第100話 バルコニーで味見の会


 バルコニーの炊き出し味見の会。



「牛蒡は本当に美味しいのです。

豚汁の味見でその美味しさが伝わないなら、この天ぷらときんぴらを食べてください!!」



 私は天ぷらときんぴらも追加で用意した。

 バーベキューセットが大活躍する。



「あ、これは衣がサクサクで美味しいですね」

「特にこの甘いような、辛いような味のが」


「ラヴィは天ぷら、エレン卿はきんぴらが気に入ったようね。

って、旦那様ももりもり食べてるじゃないですか! ほら、美味しかったでしょう?」


 完食の勢いで食べてる!!


「まあ、そうだな。でも誰でも見た目は木の根だと思うはずだぞ」

「きんぴらは味がしっかりついてるから、白いご飯かお酒と一緒にとっても美味しいですよ」



 私はきんぴらを食べつつ、お米のお酒も一緒に飲んでた。

 ラヴィにはご飯をよそってる。


 勤務中のエレン卿がお酒は流石に無理だ! って顔をしてご飯に手を出していたけれど、不憫に思った旦那様が「特別に許す、二杯までなら。他にも護衛はいるからな」


 と、言ってあげてた。

 とたんに破顔するエレン卿。

 良かったわね! お酒飲めて!!



「ところでお父様、大破した皇城は一度更地にするらしいから復旧までだいぶ時間がかかりそうですね」

「地下の宝物庫が無事だったのは奇跡ね」

「流石に宝物庫には強固な守護魔法が何重にもかけられていたからな。

まあ其方達にはこの公爵邸があるのだし、ラヴィアーナが王になれと言われても当分はこちらで過ごせばいい」



 そう、あれほどの事があったのに、公爵家は無事だった。

 それというのも、旦那様が日々あふれるように湧いて来る魔力を魔石に注入し、屋敷を覆う魔法結界に使っていたからだった。



「流石聖女様を輩出したアドライド公爵邸だ、魔王軍の侵攻でもなんともないぜ!!」

「知ってるか? ここの庭、願いを叶える妖精がいるらしい」

「俺はアカギレと腰痛を治してくれる妖精がいるって聞いたぞ!」


 庶民からはこのように噂されていた。

 まだ妖精を信じてる人がいたのか……。ピュア……。



 しかし、もうじき厳冬期。

 魔王軍の侵攻で家が壊れた人達も多いので、寒空の下、凍えさせる訳にもいかない。

 私は自分の領地のアギレイの方で有事の際に集まれる公民館のような物を作っていて、そこにも家を失った者を何十人か避難させた。


 緊急特別処置として平民は通常は使えない転移陣も惜しげもなく使わせた。



「各地の教会も避難所に使うようですから、私は当分その辺を廻って奉仕活動をして、民を安心させてあげる役割だそうです」


 聖女は忙しくて大変だ。

「ところで、女魔法使いの傭兵カホさんは、シュバルツさんの姉と言ってましたが、本当に姉なんでしょうか? 違いますよね? 本当はどういう関係なんでしょうか?」



 うっ!! ラヴィ、そこを突っ込んでしまう!?



「ラヴィをあ、安心させる為に姉と言っただけよ。全く知らない人が急に代わりに護衛って言われるよりはいいかと思って、身内のフリをね。

実際のところ、シュバルツと私はただの知り合いで雇用主と傭兵の間柄よ」


 多分ラヴィ的にはシュバルツの事は腕は立つが、エッチなお兄さんと思ってると思うので、私はシラをきる。



「どうしたの? 会いたいの? シュバルツは今、花街で忙しくしてると思うわ。

ラヴィの教会巡りは私が付き添うから大丈夫よ」

「そ、そうですか、分かりました。シュバルツさんは、花街にお気に入りの子でもいるんでしょうか?」


「そ、そうねー、花街も魔物のせいでダメージを受けてるだろうから、お気に入りの子のいるお店が心配なんでしょう」



 私はあらぬ方向を見て言った。



「シュバルツさんのお気に入りってどんな子なんですか?」


 え、そこが気になるの? ハルトは!?


「え、その、かわいくて胸の大きな子がいるお店がお気に入りなんですって」

「やはり胸ですか……」



 ラヴィは未だ発展途上の自分の胸を見て、何故かしょんぼりする。



「ラヴィはまだ成長期よ、しっかり栄養を取れば大丈夫よ」



 男二人は胸の話題に何も口を挟めぬ! といった風情でお酒をカッと飲み干した。

 そして、旦那様には明日はラヴィと一緒に炊き出しを行うのだから、早く寝ろと言われた。

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