第21話 泣いたマリちゃん
ある夜のことです。もう遅い時間なので、ユリナさんはそろそろ寝ようかと思っていました。いつも夜更かし気味のマリちゃんにも声をかけなくちゃと思っていたら・・・
「ねぇ、おかあさん。おかあさんは、子どもの頃、きらいだった子っている?」
普段とは違うマリちゃんの質問にユリナさんはオヤッと思いました。
「どうしたの、マリちゃん?なにかあったの?」
ただ事ではないと感じ、ユリナさんは聞き返しました。
「学校で休み時間にトランプしていたけど、その中の男の子が、マリちゃんのこと、おとこみたいな顔してるって言った・・・」
言いながら、マリちゃんは泣き出してしまいました。なんとゆうことでしょうか、これはゆゆしき事態ですよね!?ユリナさんは動転しました。
「え~~っ??そんなことないよ~~??おかあさんはマリちゃんとっても可愛いと思うし、おかあさんのお友達もみんな、マリちゃんのことカワイイって言ってるよ!幼稚園のとき一緒だったモネちゃんのお母さんも、この前会った時、マリちゃんのこと、すっかり美人さんになって!って言ってたでしょ?」
親のひいき目を差し引いても、ユリナさんはマリちゃんのことをとても可愛いと思っていました。日頃から褒めたりはしていませんでしたが、マリちゃんときたら、それはそれは美人で可愛くて、お目めもパッチリだし、髪もまっすぐでサラサラだし、爪なんてユリナさんの倍ぐらい大きくて整った美しい形をしていますしね。
いまもじゅうぶん可愛いのですが、もっと年頃になってしまったらさぞかし美少女になるんだべなと少々心配でもありました。マリちゃん本人はオシャレに興味がないので当面は安心材料でもあります。スカートなんて受け付けないですし、ジャージを着れば上下違うのだし・・・
せっかくこんなめんこいのにファッションがね・・・とユリナさんは思います。そんな無とんちゃくぶりも含め、マリちゃんのことをとても可愛いと思っていました。
「・・・無表情で、こわいとも言われた・・・」
マリちゃんはまだ泣きながらユリナさんに言いました。ユリナさんはすっかり頭に血が上っています。
かわいそうなマリちゃん!あ~~、誰かしらんけど小学生男子のバカー!!マリちゃんの可愛さがわかんない?わかんないの??ってゆうか、ほんとはマリちゃんのこと好きなんでねぇの??その可能性もあるっしょね?気を引きたいの?でももう終わってるしょ、マリちゃんに嫌われてるしさ・・・
ユリナさんは、見知らぬマリちゃんの同級生男子にゲンコツをかましたい気持ちでした。
マリちゃんは、おうちではとてものびのびしていて感情表現も豊かですが、学校ではもう少し緊張しているのかもしれません。どちらかと言えば内気で、というか内弁慶で、自分からお友達に話しかけるとか、苦手なのよね?
「だからもうトランプしてない・・・」
それは悲しいお知らせでした。以前から、マリちゃんは学校で仲良くしているお友達がいなさそうなのがユリナさんの気がかりでした。ですがいつの間にか、休み時間に何人かの子達とトランプをするようになったと聞いて、ユリナさんはおおいに喜んでいたのです。
「おかあさんも、休み時間にトランプしてたよ。高校生の頃はウノもやってたし。短い時間だけど楽しかったな~」
ユリナさんも自分の頃を思い出して、マリちゃんもそんな時間を過ごせるようになって嬉しかったのですが・・・残念、残念すぎます。
「マリちゃん、おかあさんから先生に相談してみる?イヤなことを言われたら嫌だよねぇ・・・?」
ユリナさんは担任の先生に伝えたものかと思いましたが、マリちゃんは断りました。
「それは、いい。」
そうですよね、マリちゃんも大ごとにしたいわけでもなく、先生に言うのってイヤなんですよね・・・
ユリナさんが何かを解決できるというわけではありませんでしたが、ひととおり話してマリちゃんは落ち着いたようでした。
次の日も、ユリナさんはマリちゃんに言いました。
「でもおかあさんはマリちゃんのことすごく可愛いと思ってるよ。マリちゃんがほんとに男みたいでかわいくなかったら、おかあさんも辛いけど、マリちゃんはすごく可愛いってわかってるからさ。ハゲてない人にハーゲ!って悪口言うようなもんだよね。でもハゲてないから平気でしょ。相手の方がバカだな~って思うだけだよね。」
「・・・・・」
マリちゃんはノーコメントでした。ユリナさん、大丈夫かなぁとついアレコレ言ってしまいましたが余計だったのでしょうか。マリちゃん的にはもう終わっていたのかもしれません。
それからも、マリちゃんは元気に学校へ通っています。じっさい、マリちゃんはとても可愛いのですよ?
いつかオシャレに目覚めちゃったりする日も来るのでしょうか。女の子らしい服を着る日も訪れるのでしょうか?そんな日が来ても来なくてもどちらでも良いのですが、のびのび育ってくれたら良いなと思うユリナさんでした。
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