第7話 初めての、彼氏のお弁当①

 きょ、今日は!

 弘樹ひろきくんのお弁当を食べる日なんです!

 ああ、どきどきするー!

彩香あやか、じゃあ、お弁当食べよう」

「うん!」


 あたしはお茶だけ持って、弘樹くんと中庭のベンチに移動する。

 ……なんか、一部の女子の怖い目があった気がするけど、気にしない気にしない!

 ベンチに並んで座って、「はい、これが彩香の分」ってお弁当箱をもらう。

 わー、まげわっぱのお弁当箱! なんかいいよう。

 うきうきしながらお弁当箱を開けた。

「彩香、嫌いなもの、ないって言っていたよね?」

「うん!」

「卵巻きと、ほうれん草の胡麻和えとミニトマトときんぴらごぼうと、それから鶏胸肉ともやしをカレー味で炒めたものだよ」

「おいしそー! すごいすごい、弘樹くん!」

「いや、昨日作っておいたものもあるし」

 って、弘樹くんはちょっと照れながら言った。


「食べていい?」

「どうぞ」

「ごはんにゆかりがかかっているのも嬉しい!」

 あたしはまず、鶏肉を食べた。

「おいしい! カレー味っ」

 それからごはんをひと口食べ、次に卵巻きを食べた。

「ほんのり甘くて優しい味! 何で味付けしているの?」

「みりんと醤油だよ」

「へえ!」

 ママが作る卵巻きは甘すぎて、いつも焦げていた。弘樹くんの卵巻きはきれいにくるくるって巻かれていた。

「カレー味、おいしいね!」

 ママはいつも同じような料理しか作らないから、カレー味の炒め物って食べたことがなかった。カレー味って、どうやって作るんだろう?

 

 弘樹くんの作ったお弁当は、みんなおいしくて、ほうれん草もきんぴらもおいしかった。何より、弘樹くんが作ってくれたこと、そして、同じお弁当を食べていること! が、とっても嬉しくて、幸せなしあわせなお弁当の時間だった。



「ごちそうさま! すっごくおいしかった!」

「どういたしまして」

 弘樹くんはちょっと笑う。

 ちょっと笑う、この顔、好きだな。横顔も好きだけど。

 あたしはお弁当箱に蓋をして、それからナプキンで包んだ。

「お弁当箱、洗って返すね!」

「いいよ、僕が洗うから」

「ううん、あたし、洗って返したいの!」

「……分かった」


 あたし、ちょっとした計画を思いついたの!

 そして「分かった」と言ったときの、弘樹くんの優しい顔も好き。

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