第60話 ハポングの市場

 市場に着いた。

 新鮮な海鮮がいっぱい!!

 市場は盛況で多くの店が並んでいる。

 ハポングはお客も売り手もほとんどがまるで日本人のように黒髪黒目だ。


 私のような金髪は異国人丸出しでかなり目立つ。

 アレクシスは黒髪だけど目が青い。


 箱や桶にはお魚や貝や甲殻類が入っている。私は欲しい品の前で足を止め、次々と購入した。



「この大きなエビと、そこの鯛と、マグロと、鰤も買うわ。会計をお願い」



 メアリーがすかさず財布を出してくれるが、異国の人で旅行客丸出しの私の爆買いに店主のおじさんが慌てる。



「あ、ありがとうございます! しかし、この量ですが、持って帰れますか!?」

「魔法で転送するのでこの布の上に買った物を置いてちょうだい」

「は、はい! ただいま!」


 魔法陣が光って公爵邸の工房に転送してくれる。

 公爵邸に待機している使用人に買った海産物は氷室に入れるようにメモも一緒に送っておく。


「おお、魔法ですか、便利でございますね」



 こんな物も出したし身なりも良いので、店主や周りにも貴族だとバレただろう。

 まあいいわ。



「さっきエビを獲ったのにまだエビを買うのか」

「まあ、あなたったら、さっきのエビとは種類が違いますわよ」


 アレクシスはエビはエビじゃないかとでも言いたげな目をしてる。

 小エビと伊勢海老くらい見た目も違うのに!!



 違うテントの店舗にも行く。



「そこのタコも。昆布とワカメも。あ、その貝、良い出汁が出そうね」

「はい! おすすめですよ! お客様は女神のようにお美しいのでお安くしておきます!」

「まあ、ありがとう」


 

 ん? 何か美味しそうな匂いが漂ってくる。

 あ! あれだ! イカ焼きの屋台だ!!


「あ、あそこでイカ焼きを売っているわ」

「ラヴィも食べる?」

「はい」


「ちょっと待て、ディアーナ、この場で買い食いをする気なのか?」

「します、あなたはしないのですか? 美味しそうですよ」

「……はあ、女性だけ食べてたら浮くだろう」

 


 そうだろうか? 食いしん坊には見られるかな?

 とりあえず買い食いに付き合ってくれるらしい。



「ヘイらっしゃい! 塩とタレ味どちらにしますか?」

「私は塩で」

「あなた達は?」

「我々も塩でいい。タレはうっかり服を汚しそうだからラヴィアーナの分も塩にしておくぞ」

「はい、お父様」



 アレクシスは一応子供のドレスの汚れも気にする人らしい。

 


 焼き立てのイカ焼きも美味しかった!!


 色んな海産物を買って、買い食いもして、海辺の魚市場観光は満足した。



「夜桜の宴会で舞い手を呼ぶ予定ですが、踊り子の色っぽいのと厳かな神楽舞の巫女とどちらが良いでしょうか?」


 案内係のその質問に即座に私は、

「色っぽいの!!」と、言ったのだけど、


「神楽でいい」

「あなた、正気!? 旅先でまでかっこつけなくても」

「お前こそ正気なのか? 子供もいるのに」

「え〜〜〜」

「えーとか言うでない」


「じゃあ私は色っぽいのと神楽舞の両方を希望しますわ」

「其方、一歩も譲る気がないな」



 退かぬ!!



「色っぽいと言っても、踊り子は別に全裸で出て来る訳じゃないのでしょう?」

「はい、別に全裸ではないです、やや布面積が少ないだけで」



 案内係の男性は女の私の方が色っぽいのを希望してるので、多少驚いているようだ。

 私とアレクシスの顔を交互に見て、少し慌ててるし、顔に出てる。 


 ラヴィはせっせとイカ焼きを食べるのに夢中だ。

 かわいい。



「ほら、なんて事はないわよ、多少色っぽい方が宴会の場も盛り上がるってものよ。

それと警備の兵の士気も盛り上がるでしょう」


「ただの宴で兵の士気を上げてどうするのだ」

「このようにして日頃から英気を養っておくのよ」

「──やれやれ、では妻の望むとおりに……」

「はい、仰せのままに」



 この場はアレクの方が折れた。

 駄目って言われたら夜中に花街に潜入しようかと思った。

 このハポングの花街って花魁みたいなのがいそうで気になるのよね……。

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