第7話 先輩は毒舌メンヘラ

 今日は楽しいサークル。友達を作るためにサークル活動を片っ端からしている。そして、あわよくば彼女を作りたいという魂胆もある。さらに、運動は好きだけどハードすぎるのは嫌いな俺に持って来いだ。なぜなら、高校の時とは違いライオンと素手で格闘するような必死さはなくて、ピクニック気分の完全にエンジョイ。その空間は笑顔があふれる幸せで、誰もが心から楽しんでいることが伺える。そんな中でも高校と特に違うのが、サークルが終わった後だ。高校の時までは部活が終わったら、帰ってゲームをするか、課題に終われるかの二択で孤独で寂しい生活だった。良くても1か月に一度だけ、友達と一緒にご飯を食べる位であった。しかし、サークルは高校の時とはスズメとタカくらい違う。(わかりづらいのツッコミはセルフでお願いします。)なぜなら、今日初めてサークルに顔を出したにもかかわらず、晩ご飯を先輩から奢ってもらえるのだ。お金が浮くという嬉しさと、新しい友達を作れるかもしれないという期待に、思わず鼻歌交じりに歩くくらい、楽しみでしょうがない。ちなみに、高校の時とは違い先輩後輩関係が非常に緩いのも大学の特徴で、基本的に大学の友達はサークルを通して仲良くなることが多いので、実質友達工場なのである。


 そして、俺はファミレスの扉を開けて、先輩がそれぞれの席を決めてくれるので、俺はその指示を待つ。先輩方は仲のいい人たちと一緒に食べるらしい。俺ともう一人、一年生だと思われる女の人が余っていた。サークルのメンバーの中でも一際かわいらしい女の子であったが、まるでその子に気づいていないかのように、男の先輩は誰一人としてその子を同じ席に誘わない。すると、いかにも申し訳ないですと言いたげな顔をしながら、席はその子と一緒に座るように勧められる。おかしいな、サークルに入っている大学生は女の子に躊躇なくアタックできるほど、みんなコミュニケーション能力が高いイメージなのに、ここの先輩方はシャイボーイが多いのか。まあいいや、せっかく女の子と一緒に座れたなら、仲良くなって、初めての女友達を作りたい。あわよくば、彼女が欲しい。


 先輩に言われた通りの席に彼女と一緒に移動する。店が混んでいるため、島国のようにポツンと離れた席に座る。マジで、一対一じゃんか。俺女子に対してうまく話せるか不安になってきた。でも、グダグダ言ってもしょうがないし、まずは、話しやすい空間を作ろう。


「すみません、二人っきりの席になってしまって、自分コミュ症なんで話が持たないかもしれないんで、うまいことカバーお願いいします」


 的のど真ん中を射たように完璧切り出しだ。とりあえずまずは、トークの何度を下げれば、少し失敗してもカバーができる。これで、第一段階の話しやすい空間を作ることに成功したぞ。次は質問で、相手に興味があり紳士に話を聞くことができるアピールをする。すると、彼女が乾いたような笑い声を始めに口を開く。


 「はは……あなたのような人がコミュ症なのだとしたら、私のような人前で何もできな口を開くことができないような人間はゴミ症かしら」


 わ、笑えねえ……なんだよこの自殺する寸前の思考回路は。確かにさっき空気のように扱われてたけど……。先輩たちがこの子と一緒に食事をしようとしなのはこれが原因か。確かにサークルに来ている人はコミュニケーションを中心に楽しむ人が多い。でも、大丈夫だ。そんなサークルに入って続けられているなら、周囲の人の話を聞いて笑うなどの、何かしらの会話力は持っているはずだ。つまり、俺が話していく内に自然と笑顔が出てくるだろう。


 「そんなことないですよ、話を変えますけど、名前と何年生か聞いてもいいですか」


 まずは、お互いを知ることから始めよう。そうすれば共通の話題が増えるので、雨が降った日の川のように自然と会話の勢いが増すだろう。そう自然だけにね(ドヤ)、旧ひでさんなら、そういうボケが一番裁きづらいのツッコミが来るだろう。


「え、私は確かに顔が可愛いとは言われますけど、私を口説いても何もなりませんよ。それに、顔の偏差値が月とすっぽんくらいあるので無駄ですよ。というか本当にすっぽんみたいな顔をしていますね」


