第14話 東の国の姫
皇帝の挨拶の後には夫とダンスをしようと思っていたとこだったので、夫の元へ戻ろうとした時に、ちょうど皇帝がスペシャルゲストの紹介を始めた。
「さて、今回は極東の国より貴賓を招いておる、ハポング国より、カグヤ姫だ」
え!? 東の国の輝夜姫!?
日本人みたいなサラサラストレートの美しい黒髪に、黒い瞳!!
そして美しい着物を着ている!!
まさか、そんな……。
原作にこんな人、出ていなかったと思うけど!?
でも、日本によく似た国から来たとしたら、醤油や味噌や米を食べてる人だったりしない!?
私は他国の姫に挨拶に行った。
姫には他の人も挨拶をしているから、順番を守って、話しかけるタイミングを待ち、自分の番が来た。
高位貴族なので、たいして待つ必要が無かったのは幸い。
「初めまして、帝国にようこそ、かぐや姫。お会いできて光栄です。
私、アドライド公爵の妻のディアーナと申します。以後、お見知りおきを」
「まあ、なんて美しい金色の波打つ髪でしょう。初めまして、麗しい人、ディアーナと呼んでも?」
「はい、ぜひとも、名前で呼んでくださいませ。
ところで、不躾な質問ではありますが、伺いたい事がございますの、よろしいでしょうか?」
「あら? 何でございましょう?」
「私、ハポングの食文化に興味があります。
穀物のお米や、大豆といったものを口にされた事や見た事はございますか?」
「お米は主食でございますし、大豆もございますよ」
やった──っ!! 何かよく分からないけど、きっと聖少女の詩の原作者が日本人だから
やっぱりあるんだ!
「で、では、大豆からなる醤油や味噌などの調味料は?」
「ありますよ、よくご存知ではないですか」
「く、口にした事は、今生では無いのです、ぜひ、我が公爵領でお取引を願いたく」
「今生では?」
「お、おそらく前世で、似た食文化圏で過ごしていたものと……その、ゆ、夢に見た事がございます」
「まあ、前世のお話ですか? 不思議なお話は好きですわ」
かぐや姫は一瞬目を丸くして驚くも、不愉快そうではなかった。
むしろ、自国の食べ物を欲する私に好意すら見える。
「最近、ちょっと、落馬して死にかけまして、そのせいか、前世の記憶をちらほらと思い出したかのようでして。もしや私の望むものが姫様のお国にあるのではと」
「ええ、ございます、輸入に関しては、皇帝陛下さえお許しになられれば」
かぐや姫はちらりと皇帝を見た。
良いと言え!! 皇帝!! 私を敵にしたく無ければ!!
私の眼光により、無言の圧を感じたのか、皇帝は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに許可を出した。
「むろん、それはいっこうに構わん。食文化の交流により、ますます我が帝国が豊かになるのは歓迎すべき事」
「陛下のお許しが出ましたわ!! かぐや姫、ぜひともよろしくお願いいたします!
あ、お米で作ったお酒なども、もしかしてございますか?」
「それは今回、皇帝陛下に献上する為、持って来ておりますし、それ以外の少しグレードの下がる物ですが、予備もございます」
予備!? 予備でも良い!!
「その、予備の方をお譲りしていただいても?」
「……差し支えなければ、当方のお酒をどのようにお召し上がりになるおつもりで?」
かぐや姫の瞳が楽しげにキランと輝いた。
「常温が美味しければそのまま、冷たいままの方が美味しければ冷やして、焼き魚などと一緒に、また、温めて美味しいお酒ならば、まず蟹などを買い、甲羅を割り、甲羅を火にかけ、別にして程よく温めたお酒を注ぎ入れていただきます」
「まあ、なんて通な楽しみ方をご存知なのかしら! 完璧な回答です。
私、貴女が気に入りましてよ」
「ありがとう存じます」
喜びを禁じ得ない私は、かぐや姫が手を出して来たので、思わず跪き、その甲にキスをした。
「そこは友好の握手ではないのか? 公爵夫人」
皇后陛下にツッコミを入れられた。
「失礼いたしました、私、思わず感極まってしまいました」
「ほほほ、面白いお方」
かぐや姫にはウケたからセーフ!!
「はは、アドライド公爵夫人に外交の才能があったとはな」
皇帝がそんな事を言ったが、美味い物のある国限定である可能性はある!!
とりあえず貴賓を上機嫌にさせる事に成功した!
醤油、味噌、米、お酒、絶対にゲットする!!
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