第6話 マセる小学生、煽られる大学生
小学生の時、知らない人に着いて行ってはいけないとよく学校から始まり、保護者からも耳に胼胝ができるくらい注意を受けたことを俺は覚えている。さらに、捕まえられそうなときは逃げろとも言われた。そんな懐かしい日の思い出を実感させられる状況に今立たされている。なぜなら、俺の乗っているママチャリよりも小さいガタイの小4くらいのかわいらしい女の子が必死に俺の方を警戒しつつ全力疾走で駆けているからである。正直言わせて欲しい、ただの車高の帰り道で方向が一緒なだけだから。あと、後ろを着いていくしかできないのは、シンプルに道が狭くて、体を左右に揺らしながら走る君を撥ねるのを恐れて抜こうにも抜けない状況だから。そう、一部は君が原因でもあるんだよ。だから、俺を犯罪者と勘違いするな。と……。そんな俺の思考に気づいたのか、急に足を止めて振り返る。その表情は俺に対しての軽蔑の表情で、開口一番に俺をどこかの子供名探偵が犯人を見つけて時のように指さして貶す。
「おい、そこの変態。いくら私が可愛すぎるからって、誘拐しようなんて世界の全国民が許さないわよ」
どういうことだ?先ほどまでは掛かっていたはずのかわいいフィルターがなくなっているぞ。人のイメージというのは恐ろしいくらいに簡単に変わるものだな。もし仮に誘拐の許される国だったとしても、誘拐するのは多分この子ではないな。
「ちょっと、聞いてるの?私を誘拐して何をしようとしてたの。この変態」
この子めんどくさっ。もういいや、早めに終わらして帰りたい。時間の無駄レベル100なんですけど……。
「ごめんね、進行方向が一緒なだけなんだ」
「女の子の質問にはちゃんと答えた方がいいわよ。この変態」
いや、嘘偽りなく答えたのですが?この子自分を中心に世界が回っていると思っているタイプだ。こういうすべてを自分のいいように解釈できるのは前向きでうらやましく思うが、相手にするのは晩飯がカレーの時の食器を洗うくらいめんどくさい。どうしたものか…………。
「分かったわ、私とお近づきになりたかったのでしょうけど、残念女の子とまともに会話できない男はタイプじゃないのごめんね。この変態」
毎回この変態をつけないと死んじゃう病にでもかかっているのかな?あと、知らないうちに、俺小学生に振られている件について。
「この近くに交番があるわ、わたくしは今からそこに赴き、あなたの犯した罪の重さを報告します。そこであなたは己の無力さを知る。指を咥えながら指をくわえながら待つかとしかできない己のね……」
この子本当に小学生か?語彙力が日本という領域内での富士山並みに高すぎるだろ。もしかしたら、シンプルに背の低い童顔な大人が小学生のコスプレをしているのか?いや、そうとしか考えられない。根拠はないけど、そう願いたい。しかも、止めようとしてもこの子のことだから痴漢だの、なんだの言って余計にこじれる。そうなるくらいなら、自分の羽のように軽いプライドを折るしかない。
「わかった、謝るから。ごめんなさい。もうこんなこと二度としません」
だって、しても時間が食われるだけで何もいいことがないから。
「まずわ、姿勢がなってないわ。両手と頭を地面につけなさい。自分の犯した罪を口にしてからでしょう?」
このマセガキはどこまでも人の心をイラつかせるのが上手だねぇ。流石に俺も誘拐して世に出さない方が世界のためかと思えてきたよ。もういいや、このまま無力に警察に通報されるくらいなら、土下座でもなんでもして回避して方が平和的でいい。そして言われた通り両手と額を大地に着けて全力かつ心は籠めずに謝る。
「あなたを誘拐しようとしたことを深くお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。」
「お回りさんこいつです」
「そうか、君か…………ちょっと、署の方まで来てもらおうか」
やりやがったな、マセガキめ。ドッキリに引っかかる芸能人くらいに完全に嵌められた。こんな奴が世の中に存在していいはずがない何とかしなくては………………。
その後、自分の人生を何とかするのに2時間掛かった。
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