第43話 厳冬に備えて。

 私は寒波前に色々と準備を進めた。


 教会や救貧院には吹雪の後の晴れ間には炊き出しを行う知らせも周知させ、貼り紙と、文字を読めない人も平民には多いから口コミの両方。

 


 神父のありがたい説教の後に言って貰ったりもした。

 寒波による猛吹雪の時を自宅で越せそうにない者は教会などに向かうようにと。

 教会には多額の寄付をして一時避難を受け入れてくれるように要請をしておく。


 養魚場にも使者と支援品を送った。


 その後、寒波前に冬の味覚を買い込む事にした。

 それを旦那様に報告もする。



「朝市?」

「ええ、漁港の朝市ですわ。新鮮なお魚を買い込んで来ます」

「沢山買い込んでも一度には食べられないだろう」

「新鮮なうちに冷凍保存したり、保存食に加工しますね」


「まあ、無駄にならないならいいのではないか」

「なんなら炊き出しの時にも使いますから。

雪で辛い目にあってもちょっと嬉しい事が有れば励みになるかもしれません」

「そういうものか? 寒いなら家に引きこもっているほうが良かろう」



 そうかしら? お金のない人はただ飯が食えるなら出て来るはず。

 


「無料で食事が振る舞われるなら、飢え死にが嫌な人は来ますよ」

「……私は仕事が忙しいから今回は市場にまでついて行けないが、護衛騎士は連れて行くように」

「はーい」



 * *


 朝市は寒いけど、活気があった。

 色んな新鮮な海産物がお得な値段で並んでるのを見るとワクワクする。

 フード付きの外套を被って、顔を隠す。


 そしてラヴィと手を繋いでお買い物。



「お母様、このカニさんもあそこのお魚も動いています」

「まだ生きてるからね。あ、カニは3箱分、そこの魚も5箱分買うわ」



 私は店主に声をかけてお買い物を開始した。



「はい! 沢山ありがとうございます!!」



 そういえば……前世、札幌の雪まつりで氷漬けのお魚やカニを見たわね。

 カマクラ祭りでディスプレイに使った後、解凍して煮込んで食べさせてあげる?


 あ! 伊勢海老っぽいのを見つけた!! 大好物!!



「このエビ買うわ」

「はい、ありがとうございます! 一箱ですか?」

「ここにあるエビ全部よ、後で公爵家に送ってちょうだい」

「は、はい、ありがとうございます!!」


「いいブリね、箱で五、公爵家に送ってちょうだい、あ、そこの昆布とワカメも」

「はい! 奥様、喜んで!!」



 私が嬉々として色んな海産物を物色していると、その辺にいる平民の噂話が聞こえた。



「もうじき冬の魔将軍が来るらしいぞ、商人達が話してた」


 ここの人達は強い寒波の事を、冬の魔将軍と言うらしい。


「ああ、今回は酷い吹雪になると星見の塔から通達があったって話で、隙間風入りすぎるボロ屋住まいは教会に避難も出来るって話だ」

「へー、教会の慈悲か?」


「噂じゃ公爵家の要請らしい。寄付金たんまりだったそうな」

「へー、氷の公爵様なのに優しいとこもあるんだな」

「奥様からの指示だったそうだぞ」

「ええ!? あの浪費家の奥様が?」



 私はラヴィの手を引いて、その場から移動した。

 ラヴィは何も言わずぎゅっと私も手を握っていた。


 その後も爆買いはしたけど似た商品を置く店はまだまだ沢山あるから他の人が買えない訳じゃない。

 私は買い物を終え、公爵邸に戻って、ゆっくりお風呂で温まり、湯船の中で雪祭りの構想を練った。


 * * *


 10日ほど経って、いかにも厳冬って感じの寒波が来た。



「吹雪いて来ました」

「風が強いな」

「さて、どのくらい積もるかな」


「にしてもこのお酒、美味しいですね」

「ハポングからの輸入品らしい」

「この燻製の魚と実に合う」


 非番の騎士達がサロンで酒を飲みつつそんな話をしている。

 私も暖炉の側のソファに座って、お酒を飲んでいる。


 市場で買ったお魚は燻製にした。

 魔法を使えば乾燥も早い。


 それを清酒でいただく。私は騎士達にも燻製とお酒を振る舞っている。

 かぐや姫のおかげで充実した冬の夜だ。


 吹雪が止んで、雪が積もったら、カマクラと雪のオブジェを作りに公園に行く。

 あらかじめシャベルに強化魔法をかけておかないと、固めた雪は硬いから。

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