶち抜いたくらい巨大で薄暗い吹き抜けがあった。家畜の為だったのか、床いっぱいに枯れた藁が散乱している。


「オンボロのサイロが隣接してるから、敷き藁がなくなっても、ここを離れないんだ」

 ルークは言った。ここを離れないって……

「何が?」「お化け?」

 ヒューと僕は同時に訊いた。

「あはははは」

 そんなに笑うことある?

「レインは、もしかして、俺らがお化け屋敷にでも連れて来たと思ってる?」

「肝試しなら、も〜〜っとおっかねぇ場所、連れてくぜ」

「あれ、出せよ。ヒュー」

 ヒューは鞄からスリングショットを取り出した。

「ちょっと待ってろ」

 ルークはそう言うと、胸元からチェーンに通した小さな鍵を手繰り寄せて、取り出した。

「俺らの武器を見せてやる」

 納屋に置かれている業務用冷蔵庫へルークが歩いて行くと、ルークは後付けされた鍵を開けた。

「電気! 通ってるの?!」

 僕とヒューは驚いた。

「廃屋みたいに見えるけど、人が来る場所なんだ」

「ルーク、俺、喉渇いた」

「ジュースか炭酸の開けてないやつが残ってたと思う」

「ここに隠すのやめようぜ、ルーク。冷たいよ〜」

 三人は冷蔵庫を覗き込んでる。僕もヒューといっしょに、後ろから覗き見る。

「もう陽が暮れそうだな」

 ルークは冷蔵庫から何かケースを取り出すと、冷蔵庫近くの柱に設置されたスイッチボックスで照明を点灯した。よく見れば、そこかしこの柱の低い位置にガーデニングライトみたいなのがあって、順々点灯していく。灯りは抑えめで、大して明るくない。





 僕は、足元がボンヤリ明るくなっていくのを見ていた。電灯の灯る音が遠くまで響く。


 デデーポッポーー、デデーポッポーー…………雉鳩キジバトがどこかで鳴き始めた。カラスも鳴いている。


「レイン、窓辺を見てろよ」


 窓辺……ルークはいつの間にか、冷蔵庫から離れて、暗いところから窓辺に狙いをつけている。ルーク……何を構えてるの?


 パァーーン。


 軽い、弾けるような音がしたと思ったら、高窓の枠から何かが落ちた。





 僕とヒューとルークは、駆け寄った。落ちていたのは、鴉。クリティカルヒットしていたらしく、もう動かない。

「ルーク、これ」

 ヒューがルークの構えていたものを見た。

「スリングショットライフル!」

 ルークは一メートルくらいある銃を持っていた。

「鴉……どうして鴉を撃ったの?」

 僕は思った。ヒューとルークが僕を見る。

「鳩の方が、美味しいんじゃない?」

 二人は吹き出した。

「え、何?? 鳩ならローストしたら食べられるじゃん」

「レイ〜〜、てっきり僕は、鴉可哀相、とか」

「な? そういうの、言うかと思ったよな? な!」

「なんで二人して笑うの!? 鴉、食べられないじゃん!」

 二人とも失礼なくらい笑ってる。

「鴉、食べられるから」

 ルークが言った。ヒューはお腹痛そうに笑ってる。

「そこ……なんだ、レイ、気になるの」





 落ちた鴉を拾いに行った。


 くちばしとその周り、白い。小麦粉にでも突っ込んだみたい。変な鴉。アーバンにも鴉は居るけど、真っ黒じゃない? 鴉って。


「ミヤマガラスだよ」

 ルークは死んだ鴉をカゴに入れた。スーパーマーケットのカゴ。ネーブルストアってロゴが入ってる。

「ルークか!」

 ヒューが言った。ルークはヒューを見る。

「そうだよ。ミヤマガラスルーク。よく知ってるな、ヒュー」

「そうか。ルッカリーって……ルーカリーか!」

「そうそう」

 二人は意気投合したようである。

「何なの?? 又僕だけわかんないやつ?」

 


「ルーカリーは、ミヤマガラスの営巣する繁殖コロニーのことだよ」

 置いてけぼりの僕に、ルークの友だちが教えてくれた。

「ルッカリーと言えば、ペンギンの方が有名かもな」

「ペンギンはまだ食べたことないよなぁ、レイ」

 ヒューが冗談言ってる……

「この納屋は空き家になってから、ミヤマガラスが近辺に繁殖し始めてさ」

「鳥撃ちの狩り場なんだぜ」

 ルークの用意したカゴに、次々ミヤマガラスが投げ入れられる。





 スリングショットライフル。要は、ゴムの張力を利用したパチンコだ。

 スリングショット及びライフル型スリングショットには、撃針などの撃発装置や薬室、バレルに相当する構造が存在せず、実包の発火発射が不可能である為、銃刀法違反にはならない。

