第三羽໒꒱ 空虚の卵
飛べない雛も居る。先天性で翼の力が弱いのだ。そうでなくても本来は親元で練習を重ね、巣立つもの。だけど、卵の中で幼児期すら過ぎたはずの僕は……親を知らない。導くのは、記憶の中の
――飛ばなければ、墜ちて死ぬ! 一発本番で決めろ!
風鳴りとビリビリする危機感に溺れないように、必死に羽ばたく! 僕の虎柄の翼は何の為にあるんだ! 金無垢の半月を晒す
ある瞬間、煽られた翼がピッと張った。翼と身体の下を凍えた風が通る。気流に乗ったのだ。ホッと息を着き、暫し安心して翼を任せるも……我に返る。眼下に見えてきた建物達は……屋根の形に見覚えが無い。
「風の裏切り者!
今度こそお終いだ! 墜落する眼下、ポカンと僕を見上げる少女の
「全力で避けて――ッ! 着地の仕方も分かりませんッ! 」
「ハワワッ!? 空から、見知らぬ
ギュッと目を閉じた瞬間、落下が止まる。恐る恐る目を開けると……僕は小柄な少女の
「大丈夫ですかぁ……? 」
ぴょこんと触覚モドキの
「僕は
「私は【
【陰ノ駒】……? 嫌な予感に、僕は血の気が引いていく。
「もしかして……ここは、【陰ノ地】だったりする? 」
「もしかしなくても、【陰ノ地】ですねぇ」
「はぅあ……完全にやらかしました。迷い禽です。でもここまで来たならば腹を括って、
ふいに、
「何故、
「大切な人に再会して欲しいからでもあるけれど……僕が青白磁の卵の中に居た頃に、【陰ノ地】で一緒にいたはずの
「良かった、生きて孵化出来たのねっ……!
僕を左手と右翼で抱き寄せた
――決して、泣いてはいけません。
眼窩からツンと込み上げる刺激に、囁かれた
「私は
目の端に赤みが残る
「
「〖
得体が知れないと付けられた名で、歩む足を『空虚な無意識』へ引き摺り込まれる気がした。通り廊下の鏡の中に浮かぶ、自らの漆黒の虎眼。それは夜空の
幸い
「青白磁の卵の雛を連れてきたわ。真名は、
「驚いた……
開かれた貴き御簾の中、
「……
「
「何で影武者……?
先程の
「
「
「
「
冷静な
「何それ……
「分かりません。王に成られてから
空に憧れた海の魚は、
巨大な翼を生やしてまで
空を支配したくなる。
この支配欲を
『空将棋盤と禽駒』として生み出した、
私達『
『
子孫の私達ですら、本能的に空へ憧れて
『
だから、独善的な私は願いました。
『 海に繋がる空が、
無くなってしまえばいいのに。
すると『君』の卵が、
空から齎されたのです。
子孫の私の『無意識』には、
世界に干渉できる恐ろしい力が
僅かに残っていたのでしょう。
生まれてすらいない
『君』に期待してしまう私は、
【陰】の王に相応しいのかもしれません。
酷い母の私は『君』だけを抱けませんでした。
私達の
「
その指先、天空を差す。
「今は、息が上手くできないよ。もしも、僕が空を滅せられるなら……
「可能性はございます。【
間近で僕を映す金の鷹眼に、
「待って
「……一理あります。ですが、長くは待てません。【陰ノ王座】は、
俯いた
「正解なんて無いの。
「……僕の選択に、皆の運命が懸かっているのに? 」
【陰ノ城】から逃げ出した星空の下、膝を抱えた僕を
「それでも。王に成れば、一つの死を賭けねばならない。
「僕は再会した二人に、笑って生きて居てほしいんだ。
「理不尽に抗うのも、
「ただ、
「なら、帰ろう? 私の右翼なら、〖陽ノ城〗に送ってあげられる」
「でも僕は、
再来する夜明け。煌めいていく川辺に、小さな白い
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます