第4話 ハーレム志望のえっちな野郎が残念すぎて同情したら、おんおん言いながら俺を呪ってきた話

 「これまたひどい経歴だぁ………」


 びっくりした。今日来た転生者。やってる事、全部が下の犯罪ばっかだ。脳みそピンクすぎる。


 「我が人生に一片の悔いなし」


 おい、犯罪者。かっこつけんな。にしてもこいつ、イケメンなのにどうしてこんな事ばっかしてたんだ。


 「自分、ハーレムが大好きなんですけど、何十又もしてたら収拾がつかなくなっちゃって」

 「おう。貴様は女の敵だけじゃなく、今この瞬間、俺の敵にもなった」


 辛い過去でもあったのかと一瞬でも思った俺のバカ。


 「いやモテるのも辛いんですよ。皆平等に愛そうと思っても嫉妬されちゃうし」


 皆どころか一人もお相手がいない奴だっているんだぞ!俺とか!


 「それはわかった。わかってないけどわかった。で、なんで君はこんな犯罪やっちゃってんの?」

 「人間関係のゴタゴタが嫌になっちゃって、皆と別れたんです。でも、性欲が止まらなくて」


 性欲が止まらないとかパワーワードすぎる。


 「俺、自分に嘘がつけないので、ついやっちゃいました」


 つい、じゃねぇよ。それとかっこいいと思ってそうなセリフを合間に捻じ込んでくるな。


 「覗き、盗撮、下着ドロ………直接的な犯罪はしていないようだが」

 「俺の犯罪の美学です」


 やかましいわ。ただの犯罪者に違いはないよ。

 にしてもどうするかな。これだけ罪を犯しているとなると、転生にマイナス要素をつけないといけないんだけど………ん?


 「ちょっと待ってて。今、電話来たから」

 「スマホ!?ここ電波来てるの!?テレパシーとかじゃないんだ………」


 雷神が電波管理して飛ばしてんだよね。不眠不休らしくてクソ大変らしいけど。ちなみにこれゴッドフォンっていうんだ。いつも言いづらいなって思ってる。


 「はいはい。もしもし。え?はいも、もしも一回で良い?はいはともかく、もしはおかしいだろ………」


 なんかバカにしたような感じで鼻で笑われたんだけど。俺が悪いのか!?


 「それで本題何よ。え?うんうん………だからうんも一回で良い?あのさ、話進まないからそれ関係は置いといてくれる?で、なんだっけ。………ああ、それで?………え、マジ?」


 思わず聞き直したら、言葉も一回では聞けないんですねってやかましいわ。


 「あーーー………。ごめん。疑うわけじゃないけど、目の前に本人いるしさ。確認するわ。情報ありがとう。お疲れさん。それじゃ後でな」


 さて、と。


 「待たせたな。ちょっとお茶目な部下から連絡があってさ。それで君に聞きたい事が出来たんだけど、いいか」

 「ななななななんですか。僕は何もやってませんよ」


 目がバタフライしとるんやが。動揺すんのはやない?


 「えーと、君、Dの者?」

 「どどどどど童貞ちゃうわっ!!」


 ギルティ。


 「あのさ、数十又したとかなんでそんな嘘ついたの?」

 「う、嘘じゃねーし。ほんとだし。………画面の向こうではモテモテだったし」


 ゲームの話かーい。こいつ、残念イケメンって奴か。そういや死因も転んだ拍子に頭ぶつけたからだったな。しかも下着ドロが巡回中の警察にばれて逃走中に。


 「それにしてもわからん。顔は良いのに、なんでこんな犯罪ばっかり」


 イケメンにはイケメンの悩みがあるんだろうけどな。その点、少し聞いてみるか。


 「………実は」


 観念したのか、肩を落としながら話し出した。全部の話を聞いて要約すると、どうもこいつには姉と妹がいたようで小さい頃からその二人に玩具にされていたらしい。それがトラウマになって女性不信になってしまったとか。


 「女物の服を無理やり着させるのとか当たり前で、都合の良い着せ替え人形みたいな感じでした。高校生になってからも三姉妹みたいな感じで外出した事もあります」

 「お、おう………」


 遠い目をしながらそんな事言われたら、なんにも言えねぇよ。


 「一人暮らしするようになってようやく解放されたんですけど、男の尊厳を踏みにじられて、自分に自信がなくなって………。ゲームの中でならそんなの関係なかったんです。皆優しくて、主人公も男らしくてかっこよくて」


 そうだったのか。こいつも大変だったんだな。


 「ん?いやちょっと待て。じゃあ覗きとかはなんでしてたんだ?」

 「性欲が止まらなくて」


 色々と台無しだよ!要は女性不信にはなったけど、女性には興味があるって事か?ややこしいなぁ。


 「それでも罪は罪だからな」

 「本当にすみませんでした」


 俺に謝られても仕方ない。謝るなら被害を受けた女性たちに、だ。死んだ今となっては今更だが。


 「そ、それでですね。神様………」

 「ん?」

 「こういうのって転生特典ってあるじゃないですか」

 「………おう」


 なんか嫌な流れになってきたんだけど。


 「俺、女の子は苦手なんですけど、転生したらそこでは頑張ろうと思うんです。もちろん、誰にも迷惑をかけないように」


 まぁ現世ではどうにもならなかった事も、転生すれば解決する事はある。記憶も大概はリセットされるし。


 「そこで俺はハーレム王になるんです!!!」


 はいぃぃぃ???


