第81話 お出迎え

 無事に勇者と聖剣を見つけて、エルスラの神殿へ向かう為の乗り合い馬車の停留所まで来た所で、私はディアーナに戻る為、お別れを切り出した。



「もう神殿行きの馬車に乗って行ったらそのまま着くという距離まできた。

悪いが俺はまだやる事あるから、ここでお別れだ」


「え、あ、そうなんですね。シュバルツさん、旅の道中、護衛ありがとうございました」

「ああ、お嬢ちゃんも皆も元気でな」



 などと言ったが、すぐに会うわよ!!


 彼等が乗り合い馬車に乗って神殿へ向かう間に、私は近くの公園の茂みで男装の変装を解いてフードを被って認識阻害の魔法を使って、木の枝に乗って神殿まで空をかっ飛んで先回り!!


 しばらくして、にわかにエルスラ神殿内が騒がしくなった。

 誰か大物が転移陣を使ってこの神殿に来たようだ。


 って、アレクシスだった! 公爵だから大物よね!

 なんとラヴィ達より先に神殿に旦那様が現れた。


 皇都の神殿で待てばいいのに、わざわざお金かけてこっちの神殿にまで来たのか。

 私はフードを被ったまま旦那様に近付いた。



「旦那様……出迎えに来てくださったのね」

「!! 其方、いつの間に」


「先回りしてついさっきですわ、じきラヴィ達も乗り合い馬車で……あ、来ましたね。

勇者ハルトヴィヒと聖女とエレン卿が」


 エルスラ神殿の入り口付近に娘達の姿が見えたので、は被っていたフードを取って駆け出した。



「ラヴィ──ッ!!」

「お、お母様!? あ、お父様まで!」



 ラヴィが私とアレクシスを見つけた。



「よく頑張ったわね! ラヴィ、そして勇者、ハルト。

ラヴィが無事に勇者発見の任務を達成したとシュバルツの手紙を受け取ってから、いてもたってもいられず、私どころか旦那様まで来てしまったわ」

「ラヴィアーナ、よくやったな」


「お父様、私達はシュバルツさんの言うとおりにさっさと聖剣のある氷結洞窟へ向かったらハルトが聖剣を抜いてしまってとても驚きました」

「さもあろう。エレン卿もご苦労だった」


「いいえ、本当にシュバルツ氏の言うとおり動いていたらあっさり見つけてしまって……というか、ハルト様が勇者だったとは」



 エレン卿からもシュバルツの話が出たので、私は話を逸らす事にした。



「あら、あそこで結婚式をやってるわ! 流石神殿ね! 花嫁さんも綺麗ね」

「わあ、本当に。……お母様達も、もう一度結婚式をやればいいのに」

「え? 何故結婚式を二回も?」


「昔より今の方が仲が良いからです。結婚式のやり直しをしたらどうかと」

「あははは! 色々片付いたらそれも素敵かもしれないけれど、お母様はお友達がとても少ないの」



 笑ってはいるが、悲しい事に、マジで友達いない。

 原作というか、元のディアーナは男にはモテたけど同性人気が無かった。

 皇太子に相手にされなかった腹いせに人の婚約者を誘惑して遊んでたから当然だ。



「私とハルトとガヴァネスのレジーナ先生が参列すれば良いじゃないですか」

「はい! 俺も参列します! 喜んで!」


「──まあ! 聖女と勇者が私達の結婚を祝福してくれるなんて贅沢ね」

「別に結婚式を二度やるのは構わないが、今はやる事が山積みだ。

差し当たり、勇者が見つかれば皇帝が宴を開催するから」


「え、あ、じゃあお父様。

この後、皇都の神殿に転移したら、大騒ぎになって、わりとすぐにパーティー開催の流れになると言う事ですか?」


「それは当然だろう。

今世の聖女と勇者が揃ったのだから。

おそらくそう時間をかけずにパーティーを開き、ここぞとばかりに貴族達も縁を繋ごうと群がって来るだろう」


「あなた、ラヴィは政略結婚に向かないので自由恋愛でよろしくお願いしますわ」



 ラヴィが結婚のワードに驚いたのか、ビクッとしてフリーズした。



「まあ、勇者の横に立たせておけばしばらくは保つだろう」

「はい! 勇者の俺、いや、私がラヴィアーナ嬢の盾となります!」

「そうか、流石勇者だ。頼りにさせてもらおう。既に山ほど娘への求婚の手紙が届いている」

「えっ!?」


「うっ! ラ、ラヴィアーナ嬢に求婚者が山ほどですか!?」

「ああ、いろんな家門から自分の息子の婚約者にして欲しいと」


 

 公爵たる旦那様の前なので、流石に言葉に気を使ったらしいハルト。

 将来義理の父になる相手なら好感度も稼いでおかないとね。


 ラヴィは青ざめた顔で固まっている。

 私がなんとか励まそうと考えていたら、通りすがりの神官が声を上げた。



「ああ!? それは聖剣!! 勇者の聖剣ではありませんか!!

では、貴方様が勇者様!?」


 あ、エルスラ神殿の神官にバレた。



「え!? 聖剣!? 勇者!?」



 結婚式の参加者までざわつきはじめた。



「あ! 隣の方は聖女様ではないですか! お戻りになったのなら声をかけてくださいませ!」

「申し訳ありません、神官様。

家族が、両親がわざわざ出迎えてくださったので、先に報告をしておりました」



 ラヴィが申し訳なさそうにしていたので、私が神官との会話に割って入った。



「とりあえず神殿内で娘や勇者が入浴してから休めるようにしてくださいませんか?

暑かっただろうし、疲れていると思います」


「かしこまりました! すぐに浄めの水をご用意いたします!」

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