第71話 旦那様のいたずら
時は流れ、ラヴィは10歳になった。
私とアレクシスの仲は一進一退を繰り返すようで、なかなか思うような相思相愛とも行かなかった。
プライドが邪魔しているのかもしれない。
意地を張っているのかも。
ともかく10歳になったのだから、ついにラヴィが学校に、アカデミーに行く時が来た。
「アカデミーではなるべくハルトのそばにいなさい」
「お母様、それはどうしてですか?」
彼が原作基準でラスボスを倒せる勇者であり、あなたの将来の恋人だからよ!!
「何かあったら守ってくれるかもしれないし、逆にあなたがハルトを守れることもあるでしょ? 一緒にスケートもしたお友達じゃない?」
「なるほど、私がハルトを守ればいいのですね」
ラヴィはコクリと頷いた。
守られるより守る気でいるらしい。
「こ、困った時は助け合いだから」
妙に男前な事を言うのに驚いた。
見た目はとても可憐な少女なのに。
「では、行ってまいります」
一旦神殿へ行き、転移陣を使って皇都に向かい、皇都にあるアカデミーに行く。
それから寮生活だ。
誇り高く勇気有る者の多い、領主、支配者向きの白の寮。
計算に強く理数系で分析力の高い文官向きの緑の寮。
力強く情熱的な騎士系が多い赤の寮。
探究心と独立心の強い、魔法使いや学者の多い群青の寮。
本人の資質、性格で組分け、寮分けが行われるなら、いい子ばかりのクラスに行ければいいけど、支配者向きの白はやたら気位の高いのがいて扱いが難しいのもいる。
勇気があるからと言って優しいとは限らないのがミソ。
原作通りならラヴィとハルトは勇気と献身の白で白の寮に行くはず。
黒のマントの内側に寮の色が反映される。
でもハルトは赤の寮か白かで判定が揺れていた。騎士素養が高いので。
なお、寮分けは本人と家族の意向もわりと反映させる事が出来る。
金を積めばいいのだ。拝金主義かよ。
原作では皇太子は白の寮に行った。
何が白だよ、腹黒のくせに。
* *
「ラヴィが寮生活になるなんて寂しいわね、うさちゃん」
私はうさぎ小屋から一匹だけ自分の部屋に連れて来て、部屋で可愛がっていた。
絨毯の上にフカフカの毛皮のような毛足の長いものを敷いて、上に寝そべり、撫で回したりしている。
私が撫でるのをやめて仰向けに寝て、天井を仰ぐと、うさちゃんは私のお腹の上に乗って来た。
とてもかわいい……。
「お、奥様、高貴な方が床の上にうさぎと寝転がるのはいかがなものかと」
「流石にベッドに上げるのはやめて、絨毯の上なのだから見逃してちょうだい。
このふわふわの上は気持ちいいのよ」
ややしてアレクシスが私の部屋に入って来た。
うさちゃんは私のお腹の上で、なんと寝てしまって動けない。
「床の上で何をしている?」
「今、うさちゃんがお腹の上で寝ていて動けないのです」
「下ろせばいいではないか?」
「それより、ラヴィアーナの入学式は本当について行かなくて良かったのかと家令が心配していたぞ」
「ラヴィ本人が四大公爵の親が来ると他の子が萎縮するかもしれないと断るから行きたくても行けないのです」
アレクシスは私に近づいて、床に膝をついた。
「もしかしてうさちゃんに触りたいのですか? しっぽは止めてくださいね」
「何故だ?」
私は前世で寝てるうさぎの尻尾付近を触っていたら、う◯こをポロリをしていた動画を見た事がある!
「お尻を刺激すると反射で出るのかもしれないのです! うん◯が!」
「なんだと?」
「そ、その、珍しく好奇心に満ちた顔で手を伸ばすのを止めてください!」
不穏だ!!
「だ、旦那様、お止めください! この体勢でうさぎに粗相させると奥様の体の上に排泄物が、ポロリしてしまいます!」
メアリーがこの状況を見かねて止めてくれる。だが……。
旦那様の目には悪戯めいた光がある。
この間またおねだりして胸筋を揉ませて貰った腹いせ!?
それで私に意地悪をしようとしてるのでは!?
「必ずソレが出るとも限らないのでは?」
「そんなうん◯ガチャは止めてくださいよ!!」
「ガチャとはなんだ?」
う!! 口が滑ってしまった!! 聞き慣れない単語に旦那様が反応を!
「ええと、私が今度開発して売り出そうとしている、手のひらサイズのカプセルに入ったおもちゃの出て来る箱ですわ!」
口から出まかせである。とにかくアレクシスの興味をうさぎの尻尾から逸らせないと!
「カプセル?」
「スライム加工で丸い容器に小さなおもちゃを入れるのです」
「手のひらサイズではまともな玩具は入らないのでは?」
「ほ、宝石、魔石ガチャなら大人も楽しめるんですわ! 屑魔石も混じってて玉石混淆!!」
さっとメアリーが私のお腹の上からうさぎを取り上げた。
セーフ!!
もううさぎは完全に起きていた。
「だ、旦那様、うさぎは目覚めましたけど、お触りになりますか?」
「もういい」
この男ぉ〜〜〜〜っ!!
うさぎが私から離れた途端に興味を失って、旦那様は私の部屋から出て行った。
「んもぉ〜〜〜〜っ!! あの人は何をしに、わざわざ来たのよ!」
「お、お嬢様の入学式の件についてでは?」
「それならラヴィが数日前から来なくていいって言っていたので、その時に相談すべきじゃない?」
「では、奥様の様子が気になって、お顔を見に来てくださったのでは?
寂しそうにしてるかもしれないと」
えー? そうかなぁ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます