第21話 九月二十八日(水)ー1 “袴の彼”ー2

 熱は一日ですとんと下がった。早朝、心配そうな顔で、もう一日くらい休んだほうがいいんじゃないかと言うおばあちゃんをなだめながら、私はいつものように三つ編みを編んだ。こちらに引っ越してきて以来、髪を丁寧に編むのは、一日をきちんと始めるための私の儀式になっていた。そして学校に向かった。プール棟の階段を上ると、扉を開け、廊下に入る。突き当りの教室の扉の前で、私は逡巡したのち、身をひるがえして廊下の窓に向かった。いる。いつもと変わらず、凛とした様子で弓を引いている。一射、二射。そして、ゆっくりとこちらに目を向けた。あの特徴的な瞳。私を見ているのではない。私を透かし、さらに遠くを見つめているような視線。

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