第5話 同期の幼女神が遊びに来て地獄パイをお腹ぱんぱんに食ったら何故か赤面した話

 「遊び………説教しにきてやったぞ!!」

 「完全に遊びって言ってるじゃん。もう遊びに来たで良くね?」


 こいつ俺と同期でちょくちょく会うのに、未だに素直じゃないというか。数百年の付き合いだろうに。もう性格なんだなって思う事にしてるけど。


 「馬鹿者!僕は大変だったんだぞ!変な宗教を僕の世界に流行らせやがって!」


 この女神、見た目は幼女で一人称は僕って属性盛り過ぎだろ。THE普通の俺を見習え。後、変な宗教って俺を崇めてる宗教だよね?俺が変みたいに聞こえるから止めて?


 「他の神だったら侵略行為と取られ、即座に報復されてもおかしくないのだぞ!僕だったから良かったものの………」


 それは素直に悪かったと思うけど、まさかさぁ、そんな事になるとは思わないじゃん?記憶ないはずなのにさ。


 「まあまあ。とりあえずそんな所に立って………浮いて?ないで座ったらどうだ」


 さっきから微妙な位置にいるから、見えそうになるんだよな。ワンピの中身が。


 「ふん。わかった。僕がじっくりとお前に説教してやる!」


 はいはい。鼻息荒くしてないでまぁ座れって。………って、おい。


 「………あの」

 「何だよ。変な顔しやがって」


 いや、うりうりと言いながら下から顔をつつかないでください。というか、胡坐をかいていた俺の足の上にすっぽりと座らないでください。お尻を動かして良いポジショニングを探さないでください!!


 「………………」


 リリーさん。無言で極寒零度の視線を飛ばして通り過ぎないでください。


 「お前よぉ………」


 ただでさえ部下からの評価が低いのに、これ以上下がったらどうしてくれんの。


 「?」


 小首傾げながら見上げるんじゃないよ。無邪気か。何も言わないからって手でぺたぺたと顔を触るな。無邪気か。子供みたいに体温があったかすぎんだよ。子供か。………子供だな!


 「………いや、何でもないです」


 って言えたらいいんだけどなー!前にかなーーーーーーーりオブラートに包んで言ったら、ガーンって顔して涙目になってたし。そんな顔されたら、何も言えんやん?


 「(ロ・リ・コ・ン)」


 リリー!?めちゃくちゃわかりやすいように、遠くから口パクで伝えないでくれる!?俺は、俺はロリコンではなああああああい!!!


 「お前はいつ来ても面白いな。ころころと表情が変わって楽しい」


 左様でございますか。ニコニコと笑顔になってるけど、説教しに来たんじゃなかったっけ。


 「ハッ!?そうだった!またお前のワナにかかる所だった!」


 前にお菓子で誤魔化した事、まだ根にもってるのかよ。あれは確かにわざとだけど、今回は何もしてないよ。冤罪!


 「ルナ様。こちらをどうぞ」

 「お?おぉ、すまない、リリー。君は気が利くな。こいつの傍で働いているのが信じられないぐらいだ」

 「恐れ入ります」


 リリー、ナイスフォロー。菓子でやってれば機嫌も良くなんだろ。って、しまった!今日のおやつは地獄パイじゃん!


 「うーむ。このまったりとして癖のある味。甘未と酸味がまるで血の池を彷彿とさせる味わいでたまらんなぁ」


 おい。パイ生地がぽろぽろ口元から崩れてきてるんだけど。俺の足の上に食べかすが散乱してんだけど。


 「ん?なんだ。お前も食べるか?ほら、あーん」


 食べかけを食わそうとするな。リリーの視線が剣のように突き刺さってんのよ。それに俺、地獄パイ好きじゃないし!


 「い、いや。それはルナの為に用意したものだからな。たくさん買ってきたから存分に食べてくれ」

 「む………そ、そうか。僕の為に、か。それなら………仕方ないな?えへへ」


 おーおー。満面の笑みになっちゃって。食べ物で釣られるなんてやはり子供だな。ん?何だよリリー。こいつわかってねぇなみたいな顔で見てさ。あ、そうか。こんな事を言っちまうと、いつまでもこいつ俺の膝の上で食べちゃうじゃん。んぉぉぉぉ。食べかすが俺の足を侵食していくぅぅぅぅぅ。



 「ふー。食べた食べた。僕は満足だ」

 「………左様か」


 こいつ、見た目の割に結構食べるんだよなぁ。地獄パイは手の平サイズだけど、その包みが一つ、二つ、三つ………わぁ、たくさん。


 「お茶もちょうどいい渋味だし、ご馳走になった。ありがとう」

 「お気に召したのなら何よりだ」


 まぁいっか。地獄パイはおかげさまで消化できたし、ルナも幸せだし、WinWinってやつだ。唯一、俺に対するリリーの評価がまた下がった気がしたが、それもいつもの事だ。はっはっはっ。


 「それでだな。ここに来た用事の事なんだが………」


 む。覚えていたか。


 「ここまでもてなして貰っては、強く言い難いんだが、その、ああいう事は僕意外にしちゃダメだぞ」


 繰り返し言って申し訳ないんだが、って律儀な奴だな。わざとではないにしても、全面的に俺が悪いんだから、お前がそんな顔をしなくていいんだ。


 「お前、他の神に結構注目されているから気を付けるんだぞ」

 「え、それマジ?」


 俺、何もしてないよ?仕事は真面目にしてるけどさ。


 「僕の件は極端だったにしても、チートも何もない転生者が何故か大成するパターンがお前の転生に非常に多いんだ」

 「それは俺の力じゃなくて、転生者たち自身の力だろう。ルナも知っているとは思うが、俺はそんな力は持っていない」

 「確かにそうなんだがなぁ………。客観的に見ると、力を隠していると思われても仕方ない状況なんだよ」


 僕の知り合いの神には事情を説明しているけど、ってなんか大事になってんな。俺は本当にそんな力は持ってないのに。転生させる事、生前に積んできた徳の数によるチートの付与、それにちょっとした役に立たない力があるだけだ。チートも俺の意志だけでは与えられないしな。


 「そうですよ。神様は普通の転生神でそんな能力はありません。近くで見てきた私も保証します」

 「リリーちゃん………」

 「フツーの顔だからフツーに決まってます。後、ちゃん付けキモいです」


 上げて落とすの止めて!?


 「フツー………ねぇ………」

 「何だよルナ。そんな含みがある言い方して」

 「リリーはこいつが神になった経緯を知らないんだっけ?」


 おう待てルナくん。それ以上はいけない。


 「はい、存じていませんが」

 「そっかぁ。機会があったら本人に教えて貰うといい。面白い話が聞けるだろう」


 リリーが初めて俺に興味深そうな目を向けた。数百年一緒だったけどこれが初めてだよ!………この子、俺に興味なさすぎん?


 「凡人が神になれるとは不思議に思っていましたが、何か理由があるのですね」

 「リリーは相変わらず言葉に容赦がないなぁ」


 ルナは苦笑いしてるけど、いつもの事だぜ!それが良い所であり、悪い所でもある。俺は飾らないリリーも好きだけど、Like的な意味で。


 「む?思ったより長居してしまったな。そろそろお暇させて貰おうか」


 急に暖かいものが離れると、なんというか寂しさみたいなものを感じるな。こいつあったけぇし。それはともかく、足の上がすごい事になってる。


 「ん、先程から何も喋らないようだけど、どうしたんだ?」

 「いや、これを掃除しようかなと」


 俺の視線の先に星の様に散りばめられた食べかすを見て、ルナの顔が一気に赤くなった。


 「あ、う、す、すまない。気を付けて食べているつもりだったんだが、あ、僕の服にも結構ついてるな………」

 「ルナ様。私が取りますよ」


 うーん。美幼女と美女が一緒にいると絵になるな。ルナもリリーも美人だからなー。


 「こんなの気にするなって。こうして忠告にも来てくれたし、それに俺はお前がおしいそうに食べている姿、好きだよ」

 「す、すき!?」


 なんというか愛でたくなる可愛さがあるよな、ルナって。


 「………………ペド野郎」


 ぼそっとひどい事言ってるよこの天使!?君もルナの世話よくしているから気持ちはわかるだろっ。


 「い、いや、その、なんだ。うん、えっと、あ、ありがとう」


 耳まで赤くされるとますます誤解されるだろう!?いやそもそもルナは見た目幼女だけど、神年齢的で言えば俺と同い年だからな!?



 そんな事をリリーに説明していたが勿論誤解は解けなかった。ルナは赤面した顔を冷ますようにいそいそと帰ってしまったが、そんな事しなくてもここは今、極寒零度になってるよ。俺限定だけど。ふふ。心が冷たいぜ。

 こういう時には熱いお茶でも飲むか!え?その茶碗はルナが使っていたもの………?待て。激しく誤解だ。そんなつもりはなかった。だから天使の弓を構えないで!?

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