第22話 初めての頭髪検査

連休も終盤となったある日、勇一は自分の部屋でぼんやりと天井を見つめていた。部屋の隅に置かれた鏡に映る自分の姿には、少しずつ伸びてきた髪の毛とともに、この1か月の経験が色濃く刻まれていた。


ただでさえ望まぬ丸刈り。せっかくここまで伸びた髪を、連休明けの頭髪検査のためにまた自ら刈り落とすのは、心がついていかなかった。床屋に向かう勇気が湧かず、ただただ憂鬱な気分に包み込まれる。今後はこれが毎月の日常になると思うと、自分の自由が奪われていくことへの恐怖と絶望感が彼を襲った。


勇一は結局、連休最終日にも床屋に行くことができず、そのままの頭で学校へ向かうこととなった。


教室に着いた勇一が他の生徒たちの頭を見渡してみると、全員がきっちりと手入れをされたきれいな丸刈りになっている。それに対し、自分の頭はボサボサで、はっきりと校則違反だ。教師が頭に手のひらを置き、指の厚みより髪がはみ出すと違反、という頭髪検査のルールを思い出し、勇一は自分の運命を悲観的に捉えていた。


検査の時間。男子全員が廊下に一列に並ばされ、その順番を待つ間、勇一は自分の心臓がドキドキと激しく打つ音がその耳に聞こえてきそうだった。彼は両手で学ランの裾をぎゅっと握りしめ、この不条理な現実から逃れることができればと切実に思った。


教師の手が一人ひとりの頭髪を確認していく様子は、まるで工場の製品検査のようだ。やがてその検査の手が勇一の頭に触れた瞬間、勇一は「どうにかギリギリ合格してくれ」と奇跡を願っていた。だがしかし、教師の指に挟まれた彼の頭髪は、明らかにその厚みを超えていた。当然のように、そして無機質に「違反だ」と告げる教師の言葉は、勇一の心を突き刺すような鋭さを持っていた。


彼はこの悲痛な瞬間をどうにか乗り越えようとしたが、頭の中は混乱し、思考は途切れ途切れになった。自分の存在がこのような形で否定されることに、彼は深い絶望を感じた。他の生徒たちは、これからも続くこの検査に耐えていくことができるのだろうか。自分はこの厳しい現実にどう向き合っていけば良いのだろうか。彼の心は、その疑問と絶望でいっぱいだった。


結局、この日の違反者は勇一ただ一人だった。通常のルールならば、その場で五厘に刈られるところだったが、教師は「3日以内に切ってくることで、今回は許してやる」と言った。しかしその声には優しさではなく威嚇のニュアンスが強く含まれており、「次回はこうはいかないと思え」と付け加えられたその言葉に、勇一はただただ打ちのめされるしかなかった。


自分だけが違反者となったこと、そしてその結果をみんなの前で晒されたことに、彼は深く落ち込んだ。他の生徒たちは彼を見て何を思っているのだろう。彼らの視線が彼の背中に突き刺さるように感じた。


この後再び床屋に行くことを考えると、彼の心はさらに重くなった。つい1か月前、バリカンのつらさを痛感したばかりの彼にとって、その現実に再び直面することは、とてつもなく大きな困難に思えた。でも、それをしなければ、また同じ場面を経験することになる。彼の心は、その苦悩と戸惑いで満たされていた。

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