 おっと、初対面にしてはいじりがハード過ぎないか?俺じゃなかったら泣いてるよ?なんなら、俺、今心が泣いてる。すっぽんみたいな顔って初めて言われたけど、オシャレをしているときに顔から泥にダイブさせられたような気分だ。でも、1つ言わせてほしい、コミュニケーション能力はトカゲと竜くらいの差がありますけど?………………なるほど、だから、他の先輩は彼女に気づいていませんよ風を装って、彼女が傷付かないよう合法的に俺と二人だけで食べさせる状況を作ったのか。つまり、俺は生贄だ。確かにサークルらしい気遣いだと思うけど、俺にだけ全く気遣いがされていないのですが?しかも、彼女はテンプレのように傷ついてるから、この気遣いは台風に息を吹きかけて止めにいくようなものだろ。


「すっぽんですか…………確かに高校の時にお前の顔は宇宙人か、てよく言われてましたけどね」


 完璧な返し、大学生にもなればイライラする気持ちを理性で無理やり抑え込み、相手を配慮しながらジャブ程度のウケを狙えるのだ。


「そうですか、私はダメダメですね。確かに宇宙人の方があなたにはお似合いです。私は宇宙人すらまともにいじれないのか…………」


 あなたのいじるの概念はいじめるの領域に達していますけど?あと、顔をいじっていいのは、かなり親睦が深まってからね。初対面ではありえないよ。だって、今にもS極担当の俺の拳があなたの顔をN極と認めて反応し始めていますけど?磁力が強すぎて抑えきれないかもしれない。その時はごめんね。しかし、流石に俺も最後のブレーキの理性は存在するために殴れない。耳の中に虫が入ってきたくらいにもどかしい。そして、己の本能と戦っていると、彼女の方から話しかけられる。


「モタモタしてるところ悪いですけど、そろそろ頼みませんか?私はチーズインハンバーグでお願いします」


 そういえば、ここはファミレスだった。彼女のとの会話に悪い意味で集中していたため完全に忘れていた。あと、この子は会話キャッチボールの中に必ず棘があるな、俺のグローブはもうボロボロなんですが。しかし、よりによって、それを注文するか。これはまた覚悟が必要かもしれない。


「自分もチーズインハンバーグでお願いします。」


 仕方がない、背に腹は代えられない。せっかくここまでする必要のないはずの苦労をしたのに、好物まで奪われてたまるか。ここが正念場だ、どんな毒舌が飛んでくるかわからない。パルプンテを人格化したような人だ。しっかりと身構えろ。己の理性のお尻を叩き気合を入れる俺に彼女は予想だにしないことを言う。


「良かった……やっと、目的が達成できたみたいです。私の中であなたは生きる意味になってくれたようです」


 どういうことだ?よくわからないけど、一人の女の子を攻略したということであってるかな?さっきまで、あんなに毒舌だったのに、今となっては親を見つけたひな鳥のように安心しきった顔になっている。まさか、このハードすぎる女の子の攻略方法がチーズインハンバーグだったとは……こうもあっさり、一人の女の子を惚れさせてしますとは、俺も罪な男だな。と、そんな幸せ思考展開している俺に彼女は一言。


「あなたはこの世界で唯一の私よりも下の人間です」


「どゆこと?」


 思わずカタコトになってしまった。思考が追い付かない彼女も友達をつかるために入ったのかと勝手に思い込んでいた。じゃあなんだ、俺が生きるための理由になったてのは。思考が追い付かない俺を彼女はさらに加速して追いていく。


「私は自分に自信が持てないので、自分よりもクズな人間を探していました」


 まさに、クズの代名詞が相応しいような発想ですね。


「そこで見つけたのが、あなたです。ここまで、散々ナンパNGを出してきたにもかかわらず、あなたは私をさらに口説こうとしました。これこそまさにクズの極み。そんなクズに救われる世界のヒロインの、わ・た・し」


 普通にチーズインハンバーグが食べたかっただけですが?あと、アニメでよくあるヒロインの心が救われるていうのは努力が実らないときか、いじめを克服できた時だから。そんな自分より下の人間見つけて喜ぶのは悪役だけでいいから。なんだよ、この子はネガティブな自分に酔ってやがる。今までの中で一番めんどくさいタイプかもしれない。しかし、いや、だからこそ、なのだろうか。彼女の攻撃は止まらない。


「君はどうせ彼女が欲しいか、お金が浮くから来たのだろう。君らしすぎて流石としか言えませんね。ここはそんな君に寛大この上ない先輩が奢ってあげよう」


 いえ、自腹でいいので、席替えたいです。それから、この地獄は一時間も続いたのであった。


 


















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