第14話 開業するマリちゃん
「はい、いらっしゃい、いらっしゃい~ やすいよ、やすいよ~^^」
ある日のことです。リビングルーム隣の和室スペースに、駄菓子屋さんがオープンしているではありませんか。お店の主はマリちゃんです。床(畳)にうまい棒とか、あめやガム、ひとくちカルパスなど、駄菓子屋さんでお馴染みのあんなお菓子やこんな駄菓子が並べられています。
まだ現在の値上げラッシュ以前のことでしたから、うまい棒が10円で売られていた頃です。
うまい棒、市販ですと10円のところマリちゃんのお店では20円、ガムも市販では10円がここでは20円、基本的に市販の2倍の値付けでまあまあなボッタクリ価格でした。
それでも可愛いマリちゃんがお店をオープンしたのですから、ユリナさん、シンちゃんも喜びました。仕入れ値の倍であっても大人の財力からすれば微笑ましいもんです。
「わ~~、おうちのなかに駄菓子屋さんがあるよ!!」
ユリナさん、やんややんや、チヤホヤしてマリちゃんを称えました。
「うまい棒20円?家の中で買えるの?いいね、いいね、ビールのおつまみが買えるぞ~♬」
シンちゃんも突如オープンした駄菓子屋さんに喜びました。ユリナさんもシンちゃんも、いくつかの駄菓子をお買い上げです。うまい棒など、ジャンクなスナック菓子が人気の模様。
お兄ちゃんのケントさんだけはマリちゃん駄菓子店を完全スルーです。市販の2倍価格ですからね。でもすでに大人の顧客を2名ゲットしたマリちゃん、評判は上々で利益も上がっているようです。
さて、駄菓子屋が好スタートとなったマリちゃん、利益も出ていますから、ビジネスを拡大し始めました。マリちゃんはさらに仕入れに精を出し、次にオープンした時、品ぞろえも豊富になっていましたよ。
「わ~~、駄菓子の種類が増えたね~~事業拡大しているんだね。おかあさんはしょっぱいお菓子がいいけど。」
ユリナさんもシンちゃんもスナックが好きなので、うまい棒やひとくちカルパスは売れ筋ですが、あめやガムは在庫がだぶつきがちになっていました。
ですが、多少在庫が多くなってもマリちゃんにはノープロブレムです。マリちゃんが自分で食べればいいですからね。その後もマリちゃんは頻繁に駄菓子屋さんへ仕入れに赴き、何度か家庭内駄菓子店をオープンさせていました。
でも・・・
「ねぇマリちゃん、最近お菓子がお部屋にいっぱい散らかっているから、こんなに買いすぎてちゃ良くないね・・・?」
マリちゃん、お片付けはあまり得意じゃないのですよね。まあ子どもですから、それは普通のことです。
「マリちゃん、自分でもお菓子を食べすぎだから、体に良くないよね。マリちゃんはアトピーもあるし、お菓子をよく食べているから最近はよけい痒くなっているんじゃない?そろそろ駄菓子屋さん、やめた方がいいね。」
シンちゃんからもお咎めが・・・
なんということでしょう!オープン時はあんなにもてはやされた駄菓子屋さんが、間もなく大人たちの一存によって閉店を強いられてしまいました。
あたかも、一時のブームに翻弄されるタピオカドリンク屋さんのような憂き目に・・・
でもマリちゃん、賢い子ですから、それもそうだと思ったのでしょうか。在庫のお菓子は自分のおやつにして(お父さん、お母さんにも少しおすそ分け^^)、駄菓子屋さんを店じまいしました。
ありがとう、マリちゃんの駄菓子屋さん・・・過ぎし日の駄菓子屋さん・・・
ですがその後もマリちゃんは別のビジネスを展開しています。そのお話はまた今度にしましょう。
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