第4話

「お、来たか」

「解体は終わってるか?」

「ああ、終わってるぞ。素材はこっち、食える部分はこっちだ」


 ·····確かに。

 全て食える部位のようだ、この解体屋に頼んだのは間違いではなかったようだ。


「ん、どうした?」

「·····綺麗に解体されてるのを見て腕の経つ人でよかったと思っただけだ」

「ハハ!そう言って貰えるのは嬉しいことだな!」


「ああそうだ、本当にいいのか?」

「なにがだ?」

「素材の部分のことだよ。革は丈夫で防寒具になる、牙は固く武器になる·····本当にいらないのか?」


「ああ、自分らには必要ないからな、肉さえ貰えればそれでいい」

「そうか、珍しい旅人もいるもんだな。まあそう言うなら·····」

「ん、この袋はなんだ?」


「素材を頂くんだそれ相応の金だよ。俺の見立てで入れさせてもらった、その袋の中には銀貨100枚入ってる」

「いらないんだが·····」

「いいやこれは頂いてもらわねぇと困る。何かを得る時、それ相応の対価を返すそれが俺のもっとうなんだ、お前が断ろうとなんだろうと是が非でも受け取ってもらう」


 ああ、本当にこの人は芯が強く清い人だ。

 この解体屋に来てよかった·····やはり君はあの人の弟子なんだな。


「おい聞いてるのか?」

「ああ、済まない君のような人を昔見た事があってね、懐かしんでいた」

「ん?よく分からないが·····絶ッ対受け取れよ!!」

「ならばそのご行為確かに受け取ろう」

「ああ!それでいいんだ。それとこのベリーノシシを倒したお前の仲間に伝えといてくれないか·····その武芸の素質感服だってな!」

「··········ああ、確かにその言葉伝えよう」


 ◇


 またこの町に来た時にはあの解体屋に来よう、たとえあの人が居なくてもその弟子がそのまた弟子がきっといるだろうから。


「あ〜ンジュ〜」


 ·····この声はロコロコか。

 ん、なんで品質の悪い鉄鉱石を持ってるんだ?。


「結界は·····割れてませんね、良かったです。えっとその荷物は·····」

「ベリーノシシの肉だ」

「そういえば、頼んでましたね·····ストレージに入れますか?」

「ああ、頼む」


「イチジクがどこにいるか知ってるか?」

「ん〜別れたあとのことは·····」

「そうか、(めんどくさいことを引き起こしてないといいんだがな)」


「そうだ、ロコロコ手を出せ」

「手ですか?·····えっとこの小袋は?」

「その中には銀貨50枚入っている、慎重に使うんだぞ」

「え、えええ。ダメです、ダメですよ〜受け取れませんよ〜」


「いいから持っておけ、何か欲しいものがあっ時に使えるだろう、イチジクにも渡すだから持っておけ」

「ンジュは?ンジュも勿論ですよね?」

「··········勿論だ」

「その沈黙が怪しいですが、分かりましたとりあえず貰っておきます」


 自分は物欲がないからお金はいらない·····と言ったら絶対にロコロコはお金を突き返してくる、ここは嘘をついておこう。


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