第3話 娘と交流しよう!
朝起きて、自分の衣裳室へ入った。
凄じい量のドレスがあった。まるでドレスの森。
ちょっと気に入った物を残して、売る物と、レースが美しい物を選り分ける。
メイドにも手伝って貰う。
「手前に有る分からでいいから、レースの美しいドレスを数着見つけて」
「「はい、奥様」」
──しばらく後、
「……奥様、このくらいでどうでしょうか?」
「ありがとう」
二十着くらいのレースのドレスをより分けた。
私も、もうこれは着ないなってドレスを軽く30着ほど選んだ。
「ドレスショップの者が来たら、買い取りもやっているか聞くから、やってると言ったら、こちらで選別した、これらのドレスをまとめて持って来てちょうだい」
「はい」
「それと、紙と描くものも用意して。
便箋より大きい紙よ、描くのはドレスのデザイン画だから」
「はい」
衣裳室から出てサロンに向かった。
メイドから紙を受け取り、ささっとラフにデザイン画を描いた。
どうしてもラヴィアーナに着せたいデザインの服があった。
うさ耳ヘッドドレス付きのかわいいドレス!!
しばらくデザインに熱中していると、メイドから声がかかった。
「奥様、仕立て屋が到着しました」
「そう、通して、それからラヴィを呼んで採寸するから」
5人のショップ店員らしき女性がサロンに現れた。
続けて、メイドに連れられ、ラヴィも部屋に来た。
なんと! ラヴィったら! かわいいの極地!
不安げな表情で、私のあげた赤ん坊くらいの大きさの有る、白いうさぎぬいぐるみを胸の前でしっかりと抱きしめ抱えている。
あー本当にめちゃくちゃ可愛い!
少女が大きいぬいぐるみ抱っこしてる!!
うっかり我が娘に見惚れていると、ドレスショップ店員から挨拶をされた。
「アドライド公爵夫人、この度は当店にお声掛けいただきありがとうございます」
「良く来てくれたわ。娘のドレスを作りたいの、早速、採寸をお願い」
「かしこまりました」
二人の女性が採寸の為に動く。
鞄からメジャーを取り出した。
「お嬢様、今から採寸なので、うさぎはお預かりします」
ラヴィは不安げな顔でぬいぐるみをメイドに渡した。
「あ、それと、あなたのお店、ドレスの買い取りもしているかしら?」
「はい、もちろん」
私はメイドの方に向き直って、指示を出す。
「朝選んだドレスを持って来て」
「はい、奥様」
「どれも一回しか着ていないから、傷んだりはしてないわ」
ドレスショップ店員は眼鏡をキランと輝かせるかのように、ドレスを慎重にチェックした。
「どれも最高品質の布地で作られた物ですから、比較的良い値段で買い取れます」
「そう、ではこちらのドレスは美しいレースのついた物よ。
レースを取り外し、ラヴィアーナのドレスに付け変えをお願い。
レースの無くなったドレスは好きに加工して」
「かしこまりました」
それぞれの予算を書いたメモを渡されたので、それを見る。
「このドレス達の買い取り価格分で娘のドレスが三着は作れそうね」
「はい、レースの転用が出来る分、お値段は勉強させていただきます」
「じゃあ、一着はこのデザインで作ってちょうだい」
私は自分が描いたデザイン画を渡した。うさ耳付きドレスの。
「絵が、とてもお上手ですね、公爵夫人が描かれたのですか?」
オタクなので、落書きもやっていた。
インターネットお絵かきマン、いや、ウーマンってやつかな。
「まあ、そうよ。この耳の所はふわふわの物でお願いね。
これは私が見たいだけの服なので、着やすい生地で、シルクとかじゃなくていいから、耳の素材だけはこだわってちょうだい。
他の二着のドレスはシルクとか、公爵令嬢に相応しい生地でお願い」
「かしこまりました」
「お、お母様、私の為にドレスを三着も作っていただけるのですか?」
おずおずといった風情でラヴィが私に話しかけた。
「私のドレスに比べたら少ない方よ、子供はすぐに大きくなるから、また背が伸びたり、必要な時に買い足すわ」
「本日は公爵夫人のドレスはよろしいのですか?」
「ええ、衣裳室にドレスがいっぱいで、今は減らしてる所なの。目当ての物を探すのが大変だから」
別に没落した訳じゃないのよ。と言うアピール。
「左様でございましたか」
「マダム、採寸が終わりました」
「採寸が終わったなら、もう出かけてもいいわね、後はよろしくお願いね」
「かしこまりました。出来上がり次第、納品にあがります」
ショップ店員達が引き取り分のドレスの山を風呂敷のように大きな布に包んだのはいいが、さてどうやって運ぶか思案してる所に、私は荷物を運ぶように執事達を呼んだ。
「お心使い、感謝致します」
「当然よ、急に大荷物になって悪かったわ、馬車まで運んでちょうだい」
私が急に優しく気配りまでする様になって、周囲が驚いている。
自分の分のドレスを新しく作らないのも、不思議そうにしていた。
せいぜい自分の為の浪費を減らし始めたと噂でも流してくれ。
ショップ店員達が帰った所で、まだ日は高い。
春の昼。
「さて、せっかく春だし、お外にでも行こうかしら」
「お外? 奥様、今からお買い物ですか? パーティーですか?」
メイドが声をかけて来た。
「いいえ」
「では、お母様はお庭にお散歩でも行かれるのですか?」
今度は珍しく、ラヴィが声をかけてくれた。
またうさぎのぬいぐるみをしっかりと抱きしめている。かわいい。
「せっかく春だし、野原にでも行くわ。野苺とかも実っているかもしれないし、花も咲いてるでしょう?」
「野苺……?」
野苺のワードにラヴィの瞳が輝いた。
「ラヴィも一緒に行く?」
「い、いいのですか!?」
「もちろんよ、たまには太陽の光を浴びないと、健康になれないわ」
ラヴィは普段、引きこもりがちで、やや血色の悪い肌をしている気がする。
親が遊びに連れて行ってもあげないので、当然とも言える。
このままではいけない。
かくして、ラヴィと野原でピクニックである。
「奥様、お出掛けされるなら護衛騎士を連れて行ってください」
家令が慌てて声をかけて来た。
「分かっているわ、ラヴィも連れて行くのだし、八人くらいに声をかけて準備をさせて」
「かしこまりました」
「あ、メアリー、厨房からパンとチーズとハムとレタスとバターがあれば、バスケットに詰めて貰って、ジュースとかの飲み物も。無ければ途中の店で買うけど」
「すぐに厨房で聞いて来ます!」
メアリーは素早く動いた。
「サンドイッチ用の材料が揃っていましたので、全部ご用意出来ました!」
流石わがまま夫人のいる公爵家、突然言っても食材は豊富に揃っているわね。
「じゃあ、ピクニックに行きましょう」
「はい、お母様」
「うさぎさんは置いて行ったら? 野苺を見つけたら、手に持った籠に入れたいでしょう?」
「そう……ですね、汚したらいけないし、お留守番して貰います」
少ししょんぼりしてしまったラヴィは、うさぎのぬいぐるみをメイドに預けた。
そんなにぬいぐるみのうさちゃんと離れがたいのか、かわいいが過ぎる。
尊いの極み!
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