第61話 ハポングの夜桜宴会
市場から帰る馬車の中で昼食として、私は太巻きを食べてしまった。
だって、ほら、イカ焼きだけじゃ満腹になってないし、お腹空いたし、馬車の中なら三人しかいない。
私と旦那様とラヴィだけ。
「其方はなんだって馬車の中で食べるんだ」
「今、お腹が空いているのと、帰ってからじゃ服を着替えたり、やる事があるので、時間を有効に使うのですよ」
駅弁だって走る車両の中で食べるのだし、馬車の中で太巻き食べてもよくない!?
「あなたもラヴィも人前でお腹がぐう〜とか鳴らないように今のうちに食べるといいですよ」
「む……」
「た、食べます」
二人も観念して太巻を口に咥えた。
お!? これは絵面が面白いのでは?
私は魔道具カメラを取り出した。
「こら、ディアーナ。魔道具を構えるな、それで撮影をしようとするな」
チッ。
「旅の記念に」
「変な所を記録しようとするんじゃない」
拒否られた。
仕方ない、瞼に、この目にだけ、しかと焼き付けておくか。
*
なんだかんだと馬車は無事、宴会会場に着いた。
我々はまた温泉に入って、着替えに化粧に無事準備を終えて、夜桜を見ながらの宴会が始まった。
ハポングの華やかな夜が来た。
魔法の灯りと篝火にライトアップされている夜の桜は神秘的で美しい。
赤い敷物の上に白くて、私達の席にはふわふわの毛皮を敷かれ、座布団も用意されていて、ゆったり座って夜桜鑑賞。
我々公爵家の対面に座するのはハポングの姫のカグヤ姫。
そして、出されたお食事が、
「あら、私達が獲ったエビをかき揚げにして出してくれたんですか?」
「はい、残りは保冷箱に入れておきましたので、お好きに調理して下さいませ」
親切!! 魔道具の冷蔵庫のような箱に残りのエビを入れてくれている。
エビのかき揚げはサクサクして美味しい!
そしてウナギ! 鰻の蒲焼きがお重に入っている!
美味しそう。
私は早速箸を手に、美味しく鰻重を頂いた。
鰻の皮には甘めのタレが染み込んでいて、表面はサクサク。
肉厚の身はふわっとしていて、噛むとじゅわっと脂を感じるし、炭火の香りもする。
使われてるのはいかにも秘伝のタレって感じ! 美味しい!!
「ディアーナ様はお箸の扱いがお上手ですね、一応フォークやスプーンのカトラリーも用意しておりましたが」
あ!! つい、元日本人の癖で、私はナチュラルに箸を選んで食べていたし、かたやアレクやラヴィはフォークを使っていた。
カグヤ姫の言葉に、私は慌てて言い訳をした。
「私はハポングに来る前に、予習と練習を密かにしていたのですわ!」
「まあ、そんなに我が国に来るのを楽しみしていただいたなんて、嬉しいですわ」
わははは!
えっと、話を逸らそう!
私は魔法陣の描かれた風呂敷サイズの布から道具を取り出した。
「歓待のお礼にこちらもどうぞ! これはひき肉製造機ですわ! これがあれば簡単に歯の脆くなったお年寄りでも細かく刻んだ柔らかいお肉が食べられます。
肉も魚も穀物もバランスよく食べるのが長寿の秘訣と聞き及んでおります。
これの説明書もハポングの言葉で書いておきました!」
「まあ、お祖父様が喜びそう。お心使いに感謝致しますわ」
カグヤ姫は嬉しそうにひき肉製造機を受け取ってくれた。
食事の後には、「舞手を呼んでおります」と、カグヤ姫に言われたので、ワクワクしながら用意されたステージ側に移動した。
そしてステージ上で厳かな神楽舞が披露された。
桜舞う中、黒髪の清楚な巫女達が踊り、なんとも絵にも描けない美しさ!
だからカメラで撮影するね!!
ラヴィも神楽舞をうっとりと眺めていた。
しかし、この後は色っぽい方の踊りが来るはず。
時間もそろそろ夜の9時くらいになる。
「子供のラヴィはもう寝る時間だから寝なさい」
「はい……」
私がそう言うと、名残惜しそうだけど、ラヴィは素直に従った。
いい子にするならハポング旅行に連れて行ってあげると言ってあるから。
ラヴィはメイドに付き添われて寝床に向かった。
さあ、これからは大人の時間だ!!
綺麗なお姉さんが私の隣に来て、お酒を盃に注いでくれた。
「ありがとう」
お酌係の美女は私から意外にもお礼を言われて、少し驚いた顔をしたが、すぐに色っぽい笑みを見せた。
カグヤ姫も満足気に私に声をかけてきた。
「ディアーナ様、いい飲みっぷりですね」
「このお酒がすごく美味しいので」
「ふふ、ありがとうございます。では、次の舞手を」
パンと、カグヤ姫が手を打つと、来た! 色っぽい布面積の少ない舞姫達が!
エジプト、トルコ系のベリーダンスっぽい衣装の綺麗な女性が五人出て来た!
詳しく言うとベリーダンス衣装に羽衣のような物が追加されている感じ。
私がスケベで悪い王様なら侍らせて遊びたい感じの!!
最高!! ヒュー!! とかやって内心口笛吹きたいレベルのテンションだけど、実際にするのは品がないから、やるのは耐えた。
夜桜と美女と妖艶な踊りで最高だった。撮影もした。
これで満足したら花街の花魁を見に行くのはきっと耐えられると思ったけど、やばい、余計見たくなって来た!!
……ウズウズ。ウズウズ!!
……いやー、しかし我慢って体に良くないよね!
私がストレスでラスボス化するなら、素直に花街行った方が世界平和に貢献出来るのでは!?
ちょっと見るだけだから、変装して見るだけなら、セーフでは!?
旅の記念よ! だってわざわざ旅行に来ているのだし!
私はちらりと隣に座ってお酒を飲むアレクシスの様子を伺った。
色っぽい舞姫が目の前で踊っていても、相変わらずのクールなポーカーフェイス。
夜中、トイレに行くふりで抜け出せばいいかな?
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