 「ゲームみたいなハーレムを作りたいんです!!!!」


 それでチートが欲しい、と。まぁ魅了系のチートもあるけども。


 「無理だなぁ」

 「やってみなくちゃわからんでしょ!?」

 「あ、ごめん。チートはやれないって話」


 自力でハーレムを作るのはご自由に。まぁ、チートはやれんわなぁ。事情があったとはいえ、犯罪ばっかやってるから。


 「えっ」

 「先に言っておくけど、記憶も無理。リセット」

 「えっえっ」

 「後、罪をたくさん犯していたからペナルティ付き」

 「えっえっえっ」


 ちょっと面白いな、こいつ。


 「つまりチートは貰えないし、記憶もないし、マイナススタート、と?」

 「そーいう事」

 「先っぽだけでもチート貰えません?」


 どういう事?例えば無敵チートだったら小指だけが無敵になるとかそういう感じ?


 「そういうオプションはないな」

 「………終わった」

 「いやいやいや。終わってない。むしろ始まりだから。よく考えてみ。記憶がリセットするって事は女性不信もなくなるって事だ。女の子ともうまく付き合えるようになるだろ」

 「そうでしょうか………でも俺、家族以外とまともに話した事もないんですけど」

 「大丈夫、大丈夫。なるようになるって。俺も神様やってるし、上手くいかない事あるけどなんとかやってるよ」


 チートくれくれが大量にやってくるけど、額をピキつかせながらなんとかやってるよ!


 「………そうですよね。神様もこんなフツメンなのに一生懸命に生きてるんですよね」

 「こんなフツメンってなんやねん。こんなって言葉必要だった?」


 後、誰だって一生懸命に生きてんだよ!ミミズだってオケラだってアメンボだって生きてんの!!


 「わかりました。何だか勇気が出てきました!俺、転生します!!」

 「………ったく、調子いいなぁ。まぁいいや。転生ね。わかったわかった。異世界でいいんだな」

 「はい!猫耳、犬耳とかキツネっ娘がいる世界でお願いします!!」


 こいつケモナーだよ。しかも耳とか尻尾だけケモノ要素が良いタイプ。


 「あ、そうだ。君へのペナルティは人間に転生する事にしよう」

 「え、それの何がペナルティなんです?」

 「転生先の世界は人間は獣人に嫌われているから」


 ケモナーには辛いペナルティだろ。


 「むしろ燃えますね!!ゲームでも攻略難易度が高い子ほど、攻略のし甲斐がありました!」


 行く先は現実だし、Dの者がそんな事言ってもなぁ。まぁ、やる気になってるのに水を差す必要もないか。


 「じゃあそろそろ転生させるぞ?」

 「よろしくお願いします!よーし、今度こそリアル女子とちゃんと会話するんだ!神様も同じ仲間として天から応援しててください!」


 君の目標低くない?後、勝手に仲間にしないで。


 「まぁ頑張ってくれ………おっ。お帰りー」

 「ただいま戻りました」


 異世界に転生させている途中で帰ってきたか。意外と早かったな。


 「え………。神様???その超絶美女は一体………」

 「ん?この子は俺のサポートをしている天使のリリーちゃん」

 「ちゃん付けはキモいって言いませんでしたっけ。それとも二回言わないと耳が聞き取れませんかね」

 「ご覧の通り、口は攻撃的だけど中身も攻撃的だよ」

 「戦闘民族みたいな言い方やめてくれます?」


 そう言いながら天使の弓を出すの止めない?それは人間同士をくっつける為の愛のアイテムでしょ!


 「………」

 「ん?すまん。そういう転生の途中だったな。続きを始め………」

 「怨怨怨怨怨怨」


 怖っ!?なんか全てを呪い尽くすような表情で俺を睨んでおんおん言ってる!


 「何ですかこの方は。神様、またなんかやっちゃったんですか?」

 「またじゃないよ。そんなにやらかしてないよ!」


 転生した世界で転生者がやらかしている事は結構あるけど、俺は誠実な対応をしていた。無実だ!


 「怨!怨!怨!怨!怨!怨!」


 なんかすごい勢いで強調してきた!?リリーと会話しているだけなのに。やばい。こいつは早く転生させよう。


 「怨!怨!怨!怨!お………」


 ふー。なんとか転生出来たぜ。最後まで血の涙を流しながら俺を睨んでて、マジで怖かった。


 「なんか、ぶっちゃけキモい人でしたね」

 「それを直接言わなかっただけ優しさだと俺は思う事にするよ」


 リリーはすでに興味もなくなったのかそのまま行ってしまった。結構ドライな所あるからなー。


 「って、おい!リリーちゃん!?どうしてこんなに地獄パイ買ってきてんの!?俺が買ってきて欲しかったのはカステラの方だよ!?え?大事な事だったら二回は言わないとってやかましいわ!!一回でいいのか、二回でいいのか統一しろっ!!」


 どうすんだよコレ。山の様にあるよ。俺一人だと絶対に消化しきれないし、あんな味のお菓子は食べたくないよ。………あ、そうだ。いいこと考えた。あいつ呼び出そーっと。そういやこの前、来るとかなんとか言ってたし、ちょうどいいや。

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