 所持許可証についても、銃砲刀剣類ではないので、不要である。





 少年たちが持っていて使っても、何の問題もない。

 更に付け加えると、ミヤマガラスは狩猟鳥獣に指定されていて、狩猟期間中なら撃っていいのだ。





 理解の及んだ僕は、ヒューが二つ用意していたスリングショットを借りて、撃った。撃って撃って撃って、遂には、ルークのライフルを貸してもらって、撃った。


 僕が後先考えずに近場で撃ちまくったから、カラス雉鳩キジバトヒヨドリも逃げ去ってしまった。それでも五人で狩りをしたので、カゴは獲物でいっぱい。


「すごいな!」

 ヒューは感心の様子。

「もっと、すごいぞ」

 ルークはニヤリとした。

「来いよ。山分けするから」


 ルークの家に向かう。途中でルークの友だちは、それぞれの家へ帰って行った。


「鴉は食べられるんだよ、レイン」

 雑食の鳥なんて、食べられたとしても、果たして美味しいのだろうか……

「……うん」

「これやるから、ちょっと待ってな」

 ルークは僕とヒューに温め直したスープをくれた。ルークは獲物を振り分けて、僕らの分を加工してくれてる。

「ヒュー」

「ん?」

「バターチキンカレーだ……美味しい」

「そうだな」

 カレースープに隠れてるチキンを、スプーンで拾い上げて食べる。スパイスの利いたバターチキンの濃い味と、温かいスープが、美味しい。

「その肉、鴉のスパイシーチキンだよ」

「え?」

「な? 食べられるだろ?」

 僕はヒューと目を見合わせた。辛味と塩味が目立つほどなのに、とても旨い。

「僕も手伝うよ」

 先に食べ終えたヒューは食器をシンクに下げると、土間で獲物の下処理をしていたルークに言った。僕は、なかなかショッキングな解体ショーに目を見張っていた。

「あ、あの、僕も」

「レイは内臓苦手だろ? 羽毟って」

「内臓苦手か」

「う、うん、ちょっと、ね」

 嘘。大嫌いだ。でも、食べる訳じゃないんだ。触るのは全然、多分平気。





 結局ルークは、僕が持っていたバスケットいっぱいに、肉と化した獲物とブレンドスパイスも袋に詰めて持たせてくれた。ヒューには鴉の食べ方レシピを渡してる。





 外はとっくに真っ暗で、夜になっていて、ルークのお父さんが車でレクストフ家まで送ってくれた。


「助かったよな、レイ。二人だけで帰ったら、絶〜っ対怒られてたぜ」

「うん、そうだね。おみやげいっぱいだし、レクストフ夫人喜んでくれるかなぁ」


 レクストフ夫人は、泥や藁と獲物の血が飛び散っている僕らを見て、悲鳴を上げた。僕は、バスケットに詰まった肉塊フレッシュミートが二度目の悲鳴にならぬよう、ミヤマガラスの話を先にした。





「駄目だったじゃん」

 ヒューが湯船から、お湯を器用に飛ばして当ててくる。

「ヒューがレシピ渡したら、喜んでなかった?」

「どうかなぁ」


 僕らは汚れて帰ってきたので、レクストフ夫人に話が終わると、風呂場へ放り込まれたのだ。

 帰って直ぐ、湯船が張られてるって……僕は久しぶり。


 ヒューが湯船でのびてる。寝てないよね?

「ヒュー?」

 くぁ〜っとヒューは返事もできない大欠伸をした。

「眠いよ、レイ」

「風呂で寝たらダメだって」


 ヒューは今にも寝そうで、僕がヒューを部屋まで連れて行った。レクストフ夫人が夕食を用意してくれてたけど、僕ら二人はそのままヒューのベッドへダイブして、眠ってしまったんだ。













 連休明けの小学校、昼休み。


「それで……ヒューもレインも、休みの間中撃ちまくってたの??」


「ふふん」

「まぁね」

 得意気である。僕もヒューも練習して、イハトには悪いが、上達してしまったのさ!


「はい、これ、イハトの分」

「おみやげだ」

 ドン、と平たい紙箱を置く。


「何……これ」

 イハトが恐る恐る開けると、中にはミートパイが入っている。中に仕込んだクランベリーソースで、切るとパイが血を流すみたいになっている。

「イハ」

 ヒューがイハトにフォークとナイフを渡す。

「切ってよ、イハト」

「えぇ〜〜、何のパイだ?これ」





 友だちが悲鳴を上げるまで、あと数秒。

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