第7話 バスの事故で三十人ぐらい転生者が来て、デスゲームやバトロワは始まらないの?って言ってた子が王になった話 その1

 「はい。あちらの方に並んでください。いえ、私は神ではなくただの天使です。可愛い?ありがとうございます」


 お前ら欲望に忠実すぎるだろ。リリーの所にばっか行ってんじゃねぇ。男だけじゃなく女の子もあっちに行ってるのはなんなの?神にも心はあるんだよ?


 「外れの方かよ」


 俺の方に来てた奴が小さい声で毒づいてるけど聞こえてるかんな!


 「おうお前ら。我、神ぞ。俺じゃなきゃ転生できないんだからな!この何にもない白い世界でずっと修行させてやろうか!!」


 某マンガみたいにしてやるぞ!安心しろ。近くで俺がずっと応援してやる!



 にしても数が多いな。うーん、三十人ぐらいか。雨でタイヤがスリップしてバスが崖から落下してしまったらしい。こんなにたくさんいると阿鼻叫喚で、説明するのも苦労したぜ。運転手が皆に責められる一幕もあったが、クラス代表の男女によってなんとか丸く収まってた。まるで漫画の主人公とヒロインだなぁ。

 さて、そんな所で俺は俺の仕事をしよう。この中にチートが付与できそうな奴は………。うーん、一人か。すごく大人しそうな女の子で、皆の輪から離れて一人でいるわ。俺が最初に事情を説明している時にも、動揺している様子がなかったから目についてたんだよな。こうしている間もじっとしているだけだし、少し話をしてみよう。


 「君はさっきから一人でいるようだけど、何か質問はないのか?」

 「………私ですか?今、ちょっと戦略を立てていたんです。後、その質問って一人一つだけしか出来ないやつですか?」


 いや、いくらでもしてくれていいけど。ってか戦略って何?


 「今からデスゲームが始まるんですよね」

 「始まらないけど」

 「えっ」

 「えっ」

 「………バトルロワイアルの方ですか!?」

 「違うけど」

 「えっ!?」

 「えっ!?」


 え、何。こいつマジかよみたいな顔で見られたんだけど、そんな物騒な事やらないよ?


 「………じゃあなんでこんな数が集まってるんですか?」

 「不幸な事故だろうねぇ」


 少し調べてみたらバスのタイヤも傷んでいてスリップしやすかったみたいだし、その前にバスの中で生徒たちがめちゃくちゃ騒いでいて運転手さんの集中力もなくなっていたようだ。色んな要因が重なった結果ってみたいだな。そんな事を女の子に教えてあげた。


 「えぇーーー………。貴方が仕組んだんじゃないんですか」


 怖い事言わないでくれる?俺は人畜無害な神様だよ!


 「じゃあこれってただ運が悪かった人の集まりって事ですか?」

 「そんな感じ」

 「軽っ。なんか神様のイメージが崩れてきました………」


 親しみやすい神様だろう?


 「ちょっと良いか?」


 お、なんだよこのイケメン。爽やかスマイルでやってきたぞ。


 「………」


 おや、女の子の様子がおかしい。急に黙り込んで顔を下に向けてしまった。照れてるのか、それともイケメンとは仲が悪いのかな。


 「貴方が神?のようだが、僕たちはこれからどうなるんだ」


 神の後にハテナつけるのやめて。後、それさっきも説明したはずなんだけどなー。全く聞いていなかったようだ。仕方ねぇもう一回説明してやるか。


 「君たちは転生~………」

 「(チラッチラッ)」


 おい、人が説明してんのにチラチラ女の子の方見るんじゃないよ。俺の話、ちゃんと聞いてる?


 「転生か。まるでマンガやゲームみたいな話だな。………マキナはこういうの詳しいだろ。どうだ?」

 「………………どう、と言われても。知りませんよ」


 温度差激しいな。どうやらマキナって女の子は照れてるわけじゃなかったらしい。イケメン、普通に話しかけてたけどめっちゃ嫌われてるやん。マキナ、相当しぶい顔してるぜ。


 「あんた!タイキが話しかけてやってんのにその態度は何よ!」


 なんだなんだ。またえらい美人さんがやって来たぞ。美人だけどかなり気が強そうだな。これはもしや、三角関係というやつでは?


 「人間関係のドロドロは傍から見てて楽しいですよね」


 おおーーーい!!天使であるリリーがそんな事いったら色々と台無しだろ!それはともかく、あっちの子達の相手ご苦労様。


 「誰もそんな事頼んでいませんし、私も望んでいません」

 「ッ!!生意気なのよ!あんたのその態度!!」


 リリーを労おうとしていたら、一気に険悪ムードに!?ちょちょちょちょ。ステイ、ステイ。暴力はいかん。口を挟むつもりはなかったけど、それは駄目だ。


 「リサもマキナも、二人とも俺の為に争わないでくれ」


 ………はい?こいつは何を言っているんだ。明らかにマキナが被害者で、君のせいでこうなってんだよ。


 「だってタイキ、こいつが………」

 「わかったわかった。俺の為にありがとな」


 で、で、で、でたーーー!!!イケメンにのみ許される頭ぽんぽん!!リアルでこれが見れるとはな………今日はなんて貴重な日なんだ。


 「うん………」


 リサはタイキにべた惚れだな。俺でもそれがわかるわ。マキナは………うわっ。すごい嫌悪感満載の顔で二人を見てる。


 「神様、撃ちますか?」


 やめい。愛の矢を撃とうとするな。ってか、それ(物理)の方だよね?


 「撃ってください。お願いします」


 マキナも撃とうとさせないでくれるかな!?コラ!中指を立てるんじゃありません!




 「それで、転生?っての何よ。神様」


 もうこれで三度目なんですけど、そろそろちゃんと聞いてくれます?後、タイキにもたれかかりながら話聞くの止めな?タイキもタイキで、当たり前みたいな顔してんじゃねぇ。


 「これだからこの二人は嫌なんですよ………」


 ぽつりとマキナがそう呟いたが、それには同意してしまうな。なんというか疲れるわ。話が通じなさそうな二人だ。


 「そこの君さ、さっき俺が説明した事を彼女に説明してくれ」

 「なんで俺が?それはあんたの仕事だろう」


 リサって子が俺の話を素直に聞きそうじゃないからだよ。タイキの話ならちゃんと聞くだろ。後、君がマキナに話しかけたそうにしているからかな。本気でタイキはマキナに嫌がられているのをわかっていないのか?


 「仕方ないな。リサにもさっき聞いた話を教えるよ」

 「ありがとタイキ!」


 あらら。目からハートが飛び出るくらい喜んじゃって。


 「マキナも一緒に聞くか?」

 「遠慮します」


 食い気味でマキナは断った。だからリサもそこまでマキナを睨まんでも。残念そうなタイキを引っ張りながら、リサと一緒に離れていく。

 そんな二人を見送っていたら、深いため息をついたマキナが話しかけてきた。


 「神様、そろそろデスゲームほ始めてください。むしろ始めろ」


 始めないよ!?怒りのあまりに言葉遣い変わるの怖いから止めて!?


 「ふー………。お察しの通り、私がデスゲームやらバトロワがしたかったのはあの二人のせいです。奴らをこの手で亡き者にしたいと思っていまして」


 なんか怖い話を告白してきた!?え、本当にこの子、チートが貰えるような善行積んだ子だよね?


 「理由聞きたいですか。むしろ聞け」


 あのあのあの。ご遠慮したいので、がっしりと俺の肩を掴むの止めてくれません?リリーもこっそりと離れていくんじゃないよ!!裏切者めーーー!!!

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