お出かけサンドイッチ②

☆材料(2人分)

・サンドイッチパン  12枚

・ゆで卵       2個  

・レタス       4枚

・冷凍コロッケ    1個

・キャベツ     1/4玉

・ツナ缶       1個

・マヨネーズ     適量

・きゅうり     1/2個

・イチゴ       2個

・バナナ      1/2本


 サンドイッチの作り方は、基本的に中身を薄くスライスして並べるだけ。ただ何も考えずに挟むだけだと、具材が崩れてしまったり、中の水分が溢れて手が汚れてしまうこともある。


 たまごサンドは、ゆで卵を卵黄と白味にわけてそれぞれ細かく刻む。目安は、黄身のほうか少し粗いくらい。

 刻み終わったら、そこに塩と胡椒を少々、マヨネーズを小さじ3ほど加える。マヨネーズを入れすぎると、酸味が効きすぎてしまう。

 それらをよく混ぜ合わせ、パンにバターを薄く塗ったら、真ん中から端へとたまごを伸ばしていく。この時、端ギリギリまで伸ばさないのがポイントだ。

 

 コロッケサンドでは、ホットサンドにするべく、キャンプなどで使うホットサンドメーカーを使う。

 パンの外側(具材を乗せない方)にバターを塗り、千切りにしたキャベツを並べる。その上に揚げたコロッケを乗せ、スプーンでソースを塗り広げる。この時、パンにはソースをかけないこと。

 あとはパンを被せ、蓋を閉じて中火で3分ほど。開いて焦げ目がついたのを確認したら、裏返してもう3分。こんがりと焼き目のついたコロッケサンドは、食べ応えも抜群だ。


 3品目はツナサンド。たまごサンドと同じく、パンに薄くバターを伸ばし、ツナを全体に散りばめる。ツナはあらかじめ汁気を取っておくと、パンがびちゃびちゃにならない。

 きゅうりは薄切りにして、塩をかけて水分を取り除く。5分ほどで水気がなくなったら、ツナの上に斜めに並べれば作業は終わり。パンで挟んで斜めに切ればツナサンドの出来上がりだ。

 

 最後はデザートがわりの、イチゴサンドとバナナサンド。両方とも生クリームは程々に、チョコペンで全体にチョコをかける。イチゴの方にはジャムを、バナナにはシナモンシュガーを少しまぶしサンドイッチセットの完成だ。


「栞、どれがいい?」


「……コレ」


 栞が指名したのはツナサンド。手渡すと初めて見るツナをあらゆる角度から覗き込み、香りを確かめてから端っこの方に口をつけた。

 くどくない脂の乗ったツナは、瑞々みずみずしいきゅうりの爽やかさを際限なく引き出す。素朴ながらも、新鮮なキュウリの歯ごたえは抜群だ。

 暖かい時期にぴったりのサンドイッチに、栞は脚をパタパタと揺らした。


「おいしっ」


「ツナは裏切らないからね」


 その様子を眺めながら、紫音もコロッケサンドを手に取った。

 少し冷めてしまっているが、こんがりと焼き上がったパン生地に、サクサクしたコロッケが食欲を掻き立てる。重ねてソースの香ばしい匂いが鼻先をくすぐり、紫音も同じように足を揺らしそうになった。


「コレなに?」


「たまごサンドだよ。食べてごらん」


「……ぷりぷり」


 たまごサンドを一口食べた栞は味を噛み締めてから、じっと中の具材を眺めた。

 ぎっしり詰まったたまごの控えめな甘さとマヨネーズの程よい酸味が、口の中でじんわりと広がって行く。黄身の方を大きめに刻むことで、シンプルながらそれなりの満足感を得られる。


「マヨネーズ効きすぎたかな?」


「おいし」


 どうやらマヨネーズもいける口らしく、きゅうりとは違った酸っぱさに少し驚きながらも、美味しそうに食べていた。

 

「デザートもあるから、好きなの選びな」


「……あいがと」


 食欲の収まらない少女はおずおずといちごサンドに手を伸ばして、ほっぺたを抑えた。クレープとは違った食感と爽やかな甘さに、頬だけでなく瞳も蕩けさせていた。

 そしてすぐにハッとなると、イチゴサンドを半分にわけ、片方を紫音の方に渡した。


「はんぶーこ」


「はいはい、ありがとう」


 あまりに新鮮な反応の連続で、紫音は小さく笑みを漏らしながら、青空の下での食事を楽しんだ。

 


 

 昼食後もいくらかのお店をまわれば、辺りは茜色に染まり始めていた。午後6時の鐘が鳴ってもまだ薄暗くならないこの景色が、夏の訪れを告げているようだ。


「つ、疲れた……」


 マンションまで帰ってきた紫音は、エレベーター前でがくりと項垂れた。基本的にはインドア派の彼女の全身が、迅速な休息を訴えている。


「全く……やっぱり子供ね」


「………んん」


 背中には、お気に入りの服が入った袋を手に持ちながらも、夢の中にいる栞の姿があった。

 買い物の後に公園でしばらく遊んだせいか、帰る頃には眠たげに眼を擦っていた。そこで少しだけと帰り道をおんぶしていたのだが、おんぶをして30秒ほどで寝落ちしてしまったのだ。

 

「えっと、鍵……あれ、どこだっけ?」


 ひとまず玄関前に着いたはいいものの、背中に眠り姫を抱えているので、カバンの荷物を取り出しづらい。

 廊下に下ろすわけにもいかないので、なんとか起こさないように探すが、カバンの奥底にしまったのか全く見つかりそうになかった。


「早くお風呂入りたいのに……」


「鍵ならココにありますよ、早見さん」


「ん、ありがと」


 受け取って鍵を差し込もうとしたところで、紫音は何か違和感を感じた。

 ゆっくりと声のした方に視線を向ければ、そこには、見知らぬ女性が側に立って笑みを浮かべていた。

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